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タイにおける仮想通貨取引・ICO規制について

2018年09月24日(月)

タイにおける仮想通貨取引・ICO規制について報告致します。

→タイにおける仮想通貨・ICO規制について

The Regulations on Cryptocurrency Transaction and ICO in Thailand

 

タイにおける仮想通貨取引・ICO規制について

2018 年 9 月 22 日
One Asia Lawyers タイ事務所
弁護士(日本法) 古橋いぶき
弁護士(タイ法) Ratana Sutharaphan

1 はじめに

 タイでは2018年5月にデジタルアセットビジネスに関する緊急勅令B.E.2561(2018)(以下、「勅令」といいます。)が施行されました。この勅令により、MOF(The Ministry of the Ministry of Finance )及びSEC(The Securities and Exchange Commission of Thailand)が同国の仮想通貨取引及びICOに関する規制当局となることが明らかになりました。
 その後、MOF、SECが関連する具体的な運用方針を策定・発表し、タイにおける仮想通貨取引・ICO関連規制の詳細が明らかになりました。また、これら取引に関する税務上の取扱いも定められましたので、以下に概要をご紹介します。

2 デジタルアセットビジネス

 勅令は、仮想通貨(cryptocurrency)及びデジタルトークンを「デジタルアセット」と定義し、デジタルアセットビジネスとして、①デジタルアセット取引所運営業、②デジタルアセットブローカー業、③デジタルアセット販売業の 3 つに定義しています。
 タイにおいて上記いずれかのデジタルビジネスを営むためには、タイ国法人であること、及び、MOFからデジタルアセットビジネスの営業許可を取得することが必要となります。
営業許可の申請方法や要件、必要書類の詳細はSECのホームページにて公表されていますが、例えば、申請要件の 1 つである最低登録資本金額は以下のとおりです。

 • 仮想通貨又はデジタルトークン取引所運営業 登録資本金 5,000 万バーツ以上
 • 仮想通貨又はデジタルトークンブローカー 登録資本金 2,500 万バーツ以上
 • 仮想通貨又はデジタルトークン販売者 登録資本金 500 万バーツ以上

 営業許可申請のおおよその流れは、次のとおりとなっています。まず、申請者は申請手数料 3 万バーツを支払い、SECに対して必要書類のすべてを提出します。SECによる審査の後、SECからMOFへと審査が回されます。MOFが要件をすべて満たすと判断した場合、営業許可が認められます。申請書類のすべてが揃ってから承認までにかかる期間は 150 日とされており、承認を得たデジタルアセットビジネス業者は、営業許可証の発行手数料として、以下の金額を支払い、許可証を得た日から 180 日以内に営業を開始することができます。

 • 仮想通貨又はデジタルトークン取引所運営業 発行手数料 250 万バーツ
 • 仮想通貨又はデジタルトークンブローカー 発行手数料 125 万バーツ
 • 仮想通貨又はデジタルトークン販売者 発行手数料 100 万バーツ

 勅令以前にすでにデジタルアセットビジネスを行っていた事業者については、2018 年 8 月14 日までにSECに許可申請をすることで、営業許可申請の不承認が決定しない限りは引き続き事業を継続することが認められました。SECの発表によれば、以下に記載の既存のデジタルアセット取引所運営業者 6 社及びデジタルアセット販売業者 2 社がかかる届出を行い、事業を継続しています。

<取引所運営業者>
 1. Bitcoin Co., Ltd.
 2. BitKub Online Co., Ltd.
 3. Cash2coin Co., Ltd.
 4. Satang Corporation Co., Ltd.
 5. Coin Asset Co., Ltd.
 6. South East Digital Exchange Co., Ltd.

<販売業者>
 1. Coins TH Co., Ltd.
 2. Digital Coin Co., Ltd.

デジタルアセットビジネス業者は、営業許可証に基づき事業を行う期間、SECに対し、以下の通り定められた年間手数料を支払わなければなりません。

 • 仮想通貨又はデジタルトークン取引所運営業
 年間売買・交換額の 0.002%に相当するタイバーツ(ただし、上限 2000 万バーツ/下限 50万バーツ)
 • 仮想通貨又はデジタルトークンブローカー
 年間売買・交換額の 0.001%に相当するタイバーツ(ただし、上限 1000 万バーツ/下限 25万バーツ)
 • 仮想通貨又はデジタルトークン販売者
 年間利益・キャピタルゲインの 1%に相当するタイバーツ(ただし、上限 500 万バーツ/下限10 万バーツ)

 なお、デジタルアセットビジネス業者は、マネーロンダリング防止法( Anti-money Laundering Law)の下、金融機関とみなされますので、留意が必要です。

3 ICO

 タイにおけるICO (Initial Coin Offerings) による資金調達は、以下の規制枠組のもとで認められることとなりました。
 ICOプロジェクトはすべて、SECから事前の許可を得た上で、SECから認可を受けたICOポータル(デジタルトークンシステムプロバイダー)を通して行われることが義務づけられました。
 ICOへの投資額については、ベンチャーキャピタル法人やプライベートエクイティファンド等に関して制限は定められていませんが、一般の投資家についてはICOプロジェクト毎に 1 人30 万バーツが投資額の上限とされ、また、それら一般の投資家へのデジタルトークン発行額の合計も総発行額の 70%を超えてはならない等の制約に服します。また、デジタルトークンの販売期間は、原則として、SECから販売許可を得てから 6 ヶ月以内と定められ、販売許可から12 ヶ月以内であれば延長が認められる場合もあります。デジタルトークンは、タイバーツまたは仮想通貨(4 に記載の認定仮想通貨)を対価として発行されなければなりません。販売期間終了後 15 日以内に、発行者はSECへ報告をする義務があります。
 タイにおいてICOポータルの運営を行うためには、タイ国法人であること、及び、SECから
COポータルの営業許可を取得することが必要です。ICOポータルの営業許可申請要件としての最低登録資本金は 500万バーツであり、申請書類のすべてが揃ってから承認までにかかる期間は 90 日とされています。ICOポータルは、取り扱うICOプロジェクトや発行者に関連する情報についてデューデリジェンスを行い、発行者が諸規定を遵守しているかにつき確認する義務があります。
 ICOポータルは、営業許可証に基づき事業を行う期間、SECに対し、毎年 1 月末日(営業開始初年度は営業許可の日)までに、10 万バーツの年間手数料を支払わなければなりません。

 なお、ICOポータルもまた、マネーロンダリング防止法(Anti-money Laundering Law)の下、金融機関とみなされますので、留意が必要です。

4 仮想通貨の種類

 タイにおいて、取引が認められる仮想通貨は、現在以下の 7 つです。
 • ビットコイン
 • ビットコインキャッシュ
 • ユーサリアム
 • ユーサリアムクラシック
 • リップル
 • ライトコイン
 • ステラー

5 仮想通貨等取引にかかる税金

 2018 年 5 月 14 日の歳入法改正により、デジタルアセット取引にかかるキャピタルゲインやデジタルトークンのインセンティブに対しては、15%の源泉徴収税が課されることとなりました。