ラオスにおけるリース業の引当金について
ラオスにおけるリース業の引当金についてのニュースレターを発行しました。
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ラオスにおけるリース業の引当金について
2025年1月22日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
ラオスにおいて、リース業法に関連する主な法令は以下の3つ及びラオス民法典(第414条から417条)があります。
1)2021年7月2日付「リース業に関する首相令(No471)」
(詳細は、弊所ニューズレターを参照下さい)。
2)2021年12月8日付「リース業法のガイドライン(No01)」
3)2023年3月20日付「リース契約書に関する合意(No265)」
(詳細は弊所ニューズレターを参照下さい)
上記法令の中では、日本で言う、いわゆる貸倒引当金(以下、「引当金」)に関する規定はありません。そこで、リース会社のリスクマネージメントの観点から、ラオス中央銀行は、2024年12月11日付で「リース会社のリース債権の分類及び引当金の控除に関する合意(No1304)(以下、合意)」を発行し、貸し倒れのリスクを軽減する措置について規定しました。
2.リース債権の分類と引当金について
リース会社は、顧客が支払うリース料の返済状況を評価し、以下の通りレベルAからEまで5分類する必要があります(合意第5条から第10条)。
レベル |
商業銀行法に基づく分類名 |
返済状況 |
A |
Normal 又はPass |
契約どおり、遅延なく返済又は支払日から1か月を超す前に支払済 |
B |
Watch list又はSpecial Mention |
支払が1か月と1日以上、3か月以下の滞納 |
C |
Substandard |
以下のいずれか又は全部に当てはまる状況 ①3か月と1日以上、4か月以下滞納している場合 ②レベルBに該当し、引き続き滞納している場合 ③法律、首相令、ラオス中央銀行の規定、リース会社の内規やガイドラインに則って許可されていないリース契約の場合 ④返済資金源が不十分であり、返済能力が低下している場合 |
D |
Doubtful |
以下のいずれか又は全部に当てはまる状況 ①4か月と1日以上、6か月以下滞納している場合 ②レベルCに該当し、引き続き滞納している場合 ③財産を十分に保有する第三者を人的担保として設定していない場合 ④貸倒損失となる可能性が高いが、顧客のビジネスが回復途上にあること又は返済のための資産があり、返済能力はまだあることを証明する書類がある場合 |
E |
Loss |
以下のいずれか又は全部に当てはまる状況 ①6か月と1日以上滞納している場合 ②レベルDに該当し、引き続き滞納している場合 ③顧客と連絡がつかない、顧客の死亡、リース物件が盗まれたなどリース料が回収できないと判断される場合 ④刑事事件に関係しているとみなされ、リース物件を当局に差し押さえられた場合 ⑤当局から命令により、顧客が提訴され、3か月以上の留置さ又は自由剥奪刑にある場合 |
リース会社は、上記のレベル別に規定された割合に基づき、引当金を設定します。引当金の計算方法は、リース料残高に下記のレベル別の割合を乗じます(合意第12条)。また、リース会社は、顧客が、レベルC、D及びEに該当すると判断した日から、それまでの期間の未回収の利息を収入として計上することを止め、同時に回収した利息は会計上、支出とし計上し、財務諸表上では取り扱う必要はありません(合意第11条)。
レベル |
割合 |
A |
0.5% |
B |
5% |
C |
25% |
D |
50% |
E |
100% |
なお、リース会社が外国法人のグループに属していたり、ラオスにおいて上場企業として登録されている場合は、国際的な基準又はラオスの証券取引委員会が定める基準が、合意より条件が厳しい場合に限り、ラオス中央銀行の承認に基づき、合意とは異なるレベルと割合を決定することが可能です(合意第13条)。
3.リース契約の見直し
顧客が現リース契約に基づきリース料を返済できない場合、リース会社は、リース契約の内容を見直すことを顧客と合意することが可能です。例えば、返済計画、利率、契約期間などその他条件を見直し、顧客が引き続きリース料を返済できるように対応する必要があります(合意第14条)。但し、見直しは原則2回までで、感染症の拡大、自然災害又は経済危機等の影響を受けて返済が難しい場合は、当事者間の合意及びラオス中央銀行の規定に基づき、契約内容を見直すことは可能です(合意第15条)。
リース会社は、レベル、引当金、契約書の見直しに関して、非銀行金融機関管理局、ラオス中央銀行の支部及び国立信用情報会社に対して、所定の書式で報告する義務があります(合意第22条)。
4.罰則規定
合意の内容に違反したリース会社は、2018年9月20日付「非銀行金融機関の違反者に対する措置に関する合意(No845)」の第5条に基づき罰則が科せられます(合意第24条)。
<非銀行金融機関の違反者に対する措置に関する合意第5条>
①違反1回目
– 書面による警告
–指導
②違反2回目
– 2回目の書面による警告と10,000,000キープの罰金。
③違反3回目
– 2回目の罰則措置が講じられた後、非銀行金融機関が改善を示さない場合、ラオス中央銀行は180日間の業務一時停止を命ずる。
–業務一時停止の通知を受けてから180日経過しても改善が見られない場合、事業許可証が取り消され、規定に従って清算手続きが行われる。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)