日本:代表取締役等住所非表示措置の概要
代表取締役等住所非表示措置の概要についてのニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
代表取締役等住所非表示措置の概要
2024年6月13日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典
2024年10月1日に商業登記規則等の一部を改正する省令[1](法務省令第28号。以下「改正省令」といいます)が施行される予定です。
今月のニューズレターでは、改正省令によって創設された「代表取締役等住所非表示措置[2]」について解説いたします(以下「本措置」といいます)。
1 背景
現在、会社は、会社代表者の氏名及び住所を登記する義務があり(会社法第911条第3項第14号)、登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービス(以下「登記事項証明書等」といいます)を取得することにより、誰でも代表者の住所を知ることが可能です。しかしながら、個人情報保護の観点から現状の制度を見直すべきとの議論があり、本措置が創設されました。
2 本措置について
代表取締役等住所非表示措置は、下記の要件下にて、株式会社の代表取締役、代表執行役又は代表清算人(以下「代表取締役等」といいます)の住所の一部を登記事項証明書等に表示しないこととする制度になります。
(1)本措置の要件
本措置における要件は次のとおりです。
① 登記申請と同時に申し出ること。
本措置を講ずることを希望する者は、登記官に対してその旨申し出る必要があります。
また、申出は、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記など、代表取締役等の住所が登記されることとなる登記の申請と同時にする場合に限りすることができます。
② 所定の書面を添付すること。
代表取締役等住所非表示措置の申出に当たっては、以下の区分に応じた書面の添付が必要となります。
【上場会社である株式会社の場合】
株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面。
なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は、不要です。
【上場会社以外の株式会社の場合】
以下(1)から(3)までの書面。
なお、既に代表取締役等住所非表示措置が講じられている場合は、(2)のみの添付で足ります。
また、株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、(3)の添付は不要です。
(1) 株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
(2) 代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例)住民票の写しなど
(3) 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面
(例)資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など
(2)本措置が講じられた場合
本措置が講じられた場合、登記事項証明書等において、代表取締役等の住所は最小行政区画まで、すなわち市区町村まで(東京都においては特別区まで、指定都市においては区まで)しか記載されないこととなります。
なお、代表取締役等住所非表示措置の対象となる住所は、申出と併せて申請される登記によって記録される住所に限られています。
<登記事項のイメージ>
(参考:「代表取締役等住所非表示措置について」)
役員に関する事項 | 取締役 甲野太郎 |
東京都大田区東蒲田二丁目3番1号 代表取締役 甲野太郎 |
|
監査役 乙野次郎 |
役員に関する事項 | 取締役 甲野太郎 |
東京都大田区 代表取締役 甲野太郎 |
|
監査役 乙野次郎 |
本措置が講じられた場合の留意点として、登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明することができないこととなるため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の支障が生じることが想定されています。
また、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所に変更が生じた場合には、その旨の登記の申請をする必要があります。
(3)本措置の終了
代表取締役等住所非表示措置が講じられた株式会社から当該措置を希望しない旨の申出があった場合や当該株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合などには、登記官が職権で当該措置を終了させることになります。
なお、代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出は、登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことが可能です。
以上
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本記事に関するご照会は以下までお願いいたします。
弁護士 松宮浩典
hironori.matsumiya@oneasia.legal
[1] 商業登記規則等の一部を改正する省令(令和6年法務省令第28号)
[2] 法務省「代表取締役等住所非表示措置について」