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タイにおける労働裁判について

2020年07月31日(金)

タイにおける労働裁判について報告いたします。

労働裁判について

 

タイにおける労働裁判について


                                  2020年7月31日
                             One Asia Lawyersタイ事務所
Covid-19の影響により、経営状況が悪化したことから、最近、少し強引な手法で解雇や減給等が強行される事例を目にしており、その結果、労働訴訟に関するご相談を受けることが増加しております。タイでの労働裁判所への訴訟提起は、訴訟費用が無料であり、休日でも裁判が可能なことから、労働者にとって比較的容易に手続きできるよう設計されています。そのため、雇用者は労働法令を遵守し、労働者の訴訟提起の要因となりうる事案を回避することが重要ですが、ある日突然、会社に訴状が届くことも珍しくありません。本ニュースレターでは、不当解雇を理由とする労働裁判を例に、そのプロセスと雇用者側の検討しておくべき事項について以下の通り解説致します。
1 労働者の権利
まず、前提として、労働者が労働問題に関する申立てを行う手段として、以下の3つが挙げられます。
(1) 労働者保護法第123条iに基づく労働検査官への申立て
(2) 労働関係法第124条iiに基づく労働関係委員会への申立て
(3) 労働裁判所設置・労働裁判法第8条iiiに基づく労働裁判所への提訴


2 労働者保護法第123条 に基づく労働検査官への申立て
労働者が労働者保護法に基づき労働検査官に申立てを行う場合、労働者保護福祉局長が定める様式の申立書「KorRor.7(คร.7)」を提出します。その後、労働検査官による審理が行われ、労働者が同法に基づき金銭を受け取る権利があると判断された場合、同法第124条に基づき、労働検査官が支払命令を発出します。同命令に対し不服がある場合、雇用者は同命令を知った日から30日以内に裁判所に訴訟を提起することが可能となっています(同法125条1項)。ただし、雇用者は上記訴訟を提起するにあたり、上記命令により支払いが命じられた金額を裁判所に供託する必要があります(同法125条3項)。雇用者及び労働者から指定
された期日内に裁判所に訴訟提起されなかった場合、労働検査官の命令は最終命令となります(同法125条2項)。
雇用者が労働検査官の命令を知った日から30日以内に支払いが行われない場合、同法第151条第2項に従い、使用者は懲役1年以下、罰金20,000バーツ以下、またはその両方を含む刑事罰が科せられますので、留意が必要です。
<労働者保護法に基づく申立ての流れ>

※図はPDF本文をご確認ください。


3 労働関係法第124条 に基づく労働関係委員会への申立て
被雇用者の労働組合員としての活動を雇用者が不当に妨げるような行為は、労働関係法第121条iv、122条v、または123条viに違反する行為であり、労働者は当該違反があった日から60日以内に労働関係委員会に申立てることができます。労働者が申立てを行った場合、労働者関係法125条に従い、労働関係委員会による審理が行われ90日以内に命令を発出します。同命令に対し不服がある場合、命令が発出された日から15日以内、もしくは命令で指定された期日までに労働関係委員会に異議を申し立てることが可能となっています。当該異議申立に対する労働関係委員会の決定に不服がある場合、労働裁判法第8条(4)に基づき労働裁判所への異議申し立てを行うことが可能となります。同法第121条、122条、または123条に違反した雇用者は、労働者関係法158条及び159条に従い、懲役6ヶ月以下、罰金刑は10,000バーツ以下、またはその両方を含む刑事罰が課せられます。
<労働関係法に基づく申立ての流れ>
※図はPDF本文をご確認ください。


4 労働裁判所設置・労働裁判法第8条 に基づく労働裁判所への提訴
タイでの労働裁判については、労働裁判所設置・労働裁判法(以下、「労働裁判法」)で定められています。労働裁判所への訴訟提起は、労働者保護法及び労働関係法などで必要な手続きが規定されている場合、その手続きを経た場合にのみ、労働裁判所への手続きへと進めることができます(労働裁判法第8条2項)。したがって、労働者が解雇についてだけ争いたい場合は、直接労働裁判所に訴訟提起することができますが、解雇補償金や賃金の未払いなど労働者保護法に基づく金銭の支払いを受ける権利について争いたい場合は、上記の労働者保護法123条 に基づく労働検査官への申立てをまず行う必要があり、いきなり労働裁判所に訴訟提起することはできません。
労働裁判所への訴訟提起は、口頭でも可能(同法第35条)で、訴訟費用も無料(同法第27条)、休日でも裁判が可能(同法第28条)というように労働者にとって比較的容易かつ有利に手続きできるように設計されています。審理においては裁判所に提出された証拠だけでなく、労働条件、生活費、労働者の困苦、賃金水準、同種の事業で働く労働者の権利と利益、雇用者の事業の状況や経済社会状況も考慮されます(同法第48条)。
タイの労働裁判では、通常の審理期日前に和解のための調停期日が設定されます。被告である雇用者は、訴状を受け取った後、裁判所からの呼出状において設定された調停期日までに答弁書を提出する必要があります。なお、事前に手続きすれば期日の延長も可能です。
答弁書では主に、訴状での原告の主張に対し反論を行うため、不当解雇における損害賠償請求訴訟であれば、解雇がいかに正当であったかを主張・立証します。タイの裁判は日本での裁判と異なり、主張書面を提出できる機会は非常に限られていますので、この答弁書で雇用者の主張をほぼ主張し尽くす必要があります。
また、答弁書の提出に加え、類似の事件に関する過去の判例において賃金の何か月分の損害賠償が認容されているかを調査し、調停での和解案を提示する場合の目安として認識しておくことも重要です。調停は、訴訟開始後から判決言渡し前までの間いつでも可能となっています(同法第38条及び第43条)。もっとも、調停において和解できない場合、労働裁判所は、争点と双方当事者の主張を記録し、証人尋問の期日を定めます(同法第39条)。当事者は証人尋問期日の7日前までに証拠リストと証拠を提出します(民事訴訟法第88条)。証人尋問期日における証人尋問手続きでは、主として労働裁判所が尋問を行い、当事者またはその代理人弁護士は労働裁判所の許可を得て尋問を行います(同法第45条2項)。必要な証人尋問が終了したとき、審理は終了したものとみなされ、当事者はその審理終了日に口頭で最終陳述をすることができます。そして、労働裁判所はこの審理終了日から3日以内に判決または命令を言い渡します(同法第50条1項)。
労働裁判所での解雇に関する判決は、労働者を解雇時と同等の賃金で復職させるか、または従業員と会社が協力して業務を遂行できないと裁判所が判断すれば損害賠償金の支払いを命じるかのどちらかになります(同法第49条)。
労働裁判所の判決に不服のある当事者は、判決の言い渡し日から15日以内に最高裁判所に法律的な面についてのみ不服を申し立てることができます(同法54条1項)。なお、この不服申立をしても労働裁判所の判決による執行は停止されず、別途執行停止の申立については、判決を言い渡した労働裁判所に行う必要があります(同法55条)。
<労働裁判所での訴訟の流れ>
※図はPDF本文をご確認ください。


以上、タイにおける労働紛争解決制度の概要とプロセスになりますが、比較的、労働者にとって有利な設計になっておりますので、基本的な労働法の知識を十分に押えた上、労働問題を生じさせないような予防的な対応を慎重に取っていくことが肝要だと考えます。
                                          以 上
〈注記〉
本資料に関し、以下の点ご了解ください。
・ 本資料は2020年7月31日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化にともない、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても当社は責任を負いません。
以上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)
i 労働者保護法第123条
被雇用者が本法令に基づき金銭を受け取ることのできる権利に関して、雇用者が違反した、または履行せず、被雇用者が本法令に基づき担当官に執行を望む場合は、被雇用者の勤務地を管轄する、または局長の定めに従った雇用者の登記住所の労働検査官に対し、被雇用者は申立書を提出する権利を有する。
本法令に基づく金銭受け取りの権利に関連し、被雇用者が死亡した場合は、その法定相続人が労働検査官に申立書を提出する権利を有する。
ii 労働関係法第124条
第121条、第122条または第123条に違反した場合、その違反の被害者は、違反があった日から60日以内に労働関係委員会に対し違反者を訴えることができる。
iii労働裁判法8条
労働裁判所は以下の件に関し、事件を審判し、命令する権限を有する。
(1) 雇用契約、もしくは雇用条件に関する合意に基づく権利、もしくは義務に係る紛争事件。
(2) 労働者保護法、労働関係法、国営企業労働関係法、職業紹介・求職者保護法、社会保険法、または(労働者災害)補償金法に基づく権利または義務に係る紛争事件。
(3) 労働者保護法、労働関係法、または国営企業労働関係法に基づき裁判所を通じた権利を行使しなければならない場合。
(4) 労働保護法に基づく担当官の決定、労働関係法に基づく労働関係委員会もしくは労働大臣の決定、国営企業労働関係法に基づく国営企業労働関係委員会もしくは労働大臣の決定、社会保険法に基づく異議申立委員会の決定、または(労働者災害)補償金法に基づく補償金基金委員会の決定に対する異議申し立て。
(5) 労働紛争もしくは雇用契約に基づく労働に関し、雇用者と被雇用者間の違約を事由に生じた事件。この場合、雇用を通じた労働によって生じた被雇用者と被雇用者間の違約事由も含む。
(6) 労働関係法、国営企業労働関係法、または職業紹介・求職者保護法に基づき労働大臣が労働裁判所に判定を求めた労働紛争。
(7) 法律が労働裁判所の権限と規定した事件。
第一段に基づく事件は、労働者保護法、労働関係法、国営企業労働関係法、職業紹介・求職者保護法、社会保険法、または(労働者災害)補償金法が担当官に対する申立て、手順及び方法による執行を規定している場合、当該法律が定めた手順及び方法をとった時、労働裁判所での手続を進めることができる。
iv 労働関係法121条
雇用者の以下の行為を禁ずる。
(1) 被雇用者、被雇用者代表、労働組合委員または労働連合委員に対し、被雇用者または労働組合が集会した行為、申し立てた行為、要求を提出した行為、調停もしくは訴訟を提起した行為、労働者保護法に基づく担当官、労働争議調停官、労働争議裁定人、労働関係委員、もし
くは労働裁判所に対し証人となった行為、または、これらの行為をしようとしていることを理由に解雇する、または勤務の継続を不可能とさせる何らかの行為。
(2) 被雇用者が労働組合の組合員であることを理由にその被雇用者を解雇する、または勤務の継続を不可能とさせる何らかの行為。
(3) 被雇用者が労働組合の組合員になることを妨げる、もしくは組合を退会させる行為、または被雇用者を組合員として申請させない、申請を受理しない、もしくは組合を退会させるために、被雇用者または労働組合の担当者に対し金銭を与える、もしくは金銭を与えることに合意する行為。
(4) 労働組合または労働連合の活動を妨げる行為、または被雇用者が労働組合員であることの権利を行使することを妨げる行為。
(5) 法律に基づく権限なしに、労働組合または労働連合の活動に干渉する行為。
v 労働関係法122条
いかなる者であっても以下の行為を禁ずる。
(1) 強制または直接・間接的な脅迫により被雇用者を労働組合に加入させる、または労働組合を退会させる行為。
(2) 雇用者に第121条に基づく違反をさせる何らかの行為。
vi 労働関係法123条
以下を除き、労働協約または裁定が施行されるまでの間、雇用者が当該要求に関係する被雇用者、被雇用者代表、労働組合の委員もしくは小委員もしくは組合員、または労働連合の委員もしくは小委員を解雇することを禁じる。
(1) 雇用者に対し意図的に職務上の不正行為を働いた、または刑事上の違法行為をなした場合。
(2) 故意に雇用者に損害を与えた場合。
(3) 雇用者が文書で警告したにもかかわらず、規定、規則、雇用者の合法的な命令に違反した場合。ただし重大な違反の場合は、使用者の警告は不要とする。この場合、その規定、規則、または命令は当該者の要求に関する手続きを妨害するために出されたものであってはならない。
(4) 正当な事由なく3日間連続して職務を放棄した場合。
(5) 労働協約または裁定に違反するよう教唆、支援、または説得する何らかの行為を行った場合。

海外インフラプロジェクトの法的留意点(アジア新興国編)について記事をアップデート致します。

アジア新興国編

 

 

海外インフラプロジェクトの法的留意点について 

アジア新興国編

 

2020 年7月24日

One Asia Lawyers

藪本 雄登

  • 1. 執筆の背景
  • 2020年7月7日、国土交通省より「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2020[1](以下、「行動計画」)といいます。」が発表されている。行動計画によれは、新興国を中心とした世界のインフラ需要は膨大で、急速な経済成長と都市化を背景にさらなるインフラ需要の拡大が予想されており、日本国はその需要を取り込む必要がある。今後、アジアおよびアフリカ地域を中心として、日本国が新たな受注を目指す注力すべき80プロジェクトが、「今後3年〜4年間に注視すべき主要プロジェクト(行動計画より抜粋)」に次の通り、示されている。※図はPDF本文をご確認ください

行動計画記載の通り、筆者としては、「日本の持続的な経済成長」「相手国の経済発展と社会的な課題解決への協力」「地球規模の課題解決への貢献」という3つの意義に共感し、日本のインフラ技術やノウハウ輸出が、将来に向けた外貨獲得の有効かつ重要な手段、手法であるということを前提に、著者の10年間に渡るアジア新興国における海外インフラプロジェクトの経験を基礎に、その主要な法的論点や問題点について解説する。

なお、著者が新興アジアにおいて、過去ODAプロジェクト等に関わってきた経験やアジアインフラ投資銀行や中国の一帯一路の影響を踏まえると、新興国を中心としたハード面でのインフラ開発、支援は質量の観点から限界を迎えていると感じる側面もある。ハード面のみならず、IOT、AI、5G、スマートシティ等のソフト面も含めた日本の先端技術を活用した高付加価値、かつ、複合的なインフラパッケージ輸出のため、今後、各国のPPP法、スマートシティ関連規制、データ規制、その他航空法、電力関連法令、港湾関連法令等についても紹介していく予定である。

  • 2. オフショアからのインフラプロジェクトの実施の可否

1)オフショアモデルを巡る法的規制

まず、日本から国外にサービスを提供する際、①現地に拠点を設置しないオフショアモデル、②現地に拠点を設置するオンショアモデルが存在している。

<オフショアモデルとオンショアモデル>

※図はPDF本文をご確認ください

新興アジアでのプロジェクトにおいては、日系商社、建設会社、エンジニアリング会社やロジスティクス会社等からは、プロジェクト実施国において現地法人や支店等を設立せずに、サービス提供を行うことが実現可能か、という相談を最初に必ず受ける。特に、カンボジア、ラオス等のアジア新興国でのプロジェクトに関しては、今後、対象国において、継続的な案件が存在するか予見できないため、オフショアモデルでサービス提供ができないかが問題となる。その背景としては、日系商社や建設会社等は、過去多様な国、地域で現地法人等を設立し、プロジェクトを遂行してきた経緯があるが、その運営維持にかかるコストや清算コスト等が多額になる傾向があり、コスト削減の観点からオンショアモデルを避けて、プロジェクトを実施したいという事情がある。

 

他方、過去カンボジアやミャンマーにおいては、無償資金協力[2]によるプロジェクトが多数実施されてきた。その無償性から、プロジェクト実施する企業体は、コンプライアンスに関するリスクをあまり考慮してこなかった傾向がある。つまり、対象国の政府は無償で恩恵に与れることから、そのプロジェクトを実施する企業をコンプライアンス違反等で摘発するインセンティブが生じなかった。しかしながら、最近では、アジア新興国においても有償資金協力[3]や官民連携(いわゆる「PPP」)によるプロジェクト実施が主流となってきており、プロジェクト実施国の当局から企業体のコンプライアンス遵守状況等が適切にチェックされるようになってきている。上記のような事情から、コストとコンプライアンス上のリスクを総合的に勘案した上で、オフショアモデルでのプロジェクト実現可否を検討する必要がある。

 

この点、オフショアモデルでのプロジェクト実施については、プロジェクト実施国での商行為に関する規制が問題となる。基本的に、プロジェクト実施国において、商行為を行っていると見做される場合、支店や現地法人等の企業登録や税務登録が義務付けられる国がほとんどであるが、一般的に、プロジェクト実施国において、商行為を行っていると見做される法律上の基準や運用上の程度感については、対象国において様々である。

 

例えば、カンボジアについては、カンボジア会社法第272条において、外国企業がカンボジアにおいて、次に掲げる業務を行なう場合、当該企業は、商行為を行っていると見做されると規定されている。具体的には、①1か月以上、製造、加工または役務提供のために事務所、またはその他の場所を賃借する場合、② 1か月以上、自己のために他人を雇用する場合、③カンボジア王国の法律によって外国人または外国法人に認められた業務を行う場合、と規定されており、会社法第272条違反による行政罰を示す規定も存在している。また、同様にミャンマーでも会社法において、30日以上、継続される取引については、ミャンマー国内での商行為を行っていると見做され、法人登記が求められる可能性がある。ラオスの場合、会社法には明確な規定はないが、2019年1月に発行された「企業登録に関する合意(No.0023)」の中では、「ビジネスを始めること (Starting a business)」を「ラオス国内において場所を借りる、労働者を雇用する、建設許可や輸出入の許可取得等の活動を始めること」と定義している。

 

他方、下表の通り、タイ、ベトナム等では、法律上、明確な商行為の判断基準が定められていないため、当局の担当者への照会や過去の摘発事例を調査する必要がある。実務的に、オフショアのサービス提供に関する摘発事例は、当局が補足することが困難な側面もあり、メコン地域においては、限定的であると考える。

<メコン地域における商行為に関する規制一覧>

※一覧はPDF本文をご確認ください

また、商行為に関する規制のみならず、建設事業者や物流事業者に関する規制の違反行為については、行政罰のみならず、禁固等の罰則規制が存在しているため、各国における特定の業法について、個別具体的に確認する必要もある。

 

なお、一定のプロジェクトにおいては、法人登録や企業登録を行わずとも、プロジェクトの実施を認めるような特例が存在しているケースもある。例えば、ラオスにおいては、鉱山開発や水力発電プロジェクトについては、例外的に、非居住法人のプロジェクトの実施を認めるような規制が存在している。また、新興アジアにおいて、交渉によっては、当局が比較的、柔軟な対応を取ることもあり、公共インフラ整備、雇用創出、外貨準備率の改善等のプロジェクトの意義やプロジェクト実施国へのメリットを十分に説明できる場合、当局による特例措置を取得することにより、企業登録を行わずとも、例外的にプロジェクト実施が可能となるようなケースも存在している。

 

2)オフショアモデルに関する税務上の留意点

 上記で述べた商行為に関する問題が解決したとしても、税務上のリスクの検討を十分に行う必要がある。例えば、カンボジアの場合、海外からサービス提供者への支払いに対する法人税の源泉徴収課税は、14%という高額の税率が設定されており、サービス受領者側で総サービス費用の14%分控除した上で、サービス提供者に報酬が支払われることになる。この源泉徴収課税制度を十分に考慮せず、契約やサービス提供が進んでしまうケースが頻発しており、オフショアからのサービス提供者とサービス受領者との間で、この源泉徴収税の負担を巡って、紛争化するケースがある。その他、ラオスの場合は、ラオス国内でのサービス受領者は、3%(みなし利益率15%)の源泉徴収課税を納付する必要があり、カンボジアと比較すると、税額は低廉ではあるが、オフショアからサービスを提供する場合については、このような源泉徴収税に関する税務リスクについて十分に検討、留意した上で、予めその処理方法や負担について契約書上、明示することが推奨される。なお、関連してPermanent Establishmentに関する問題(いわゆる「PE課税の問題」)にも留意する必要がある。紙面の関係上、詳細は割愛するが、例えば、タイにおいては、実際に税務当局によってPE課税の指摘を受けている事例が存在している。

 

3. オンショアでのインフラプロジェクト実施の留意点

 上記のようなオフショアからサービスを提供する場合のリスクを踏まえると、コンプライアンス上の観点から現地に拠点を持つオンショアでサービス提供を行うという判断となる企業も多い。オンショアの場合、プロジェクト実施国内において様々な規制を受けることになる。例えば、建設事業や物流事業等を行う場合、外国企業の出資持分の上限や最低資本金額が設定されている場合が多いので、十分な調査と検討が必要となる。例えば、ラオスでは、建設事業者に対して、以下のような外資規制や最低資本金規制等が設定されており、外国企業にとっては、相当ハードルが高い状態となっている。

<ラオスにおける建設業に関する規制一覧表>

※表はPDF本文をご確認ください

他方、カンボジアでは、建設事業者について外資規制や資本金規制等は存在しないが、許認可取得の際に、カンボジア国内のエンジニア資格を有する専門家の雇用や建設設備の一定以上の配備などが求められている等、外国企業の参入や事業展開を妨げる所々の規制や運用が存在しており、留意が必要である。

 

4. ビザ、就労規制

続いて、外国人のビザおよび就労規制について述べる。日本からインフラプロジェクト実施国に対してサービスを提供する際、現地に拠点を持たないオフショアモデルの場合、外国人専門家を派遣するためにはどのような要件を満たす必要があるかが問題となる。

下表の通り、カンボジアにおいては、現地に支店や現地法人等がないとワークパーミットが取得できない仕組みとなっており、オフショアからのサービス提供となると不法就労リスクが生じる仕組みとなっている。運用上、当局の調査や取締が厳格ではないとはいえ、現地のパートナーやサブコントラクター等との関係が悪化した際に、不法就労リスクが顕在化するようなケースもある。対応策として、現地パートナー企業に出向する形式を取り、現地パートナー企業からワークパーミットの発行を受ける等で対応しているケースが散見される。他方、タイやラオスにおいては、一時出張者向けの例外措置があり、そのような制度を活用して、外国人専門家を一時的に派遣するようなアレンジを取ることも一案である(但し、ラオスでは、そのような制度があるものの、実務的にはほとんど利用されていない状態である。)。

<カンボジア、ラオスの出張者用ビザとワークパーミット規制について>

※表はPDF本文をご確認ください

 

5. 付加価値税を巡る問題

過去、新興アジアでのインフラプロジェクトにおいて、致命的な問題となったのは、建設等のプロジェクトにおける付加価値税を巡る問題がある。アジア新興国でのODAプロジェクトや経済特区内でのプロジェクトについては、公共インフラ整備促進や投資誘致促進策の一環として、建設等のサービス費用については、付加価値税が免除されているケースがある。しかしながら、この恩典により新興アジアでは、共通して生じる問題がある。具体的には、当該付加価値税の税制恩典が発注者とゼネラルコンストラクター(いわゆる、「ゼネコン」)との関係でしか適用されず、一次下請業者(サブコントラクター、いわゆる「サブコン」)、二次下請業者(いわゆる、「サブサブコン」)以降には適用されないケースがあり、サブコン-サブサブコン間での付加価値税の負担について紛争化するケースが存在している。

 

次の図表の通り、対象となるプロジェクトに関して、発注者とゼネコンとの間の取引については、付加価値税が免除されることになるが、当該プロジェクトに関わるゼネコン-サブコン間やサブコン-サブサブコン間での取引についても免税措置が適用されていると誤認し、全当事者間の間で、全ての取引について付加価値税が免除されると勘違いしているケースがある。そのような状態において、サブサブコン等に対して税務監査が入った際に、同プロジェクトのサブコン-サブサブコン間の建設サービスについて、付加価値税の納付が求められるケースが存在している。例えば、カンボジア、ラオスの付加価値税は10%であるが、税務調査の結果、サブサブコンに10%の納付義務が課せられたとする。その負担をサブコンに求める場合、建設プロジェクトの費用が多額となる傾向にあり、サブコンがその費用負担に耐えきれないケースが多く、付加価値税の支払いをゼネコンに求めるような事例が存在している。当然ながら、ゼネコンは発注者から付加価値税を受け取っておらず、付加価値税の控除もできず、また新興アジアにおいては、付加価値税の還付制度も十分に機能していないことが多く、10%の付加価値税が単純コストになってしまい、プロジェクト収支に大きな影響を与えたようなケースがあった。

<建設プロジェクト等に関する付加価値税を巡る問題>

※図はPDF本文をご確認ください

本問題の対応策としては、2つの方法が取られている。1つ目は、ゼネコン-サブコン間、サブコン-サブサブコン間での取引において、付加価値税が免税とならない場合において、発注者に付加価値税の免税恩典を放棄してもらい、発注者からゼネコンが付加価値税を受け取り、各当事者が適切に付加価値税を納付するスキームを取ったケースがある。また、2つ目は、建設プロジェクト全体について、当局との交渉により、サブコンやサブサブコン間の取引まで付加価値税免税恩典の射程が含まれるように、税務署やプロジェクトを管轄する監督当局から正式な文書を発行してもらう方法、もしくは、官民連携等のプロジェクトにおいてはコンセッション契約の中で、その恩典内容の射程を明示してもらうようなアレンジを取ることによって対応をしたケースもある。

 

6. アジア新興国における紛争解決

最後に、アジア新興国における紛争解決については、過去、タイ、カンボジア、ラオス、ミャンマーやスリランカ等にて紛争案件を対応してきた経緯を踏まえて、アジア新興国における紛争対応の留意点について述べる。

まず、大前提として、係争地規定を巡る問題の中で、意外にも認識されていないことは、日本国内での裁判上の判決は、相手方の資産が存在する国との間で相互の保証が存在しない場合等に執行が不可能である可能性が高い。係争地規定は、とにかく日本の裁判所にしておいたほうがいいという言説がみられるが、これはクロスボーダー契約実務において、もっともやってはいけない悪手となる場合がある。

他方、カンボジア、ラオス、ミャンマー等のアジア新興国の裁判制度は、汚職や裁判官の能力不足等という問題があり、現時点において利用することは推奨されない。また、カンボジアやラオスにおいても、現地に仲裁機関や仲裁制度が存在するものの、過去の経験を踏まえると、同様に利用することは推奨できない(過去、カンボジア、ラオス、スリランカ等で裁判および仲裁センターを利用したが、色々と興味深い事例や経験があるが、ここでは紙面の関係上、割愛する)。そのため、実務上は、新興アジアでの紛争処理については、下表の通り、第三国において、ある程度信用が確立されている仲裁機関を必ず設定すべきである(アジア新興国の紛争案件において、過去、相手方に現地国での裁判や仲裁実施を持ち出され、交渉において苦汁を飲まされたケースが多くある。)

<アジア新興国における係争地規定のポイント>

※表はPDF本文をご確認ください

しかしながら、ある程度信頼がおける第三国の仲裁機関で合意していたとしても、相手方国での外国仲裁判断の承認執行について問題が生じる可能性がある。アセアンや南アジアの新興アジア諸国は、外国仲裁判断の承認執行に関するニューヨーク条約[4]の加盟国[5]であるが、現地裁判所での外国仲裁承認事例が限定的で、事例が蓄積していると言い難い状態であり、現地国での承認執行手続きの実施可否や手続き上の留意点について十分に確認する必要である。

例えば、現在ラオスにおいて、外国仲裁判断の承認執行手続きを行っている事案があるが、問題となっている契約書の準拠法がラオス法ではないことを理由として、ラオス外務省、司法省、裁判所等での承認執行のプロセスが進まない状態となってしまっている。ラオス仲裁法上、準拠法について、いかなる規制も存在しないが、執行国の仲裁法の承認執行の拒絶事由や手続きのみならず、このような実務、運用上の留意点等についても十分に確認することが肝要である。

  • 7. まとめ
  • アジア新興国において、近年、インフラプロジェクトが増加しているが、上記に述べたような問題以外にも、例えば、政府による輸入申請、手続が円滑に実現できず、建設部材や建設設備が十分に整わず工事に遅延が生じる事案や国際建設インフラ契約約款(いわゆる、FIDIC契約約款)等ではDispute Boardの選任を推奨しており、当事者間で合意がなされているケースがあるが、相手方国において適切な人材が存在しないこと、コストの問題等で、Dispute Boardの選任が全く進まない事案、政府用地利用や許認可取得の際の贈収賄等、様々な問題に現場では直面している。また、アジア新興国では、司法制度が十分に整っていない点もあり、紛争化すると著しく不利な立場に状況に追い込まれるケースもあるため、とにかく紛争を生じさせないために予見できるリスクをできる限り洗い出し、事前に対応策を構築しておくことが極めて重要である。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は、以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)

 

 

[1] 国土交通省ウェブサイト「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画2020」(https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo05_hh_000232.html

[2] 外務省ホームページ 無償資金協力に関する取り組み (https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/musho/index.html

[3] 外務省ホームページ 有償資金協力に関する取り組み

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/keitai/enshakan/index.html

[4] ニューヨーク条約は通称であり、正式にはConvention on the Recognition and Enforcement of Foreign Arbitral Awards (New York, 1958)という名称である。ニューヨーク条約加盟国同士は、外国における商事仲裁についての仲裁判断が、他国の裁判所によって承認執行が可能となっている。

[5] New York Arbitration Convention ウェブサイト(http://www.newyorkconvention.org/countries

ベトナムPPP法が2020年6月18日に国会にて可決されました。過去のベトナムのPPP法の変遷とその内容について一部ご紹介致します。

ベトナムPPP投資法の成立について

 

ベトナムでPPP(官民パートナーシップ)投資法が成立

                                    2020年7月5日
                            One Asia Lawyers ベトナム事務所

1 はじめに
 ベトナム国会は6月18日、「官民連携方式(PPP)による投資法案」[1](以下、「PPP法」または「本法」といいます。)を可決しました。
 本法は2021年1月1日に発効する予定ですが、本稿を執筆している7月5日時点では、まだ、成立した法律の全文が一般公開されていないため、本ニュースレターでは、まず、ベトナムにおける旧来のPPP関連法規を俯瞰的に整理しつつ、入手しうるPPP法草案[2]と、地元紙等で報じられている成立した法律の主なポイントを見ていきたいと思います。

2 PPPにかかるベトナムの過去の法規
 ベトナムの法制度上で「PPP」という文言が登場するのは今から10年前の2010年のことで、このときは、あくまで、試験的なPPPプロジェクトに対して試験的に適用する規則という位置づけでした[3]
 その後、2015年に政令化され、2018年に政令が全面改正されるなどして少しずつ法令の内容拡充が図られ、今回法律化されました。法律化されたということは、つまり、ベトナムでこの10年のあいだに、PPP事業がより重要性を増したともいえると考えます。

3 過去の法令の比較
 主なポイントだけに絞ってみても、過去の法令を比較すると、定義や対象、国の出資比率などの規定がかなり変化していることがわかります。
 PPP事業の対象として、2015年、2018年政令では国家機関庁舎の整備や農業などまで網羅していたものの、今回法律化されるにあたっては、対象が2010年の試験的規則程度にまで整理されたことなども、興味深い点かと思います。次の通り、過去のPPP関連法令の変遷内容を共有致します。

【PPP関連法令の概要比較】

試験的規則71/2010/QD-TTg)

2015年政令

15/2015/ND-CP)

2018年政令

63/2018/ND-CP)

2020年PPP法

(草案・報道ベース)

制定年
施行年
2010年11月9日
2011年1月15日
2015年2月14日
2015年4月10日
2018年5月4日
2018年6月19日
2020年6月18日
2021年1月1日
「PPP方式の投資」の定義
プロジェクト契約に基づき、国と投資家が連携してインフラ開発、公共サービス提供事業を実施すること
(第2条1項)
インフラ、公共サービス提供プロジェクトの実現、管理、運営を行うための、所管国家機関と投資家、プロジェクト企業とで締結される契約に基づき実現される投資形式
(第3条1項)
インフラ施設の建設、改造、運営、経営、管理、公共サービスを提供するために、所管国家機関、投資家、プロジェクト企業とで交わされるプロジェクト契約に基づき実現される投資形式
(第3条1項)
インフラ施設・システムの建設、国家に提供責任のある公共サービス・商品を提供する投資に参加する民間投資家を誘致することを目的とした、PPPプロジェクト契約の締結と履行による、国家と民間投資家の有期限の協力によって実現される投資方式
(第3条1項)
対象
1道路、橋梁、トンネル、フェリー乗り場
2鉄道、鉄道橋梁、鉄道トンネル
3都市交通
4空港、海港、河港
5上水道
6発電所
7医療(病院)
8環境(廃棄物処理工場)
9首相が決定するその他のインフラ開発、公共サービス提供事業
(第4条)
a)交通運輸インフラ施設・関連サービス
b)照明システム、上水道供給システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、社会住宅、再定住住宅、墓地
c)発電所、送電線
d)医療、教育、訓練、職業訓練、文化、スポーツインフラ施設および関連サービス、国家機関の庁舎
đ)商業、科学技術、水文・気象、経済区、工業団地、ハイテクパーク、集中IT区インフラ、IT応用
e)農業・農村インフラおよび農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス
g) 首相が決定するその他の分野
(第4条)
a)交通運輸
b)発電所、送電線
c)公共照明システム、上水道システム、排水システム、下水・廃棄物の回収・処理システム、公園、自動車・車両・機械設備の駐車場・置き場、墓地
d)国家機関庁舎、公務用住宅、社会住宅、再定住住宅
đ)医療、教育・育成・職業訓練、文化、スポーツ、観光、科学技術・水文・気象、IT応用
e) 商業インフラ、都市区・経済区・工業団地・産業クラスター・集中IT区インフラ、ハイテクインフラ、インキュベーション施設、技術施設、中小企業を支援するコワーキングエリア
g) 農業・農村開発、農業商品の加工・消費を伴う生産連携開発サービス
h) 首相が決定するその他分野
(第4条)
a)交通
b)送電網・発電所
c)利水、上水道、下水道、下水処理、廃棄物処理、
d)医療、教育・訓練
đ)ITインフラ
(第4条1項)
PPP事業として認められる投資額
規定無し
200億VND以上
(第15条1項đ)
(公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類)
規定無し
(公共投資法の規定に基づき、国家重要、A、B、Cグループ分類)
2,000億VND以上(医療、教育・訓練は1,000億VND以上)
(第4条2項a,b)
国の参加比率
投資総額の30%まで
(第9条2項)
規定無し
規定無し
投資総額の50%まで
(第71条2項)
主な契約類型
プロジェクト契約
(類型の定め無し)
(第2条)
BOT(建設・運営・移転)
BTO(建設・移転・運営)
BT(建設・移転)
BOO(建設・所有・運営)
BTL(建設・移転・リース)
BLT(建設・リース・移転)
O&M(運営・保守)
(第3条)
BOT
BTO
BT
BOO
BTL
BLT
O&M
上記の組み合わせ
(第3条)
BOT
BTO
BOO
O&M
BTL
BLT
上記の組み合わせ
(第3条)
投資優遇

プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の免除

(第41条)

投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇

(第55条)

投資家、プロジェクト企業:法人税優遇

プロジェクト用の輸入品:関税優遇

投資家、プロジェクト企業:土地使用料/賃貸料の減免

投資家、プロジェクト企業:その他法定の優遇

(第59条)

投資家、プロジェクト企業:土地使用料、土地賃貸等に関する優遇、および税や土地、投資、その他関連法で定めるその他の優遇
(第81条)

 

4 2020年PPP法による主な改正点

 10年の歳月を経て法律化された本法ですが、冒頭にも触れたように報道ベースではありますが、主な改正点としては、投資対象が大きく整理されたこと、契約類型としてBT方式が削除されたこと、PPP事業の収⼊が想定を25%下回った場合に政府側取り分を減らす(25%増加した場合は政府側取り分を増やす)保証制度が盛り込まれたことなどが挙げられます。
 本法については、法律全文が一般公開された段階にて、改めて詳しくアップデートします。

[1] ベトナム語は「Luật Đầu tư theo phương thức đối tác công tư(PPP)」

[2] 第7次草案 http://duthaoonline.quochoi.vn/Pages/dsduthao/chitietduthao.aspx?id=1618

[3] その前はBTO、BOTなどの契約類型に特化した法令があるだけだった。

                                      以上

本記事に関するご照会は以下までお願い致します。

fubito.yamamoto@oneasia.legal

ryo.matsutani@oneasia.legal

タイにおけるMRO規制について

2020年07月01日(水)

タイにおけるMRO規制について報告いたします。

MRO規制について

 

タイにおける MRO 事業に関する概要とアップデート

2020 年 6 ⽉ 30 ⽇
One Asia Lawyers タイ事務所

2016 年にプラユット政権が発表したタイの 20 カ年国家戦略の中核となる「タイランド 4.0」
は、外国企業の誘致を通じて先進技術を導⼊し、産業構造の⾼度化と 20 年以内に先進国⼊
りの実現を⽬指すために掲げられたビジョンですが、その投資対象地域として指定されてい
るのが、チョンブリ県、ラヨーン県、そしてチャチュンサオ県の3県から成る EEC
(Eastern Economic Corridor: 東部経済回廊)です。
2018 年 5 ⽉には EEC 開発法iが施⾏され、EEC 政策委員会は EEC への投資において特に重
要とみなされる 12 のターゲット産業iiなどに対し、BOI の恩典を超えた優遇措置の決定権限
が与えられています。その中でもラヨーン県に位置するウタパオ空港での MRO 事業はEEC
開発計画の中でも⽬⽟プロジェクトで、第 1 期に 63 億バーツ(約 229 億円)iiiを投じ 210 ラ
イの広⼤な敷地で開発が予定されています。

1 MRO 事業とは
MRO とは、M(整備:Maintenance)、R(Repair:補修)、O(Overhaul:オーバーホー
ル)を指し、MRO 事業とは、⼀般的に航空機やその装備品に関連する整備や補修事業のこ
とを意味します。
今後、短距離の移動に航空会社を利⽤する客が増え、航空機利⽤客数は急成⻑すると⾔われ
ていますが、利⽤客数の増加とともに必要とされる航空機台数の増加も⾒込まれています。
新型コロナウイルスの影響が⼤きく⽣じる可能性が⾼いですが、アジア太平洋地域における
航空機台数は、Oliver Wyman 社の調査によれば、今後 10 年で現在の 7,786 機から 13,838
機に、また、世界市場における占有率も 17%から 35%に増加、これに伴い MRO サービス
の需要が⼤幅に拡⼤すると予想されています。
現時点でアセアン地域において MRO 事業の環境が整備されているのはシンガポールとマレ
ーシアの 2 か国のみとなっており、タイはアセアン No.1 のみならず、世界の MRO ハブを
⽬指し、優先的にウタパオ空港の MRO センター開発プロジェクトを進めています。

2 エアバス社の撤退
エアバス社(Airbus S.A.S)は 2018 年よりタイ国際航空との合弁事業による MRO センター
開発プロジェクトへの参⼊を試みていましたが、2020 年 4 ⽉ 20 ⽇に事実上、タイにおける
同プロジェクトから撤退したことが⼤々的に報じられましたiv。その後、バンコクエアウェ
イズ(Bangkok Airways PCL)、BTS グループ(BTS Group Holdings PCL)、及びゼネコ
ン⼤⼿のシノタイ(Sino Thai Engineering and Construction PCL)で組織されるBBSジョ
イントベンチャーが、MRO センター開発プロジェクトを含む東部航空都市開発事業を
2,900 億バーツで落札v、6 ⽉ 2 ⽇の閣議で承認されましたが、当該事業に MRO 施設や航空
訓練施設については含まれていません。現在、①エアバス社に代わる合弁パートナーを新た
に⾒つけるのか、②タイ国際航空単独で投資するのか、または③タイ国際航空が単独で先⾏
投資し、合弁パートナーは後で⾒つけるのか、という3つの選択肢を検討していると伝えら
れていますvi。

3 MRO 事業にかかる規制
タイの MRO 事業にかかる規制は、航空法vii(Air Navigation Act, B.E. 2497 (1954))に定め
られています。タイ国内における航空機関連のセンター運営事業は以下の 3 つに分類され
(同法第 41/93 条)、事業運営にあたりタイ⺠間航空局(The Civil Aviation Authority of
Thailand, CAAT)の局⻑より証明書を取得することが義務付けられています(同法第 41/94
条)。
 (1) クラス1:航空機のメンテナンス事業
 (2) クラス2:航空機の主要構成要素(エンジン・プロペラなど)のメンテナンス事

 (3) クラス3:航空機の機材及び部品(通信機器を含む⾶⾏に必要とされる全ての機
材及び部品)のメンテナンス事業

同法第 41/22 条において証明書の申請者に要求される資格及び特性が規定されていますが、
クラス1の申請者に限っては、以下に該当する法⼈格を有する必要があります。

 (1) タイ法に基づき設⽴された⾮公開会社または公開会社で、タイに本社を有してい
ること(航空法第 41/23 条)。
 (2) 登録資本⾦が告⽰の要件を満たしていること(航空法第 41/23 条)。
   (例)固定翼機:2,500 万バーツ以上(2016 年運輸省告⽰第 54 条viii)
 (3) タイ国籍の株主(タイ国籍の⾃然⼈、政府や政府系企業、及びタイ国籍の株主が
    51%以上の株式を保有し、タイで設⽴され、本社をタイ国内に有する⾮公開会社、
    公開会社ix、またはパートナーシップ)が 51%以上の株式を保有すること(航空
    法第 41/23 条、第 41/24 条)。
 (4) タイ国籍者が事業の管理・経営権限を有すること。(航空法第 41/25 条)
    さらに、2016 年運輸省告⽰第 16 条において、以下の要件全てに該当する場合に
    限り、タイ国籍者が事実上の管理・経営権限を有しているとみなされると規定さ
    れています。
    a. 取締役会メンバーの三分の⼆以上がタイ国籍者であること。
    b. 管理者やマネージャーにタイ国籍者を有すること。
    c. 署名権限者の三分の⼆以上がタイ国籍者であること。
    d. 第 17 条に規定される通り、タイ国籍者以外の者により経営が独占されていな
     いこと。(第 17 条では 9 つの項⽬に渡り、経営が独占されると認定されるケ
     ースを規定しています。)
 (5) 取締役など管理職レベルの者が航空法第 41/26 条に規定される禁⽌特性(破産者、
    懲役刑を受けた者、他)を有していないこと(航空法第 41/25 条)。
 (6) 過去 3 年間でタイ⺠間航空局より発⾏された証明書が失効されていないこと。
    つまり、現⾏法において、外国企業はタイにおける MRO 事業への参⼊に際し、持ち株
    ⽐率49%以下でタイ企業や政府との合弁会社を設⽴し、タイ側に経営権限を与える⽅法
    しか選択肢がない状態となっています。

4 外資規制緩和の動き
まだ正式な発表がなされているわけではありませんが、規制緩和に関する草案(緊急勅令⼜
は航空法改正案なのかは現時点では不明となっております。)が内閣で承認される可能性が
あり、今後 3 か⽉かけてタイ法制委員会事務局(Office of the Council of State)により同草
案が検討される予定であると 6 ⽉ 18 ⽇付のネーション紙で報じられています(弊所弁護⼠
から別途当局担当者に問い合わせましたが、具体的な状況等は開⽰頂けませんでした。)。
ネーション紙によれば、同草案は外国企業の MRO 事業への 100%外資での参⼊を認める⼀
⽅で、タイ⼈労働者への技術移転や認可取得後 5 年⽬以降の全従業員に占めるタイ⼈労働者
の割合を 80%以上とするなどの義務が新たに課せられるなどといわれていますx。新ルールが
施⾏されればクラス1の航空機メンテナンス事業に要求されていたタイ企業との合弁要件など
が撤廃されるため、MRO 事業における活発な外国企業の投資活動が期待されますので、今後、
同草案の動向等について注視する必要があります。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
miho.marsh@oneasia.legal (マーシュ美穂)

 

i Eastern Special Development Zone Act B.E. 2561 (2018)
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/EEC-Act-English-Verunofficial.pdf
ii EEC 開発法 39 条によれば,⑴次世代⾃動⾞産業,⑵スマートエレクトロニクス産業,⑶⾼所得者対象観光及びメディカルツーリズム業,⑷先端農業及びバイオテクノロジー産業,⑸⾷品加⼯業,⑹ロボット産業,⑺航空及び物流業,⑻バイオ燃料及びバイオケミカル産業,⑼デジタル産業,⑽医療ヘルスケア産業の 10 産業であるが、これに⑾防衛,⑿教育が追加され現在では 12 産業となっています。
iii NNA ASIA 2020 年 1 ⽉ 6 ⽇付
https://www.nna.jp/news/result/1991504#MRO
v NNA ASIA 2020 年 4 ⽉ 23 ⽇付
https://www.nna.jp/news/result/2036016#%E3%82%A8%E3%82%A2%E3%83%90%E3%82%B9%E3%80%80
v Bangkok Post 2020 年 6 ⽉ 3 ⽇付
https://www.bangkokpost.com/thailand/general/1928440/bbs-lands-b290bn-u-tapao-airport-bid
vi Thansettakij 2020 年 4 ⽉ 22 ⽇付
https://www.thansettakij.com/content/430983#:~:text=%E0%B9%83%E0%B8%99%E0%B8%97%E0%B8%B5
viii Notification of The Ministry of Transport Re: Criteria and Conditions for Granting Licensing to Air OperationBusiness B.E. 2559 (2016)
https://www.nationthailand.com/business/30389789?utm_source=category&utm_medium=internal_referral
ix 無記名で発⾏された株式は外国籍株主に保有されているとみなされる(航空法第 41/24 (3))。
x The Nation Thailand 2020 年 6 ⽉ 18 ⽇付
https://www.caat.or.th/th/archives/50327

ラオスのPPP法草案の概要について報告いたします

PPP法草案について

 

ラオスのPPP法草案の概要について

2020 年6月28日

One Asia Lawyersラオス事務所

インフラ輸出プラクティスチーム

  • 背景

アジアにおいては、インフラ整備の充実、加速が課題となっており、そのためには巨大な資本の投下が必要となっています。特に、ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきました。2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[1]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、官民連携プロジェクト(Public Private Partnership、以下、「PPP事業」)に期待する声が高まっています。

 

ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっています。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられますが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっています。

 

例えば、株式会社JALUXと豊田通商株式会社は、ラオス政府と運営事業契約を締結し、1994年から約20年間にわたり、ラオス現地法人「Lao-Japan Airport Terminal Services Co., Ltd.」の運営に携わっています。これは、日本企業が海外において取り組む初の空港ターミナル運営民営化プロジェクトとなっています[2]。同プロジェクトでは、日本企業の持つノウハウにより、空港管理・運営がなされ、ラオス政府に対する円借款により、国際線ターミナルの拡張と国内線ターミナルの新設、駐車場の整備を行い、機能が強化されています。

 

また、PPP発電事業の例としては、2006年から関西電力株式会社がラオス政府から独占開発権を取得して実施しているナムニアップ水力発電プロジェクトがあります。現地法人「ナムニアップ1パワーカンパニー」が2013年にラオス政府と27年間の売電及び事業権契約を締結し、一定期間管理・運営を行って資金を回収した後、公共側に施設を譲渡する方式をとっています[3]

特に、電力発電に関しては、官民連携のモデルケースとして成功している実績があり、ラオス政府としては、その成功体験を、電力分野のみならず、公共施設の維持管理、医療分野、教育分野等においても実現させたいという思惑があります。

 

ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があります。同法では、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけています(2019年1月10日付けネガティブ事業及びコンセッション事業リストの承認に関する首相令(No03))

2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっています。2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態です。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれています。同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえます。

  • コンセッション事業の中のPPP

前提として、投資奨励法(2017年4月施行)では、コンセッション事業を以下のように定義しています。

 

【第 41 条 コンセッション事業 】

コンセッション事業とは、あるビジネスの開発と推進のために、投資家が政府から法律に基づき運営許可を受けた事業である。たとえば土地コンセッション、SEZ・輸出加工工業区 開発、鉱山採掘、電力エネルギー開発、航空業、通信事業などがある。コンセッション事業リストは政府によって規定される。

 

政府は、下記の表のとおり7分野23業種をコンセッション事業と定めています。コンセッション事業上の政府が奨励する分野に該当すれば、土地利用の外資規制や税制の恩典が得られる可能性があります。

 

【コンセッション事業リスト】

No

分野(業種の数)

1

農業・林業(4業種)

 

植林・果樹栽培のための国土のコンセッション(天然ゴムを除く)

 

灌木、食糧、工芸作物、生薬その他の栽培のための国土のリース/コンセッション

 

畜産のための国土のリース/コンセッション など

2

鉱業・採石(3業種)

 

鉱物採掘と加工、原油とガスの調査採掘 など

3

電力エネルギー(2業種)

 

特定の電力生産事業(水力、石炭、風力、太陽光、廃棄物、その他)

 

送電コンセッション など

4

PPP事業(1業種)

5

経済特区開発(1業種)

6

事業のための政府の土地リース又はコンセッション(5業種)

 

インフラ開発、公益事業、建物の建設、サービスのための国土のリースコンセッション(例えば:ショッピングセンター、ホテル、ゲストハウス、レストラン、公園、学校、病院、市場、運輸ステーション など)

 

国家・地方レベルの自然、文化、歴史観光地開発

 

スポーツのための国土コンセッション/リース など

7

国の所有権を利用した様々なサービス事業(7業種)

 

空港の建設と地上サービス、取水、上水の生産、水道の供給

 

輸送事業(ロジスティック、ドライポート など)

 

有線・無線通信事業、衛星通信事業 など

 

  • PPPの定義

投資奨励法、コンセッション事業リスト及び現在草案中のPPP法の中では、PPP事業を「事業価値のある新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス関連事業」と定義しているのみで、分野や必要資本額等は限定されていません。一般的には、PPPの中にコンセッションが含まれることが多いですが、ラオスの場合は、上記の通り、コンセッション事業リストの中にPPPが含まれるので、少し特殊な体系といえると考えます。

 

  • PPP事業の形態

一般的に政府主導型及び民間提案型の二つの形態に分けられますが、PPP法草案では、以下の通り定義されています。

 

(1) 政府による直接連携

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、民間セクターと連携してプロジェクト開発のために政府が直接投資する形態を意味しています。

 

また、日系企業のラオス政府との合弁又は国営企業への出資に際して、国営企業と民間企業との相違が問題となります。この点、ラオスにおける国営企業の定義は次の通りです。会社法上の国営企業の定義は、政府が50%以上資金を投資している企業または、他の形態の企業が全会一致で国のものとなった企業を意味すると規定されています(会社法第196条)。

 

国営企業と民間企業との一番の相違は、取締役会の議長が、政府の職員である必要があり、会社に常駐することが義務づけられている点にあります(会社法第199条)。一般的に、財務省の国営企業管理局が会社の重役を選任する役割を担っているといわれています。それ以外は大きな相違はないと理解しておりますが、会社法上は、国営企業の機能に関する詳細が明示されておりません。なお、別途規定する細則が存在していますが、現行の会社法が改正される前の会社法(2005年)を根拠としたものであり、それに取って代わる細則は現時点では、発行されていない状況です。

 

(2) 民間による直接投資

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、プロジェクトの経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、政府のプロジェクト開発において、民間セクターが投資の全責任を持つかたちで参入し、政府から支援を受ける投資形態を意味します。

 

  • PPPの方式

PPP法草案では、下記の各方式について、次の通り、Design Build Finance Operate (DBFO)、Design Build Operate (DBO)、Build Operate Transfer (BOT)、Build Own Operate Transfer (BOOT)、Build Own Operate (BOO)、Build Transfer Operate (BTO)、Build Lease Transfer (BLT)、Build Transfer (BT)、Operate and Maintenance (O&M)といった方法が明示されています。

 

  • PPPの準備、検討及び入札

同草案によれば、PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れは以下の通りです。

手続き

責任者

初期提案書の作成・提出

実施政府機関

初期提案書の検討 (20日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

民間セクター

発案書の検討(15日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

実施政府機関または民間セクター

FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

官民連携推進委員会(計画投資省)

(国民議会等の承認必要)

FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

実施政府機関または民間セクター

入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

実施政府機関及び官民連携推進委員会

入札管理委員会の選定

財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

 

  • PPP契約書とその内容

計画投資省は、実施政府機関と協力して、プロジェクトの開発者として選定された民間セクターとPPP契約書の内容について協議することになっています。入札における落札後、30日以内に契約書を完成させる必要があります。

ワンストップサービス室はPPP契約草案とプロジェクトの詳細を民間連携推進委員会へ提案します。草案を修正する必要がある場合は、計画投資省は、同委員会が規定する期間内で、実施政府機関及び民間セクターと協議して、草案を修正及び変更します。

 

また、PPP契約書の基本的な記載事項は次の通りと定められています。なお、PPP法及びその他ラオスの法令に違反しない限り、上記以外で必要な条件を追加で規定することが可能です。

(1)プロジェクトの範囲及び業務内容

(2)契約当事者と事業主体者の責任

(3)各当事者のプロジェクトのリスクに対する責任

(4)民間セクターの関税及び税金の納税義務

(5)土地使用権、プロジェクト実施地へのアクセス及び便宜について

(6)技術、品質、安全面に関する実務規定

(7)建設期間、事業開始日、ビジネス及び維持管理

(8)財政、保証、精算及び契約不履行の場合の罰則規定

(9)契約書の単価の再検討、修正

(10)プロジェクトに問題が起こった時の政府及び民間の立ち入り検査をする権利

(11)契約書の再検討、修正及び変更

(12)技術面を含めたプロジェクトの範囲及び業務内容の条件変更

(13)プロジェクト追跡調査及び報告

(14)予備費に関する計画

(15)紛争解決

(16)契約期間

(17)準拠法

(18)プロジェクト管理

 

  • PPP契約締結のプロセス

同草案によれば、契約締結までの手順は、以下の通りとなっています。

 

  • 県・ヴィエンチャン都の計画投資課は、政府及び地方自治から契約締結の許可を取得します。
  • ワンストップサービス室は、政府及び地方自治体から契約締結の許可を取得後5日以内に、書面にて実施政府機関と民間セクターに対して通知を出します。
  • 民間セクターが通知を受け取った後、15日以内にワンストップサービス室へPPP会社[4]設立の許可申請を行います。
  • 政府の代表である県・ヴィエンチャン都の計画投資課とPPP会社の代表である民間セクターは、契約締結が許可された後、30日以内に署名式を行う必要があります。

 

以上のように、PPP草案においては、今まで不明確であったPPPプロジェクトの実施プロセスについて明示された点について評価できると考えます。今後のPPP草案の修正や施行予定等については未定ではありますが、引き続き状況を注視していく必要があると考えます。

 

                                             以 上

[1] file:///C:/Users/Windows%2010/Downloads/8th_NSEDP_2016-2020.pdf

[2] 豊田通商株式会社HPより引用(https://www.toyotatsusho.com/press/detail/180809_004232.html

[3] 関西電力株式会社HPより引用(https://www.kepco.co.jp/corporate/international/generate/laos.html

[4] PPP事業を実施するためにラオスの法令に則って入札により選定された法人又は法人グループにより設立された会社

 

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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

ラオスにおける電気通信・インターネット利用者保護について報告いたします

電気通信・ネット利用者保護について

 

 

 

ラオスにおける電気通信・インターネット利用者保護について

 

2020 年6月25日

 One Asia Lawyers ラオス事務所

  • 背景

ラオスにおいては、電気通信法(2011年)及び消費者保護法(2010年)が存在していますが、電話及びインターネット等の利用者の保護に関する具体的な規定はありませんでした。ラオスでは、2004年ぐらいからタイ系資本とラオス政府の合弁会社であるラオ・テレコム(LTC)と国営のラオス電気通信公社(ETL)がインターネット接続サービスを開始しています。移動電話に関しては、主にLTC、ETL、ベトナム資本のUnitel、Beeline Lao(LTCの傘下となる予定)の4社がサービスを提供しています。各社サービスの質にもばらつきがありますが、ネット接続スピードの不安定性、データ使用量に見合わない料金を請求されるなど、問題も出てきているようです。今回、電気通信・インターネット利用者保護に関する大臣合意が郵便電気通信省より発行され、2020年5月25日に官報に掲載、15日後に施行されています。その概要をご紹介します。

 

  • 営業電話等の規制

ラオスでは、営業目的で電話をかけてくる通信関連業者は少ないですが、限度を超えると迷惑行為とみなされます(同合意第8条)。時間帯及び回数に対する制限が以下の通り、規定されています。

 

1.月曜日から金曜、8時から17時まで、営業目的の電話又は通信関連の広告をショートメッセージサービスにて(SMS)配信することを禁止する

2.営業電話又はSMS配信は、消費者一人につき、月に10回までとする

3.1日3回以上の営業電話又はSMS配信を禁止する

4.商品やサービスを宣伝する目的で電話又はSMS配信する必要があるものは、電気通信会社より許可を取得する必要がある

 

利用者相談窓口の設置

政府は、インターネットサービス、通信に関する商品[1]、迷惑電話等に困っている消費者に対して相談窓口を設置しております。

 

1.電気通信会社に直接相談する

2.県・ヴィエンチャン都の郵便電気通信課に直接相談する

3.電話相談窓口は、商工業省(1510)、首相府事務所(1516)及び国民議会(156)の3か所で受け付けています。

4.インターネットで相談する場合:www.Icp.gov.la (商工業省)

 

通信関連サービス業者が自社の商品・サービス等にクレームを受けた場合、7営業日以内に解決し、両者の側の立会人を含めた署名付きの覚書を交わす必要があります。なお、消費者が相談したにも関わらず、問題が解決されない場合、県・ヴィエンチャン都の郵便電気通信課へ解決を要請することが可能となっています。

 

 

[1] 電話及びネットSIMカード、固定電話・移動電話回線システム、ネットサービス、プリペイドカード等を指します。

                                             以 上

 

 

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労働、社会保険、ベトナム人労働者の送り出し分野に関する罰則を定める新規定が2020年4月15日に発効しました。本政令についていくつか例を挙げてご説明致しております。

労働、社会保険、ベトナム人労働者の送り出し分野に関する罰則について

 

労働、社会保険、ベトナム人労働者の送り出し分野に関する罰則を定める新規定

2020年6月9日

One Asia Lawyers ベトナム事務所

1 概要  2020 年 3 月 1 日、労働、社会保険、契約に基づき外国で就労するベトナム人労働者の送り出し分野の行政違反の処罰について定めた政令 28/2020/ND-CP 号(以下、「本政令」といいます)が公布され、2020 年 4 月 15 日に発効しました。これにともない、従前の政令 95/2013/ND-CP 号、88/2015/ND-CP 号は失効しています。  ベトナムで活動する日系企業の皆様におかれましては、日々、労務管理に苦労され、実務上やむを得ないという判断、あるいは、過去事例や他社事例を精査せずに踏襲することで結果として法令に違反する例があろうかと思います。本ニュースレター末尾に参考資料として本政令で定められている罰則条項の見出しを全掲載しておりますので、自社の労務管理等に違反が無いか確認するためにご利用いただけますと幸いです。  何かお困りのことがございましたら、是非、弊所までご相談いただけますと幸いです。

2 本政令の対象  本政令では、就職サービスや労働派遣サービスなどの労働関連サービス業、採用から労働契約解除までの一般労務、労働安全衛生、女性の雇用、外国人の雇用、未成年者の雇用、お手伝いさんの雇用、労働紛争、労働組合、社会保険など多岐にわたる場面での違反行為の罰則が定められています。  以下、従業員の採用から解雇までのいくつかの罰則について、ケーススタディ形式で簡単にご紹介いたします。  なお、本政令で規定している罰金額は原則として個人に対するものであり、法人(組織)に対しては倍額となりますので注意が必要です(第 5 条)。また、罰金額に関する VND の円換算は200VND=1 円としています。

3 採用の場面

≪事例≫  X 社は、求人に際して、“遊び”感覚の応募者が多いため、本気度をはかるために面接に参加する 条件として応募者に 20 万ドン(約 1,000 円)支払わせることにした。

 

 採用や労務管理における、使用者の次の a)から dd)の行為については、100 万ドンから 300 万 ドン(約 5,000 円から 1 万 5,000 円)の罰金が科され、d)のように金銭を徴収した場合には、その 金銭を応募者に返還しなければなりません(第 7 条 1 項、3 項)。X 社の行為は、第 7 条 1 項 d)に 該当し、X 社は、罰金の支払い、及び応募者に対して金銭の返還義務を負う可能性があります。

[第 7 条 1 項]

  1. a) 採用結果を公開通知しない、採用結果が出てから 5 営業日より後に通知する。
  2. b) 労働者の使用について、本社(あるいは支店、代表事務所)を設置している地域の労働傷病 兵社会福祉室(あるいは労働傷病兵社会福祉局)に届け出ない。
  3. c) 労働者の変更の状況を、本社(あるいは支店、代表事務所)を設置している地域の労働傷病 兵社会福祉室(あるいは労働傷病兵社会福祉局)に報告しない。
  4. d) 応募者から金銭を徴収する。
  5. dd) 労働管理簿を作成しない、期限通りに作成しない、法定の基本的な内容が網羅されていな い、労働契約が有効になった際に労働管理簿に労働者の情報を十分に記載しない、労働管理簿 に情報の変更を反映しない。

4 労働契約の締結場面

≪事例 1≫ X 社は、自社の事業に必要な資格を保有し、将来有望なベトナム人 A を採用した。A が自社だけ に貢献するよう、A との労働契約の締結に当たって、A の保有する資格の証明書の原本を会社で 預かると定め、実際に証明書を保管している。
≪事例 2≫ Y 社は、業務のために必要な高額な機器をベトナム人 B に貸与している。Y 社は、当該機器を B に大事に扱ってもらうため、退職時に返金するという条件で、B から一定額の金銭を預かっている。

 労働契約の締結や履行にあたって、労働者の身分証明書の原本や証明書類の原本を預かったり、 金銭を差し出させたりする行為には、2,000 万 VND から 2,500 万 VND(約 10 万円から 12 万 5,000 円)の罰金が科されます(第 8 条 2 項)。X 社の行為は第 8 条 2 項 a)に該当するものとして、X 社 は、罰金の支払い義務を負う可能性があります。また、Y 社の行為は同項 b)に該当するものとして、 Y 社は、罰金の支払い義務を負う可能性があります。

[第 8 条 2 項]

  1. a) 労働契約の締結あるいは履行にあたって、労働者の身分証明書や学歴、資格証書類の原本を預かる。
  2. b) 労働契約の履行にあたって、労働者に金銭や何らかの資産を担保として差し出させる。
  3. c) 満 15 歳以上 18 歳未満の労働者について、労働者の法的代理人の書面での同意無しに労働契 約を締結する。

 また預かった身分証や金銭、資産等は本人に返還することはもちろん、金銭については預かって いた期間について、国営商業銀行が設定している最も高い無期限の預金金利分も加算しなければな りません(第 8 条 3 項 a),b))。したがって、Y 社は、当該金利分についても支払う義務を負う可 能性があります。

5 試用

≪事例≫

X 社は、ベトナム人 A を試用していたが、法定の試用期間では本採用すべきかどうか判断ができ なかったため、法定の試用期間を超えて試用を継続した。その間の待遇は、A が正社員の半分も 仕事ができないという理由で、正社員の半分の給料としていた。

 法定の期間を超過して試用したり、試用期間中に法定の水準を下回る給料を支払った場合には、 使用者に 200 万 VND から 500 万 VND(約 1 万円から 2 万 5,000 円)の罰金が科されます。X 社の 行為は、第 9 条 2 項 b)及び c)に違反しているものとして、X 社は、罰金の支払い義務及び本来の支払うべき給与(その業務で設定されている給料の 85%を下回らない水準のもの)の支払い義務を負う可能性があります。また、第 9 条 2 項 d)にも違反しているとされた場合、労働契約の締結義務を 負う可能性もあります(第 9 条 2 項、3 項)。

[第 9 条 2 項]

  1. ひとつの業務について何度も試用する。
  2. b) 法定の期間を超過して試用する。
  3. c) 試用中の労働者に、その業務で設定されている給料の 85%を下回る水準で給料を支払った。
  4. d) 試用期間が満了し引き続き業務に従事させたものの、労働契約を労働者と締結しない。

6 労働契約履行の場面

≪事例≫  X 社は、ベトナム人 A を営業職として採用し労働契約を締結した。その後、納品部門で人員が不足しているため、労働契約で記載している業務とは違うが、ある日 A が出勤した際、納品部門に異動させる旨伝えたうえ、納品部門で勤務させた。なお、納品部門の勤務地は、労働契約で記載している営業部門のオフィスとは異なるオフィスである。

                                                                             

 労働法第 31 条 2 項に定める「3営業日前までに通知せずに労働契約で合意した業務とは異なる業務に労働者を一時的に異動させた、または一時的に従事させる期間を明示しなかった、または労働者の健康や性別に不適当な業務に配置する」行為には、100 万 VND から 300 万 VND(約 5,000~ 1 万 5,000 円)の罰金が使用者に科されます(10 条 1 項)。X社の行為は、通知なく労働契約で合 意した業務と異なる業務に異動させたものに該当し、罰金の支払い義務を負う可能性があります。  また「労働契約書で合意した職場の場所と異なる場所に従業員を配置する(労働法第 31 条のケースを除く)」行為には 300 万 VND から 700 万 VND(約 1 万 5,000~3 万 5,000 円)の罰金が科さ れます(第 10 条 2 項 a))。X 社の行為が労働法第 31 条に定めるケースに該当しない場合、X 社 は、罰金の支払い義務を負う可能性があります。

7 労働契約の変更・解除 

≪事例 1≫ X 社は、有期で雇用しているベトナム人 A を無期限の雇用としたくないため、有期労働契約の期限を「付録」を使って何度も更新している。

 「労働契約書の期限を、付録(phụ lục)を使って 2 度以上更新する、または労働契約の期限を労働契約の付録を使って変更した際に、締結した労働契約の種類を変更する」行為については、違反した労働者の数に応じて 100 万 VND から 2,000 万 VND(約 5,000 円から 10 万円)の罰金が科さ れます(第 11 条 1 項)。X 社の行為は上記に該当し、X 社は、罰金の支払い義務を負う可能性があります。

≪事例 2≫  Y 社は、組織再編を行うため従業員の一部を解雇することにしたが、解雇対象者が 5 名のみであったため本人との面談のみで、面談の 1 週間後に労働契約を解除した。

 「組織、技術の変更または経済的理由により、労働者 2 人以上を解雇するにあたって、労働者集団代表組織(労働組合)と協議しない、または省級の労働管理機関に 30 日前までに書面で通知しない」行為、「法定の労働者使用計画を作成しない」行為については、500万VNDから1,000万VNDの罰金が科されます(第 11 条 2 項 a),b))。Y 社は、上記義務を順守していないとして、罰金の支払い義務を負う可能性があります。

以 上

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6月2日付け労働省通達18号により、2020年度の年功補償の支払いが、2021年まで延期されることとなりました。
その概要について、ご紹介いたします。
 

カンボジアにおける2020年度の年功補償の支払い延期について

 

2020 年度年功補償の支払い延期について

2020年6月10日
One Asia Lawyers カンボジア事務所

 6月2日付け労働省通達 18 号により、2020 年度の年功補償の支払いが、2021 年まで延
期されることとなりました。

 本通達以前に、本年 4 月 7 日付の政府プレスリリースにより、新型コロナウイルスによる
経済状況悪化の救済策として、事業者に対し、2020 年の年功補償支払いの延期を認める旨
の発表されていました。本通達は、基本的にそのプレスリリースを踏襲したものです。
具体的には、下記の 2020 年の年功補償金の支払いについて、2021 年まで延期するもの
とされました。
1.無期労働契約に基づいて縫製・製靴業に従事する労働者に対する 2018 年以前の年功補
償の遡及支払分
2.無期労働契約に基づいて従事する労働者(全産業)に対する 2020 年の年功補償
 ただし、この延期期間中に、労働者の重大な契約違反による解雇または労働者の自主退職
以外の事由によって雇用契約が終了した場合、使用者は当該労働者に対して、上記の年功補償金を支払わなければならないとされています。

 本通達は、支払い時期を延期するのみで、2020 年度の年功補償の発生自体には影響をし
ません。したがって、会計上引当金を計上することは必要となります。また、上記で触れら
れていますが、解雇の場合についてはその時点での支払いの必要があります。
 また、本通達は、2020 年度の年功補償のみに言及しているため、本通達を含む現時点の
法令を前提とすると、2021 年度に 2020 年度と 2021 年度の 2 年分の合計を支払うことにな
ります。

※ 年功補償
 年功補償とは、2018 年の労働法改正により 2019 年から導入された労働者に対する手当
ての一種です。無期労働契約の労働者に対して、雇用継続1年につき、15 日分の賃金など
の相当額を支払う必要があります。支払い時期は、上半期(1 月から 6 月)と下半期(7 月
から 12 月)の年2回です。

 ①2018 年以前の雇用期間を対象とした年功補償と、②2019 年以降の雇用期間を対象とし
た年功補償の二つがあります。このうち①について、縫製・制靴業以外の産業はそもそも支
払い時期が未到来のため(2021 年 12 月期以降)、縫製・制靴業のみを対象に延期するとし
ているものです。

以 上

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ラオスにおける投資家の経歴証明審査について報告いたします

経歴証明審査について

 

投資家の経歴証明審査について

2020 年 6 月 8 日
One Asia Lawyers ラオス事務所

2019 年 2 月 1 日から施行されている「 企 業 登 録 に 関 す る 合 意(No.0023)」の中では、
会社設立時の必要書類は、原則、①企業登録申請書 ②事業内容表明書、 ③会社設立契約書
のみと規定されています。

しかしながら、実際は、企業登録時に、投資家の経歴証明を治安維持省へ提出し、その結果
(いわゆる、ブラックリスト審査)をもって、企業登録が完了するという手続きがなされて
いました。

ブラックリスト審査の結果を取得するまでには、最短で3か月、時には半年から1年間待たせ
られることもありました。政府による企業登録方法の簡略化が進む一方で、同審査に関して
は、これまで何ら方針が示されてこなかったため、企業登録にかかる日数は、実質的には何
も変わっておらず、政府の推し進める投資環境改善の足枷になっていました。

このような状況において、ようやく、2020年6月2日に商工業省より、新規で会社を設立する
場合、企業登録書を取得した後に、投資家1の経歴書を治安維持省へ提出する手順へと変更
するとの通知がありました。

治安維持省は、ブラックリスト審査を通過しなかった投資家に対してのみ、商工業省へその
理由を通知します。

なお、既存の会社においては、企業登録内容(投資家情報)に変更がある場合、これまでどお
り、治安維持省へ新しい投資家の経歴書を提出します。その結果を取得後に、企業登録証の発
行元において、企業登録情報の変更手続きを開始することが可能ですので、ご留意下さい。


以 上

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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)

タイにおける電子システムを利用した会議の新セキュリティ基準の概要について報告いたします

電子システムを利用した会議の新セキュリティ基準施行について

 

電子システムを利用した会議の新セキュリティ基準施行について

2020 年 6 月 8 日
One Asia Lawyers タイ事務所

2020 年 4 月 19 日に「電子システムを利用した会議に関する勅令」が施行された時点では、同勅
令第 7 条で定めるセキュリティ基準が発行されておらず、2014 年に施行されたセキュリティ基
準を引き続き順守する必要がありましたが、5 月 27 日に新セキュリティ基準に関するデジタル
経済社会省の告示が施行され、それに伴い電子取引開発機構(ETDA)により情報セキュリティ
保全基準及び会議管理システムの認証における規則、手順、条件が施行されています。

本ニュースレターでは、電子システムを利用した会議(以下、「オンライン会議」)に関する
法規制のまとめと、5 月 27 日に施行された新セキュリティ基準の概要について、以下の通り解
説致します。
なお、ETDA が定める情報セキュリティ保全基準及び会議管理システムの認証における規則、
手順、条件については、資料が膨大なため、個別にお問合せ頂ければ幸いです。

1 オンライン会議に関する法規制のこれまでの経緯と要点

オンライン会議に関する法規制、ガイドライン

2014 年 施行

国家平和秩序 評議会

告示

第 74/2557 号:電子システムを利用した会議
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/ncpo-annouce74-2557.pdf
✓ オンライン会議の要件として以下を満たす必要 があった。
 • 少なくとも定足数の 3 分の 1 の人数が同 一開催場所において物理的に会議に出席 していること。
 • 会議開催中はすべての出席者がタイ国内にいること
✓ 3 番の 2020 年の勅令で廃止された。(1 番の 2014 年の告示に基づき開催された全オンライン 会議は 3 番の 2020 年の勅令に準拠しているとみ なされる)

無効

2014年 施行

情報技術・通 信省(現デジ タル経済社会 省)告示

電子システムを利用した会議のセキュリティ基準に ついて(旧セキュリティ基準)
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/2.pdf
✓ 1 番の 2014 年の告示に基づき施行されたオンライン会議のセキュリティ基準。3 番の 2020 年の勅令において、新セキュリティ基準が施行されるまでは、旧セキュリティ基準に準拠するよう規定される。
✓ 今回新たに新セキュリティ基準が施行されるまでは、旧セキュリティ基準に従い開催した、または現在開催準備中の全オンライン会議について、新セキュリティ基準の施行後 60 日間は旧セキュリティ基準に基づくオンライン会議の開催が許可されている。

無効

2020 年

4月19 日

勅令

電子システムを利用した会議
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/3.pdf
✓ 同勅令施行により、1 番の 2014 年の告示は廃止。
✓ 1 番の 2014 年の告示で定められた以下のオンライン会議の要件が廃止。
 • 少なくとも定足数の3 分の1 の人数が同一開催場所において物理的に会議に 出席していること。
 • 会議開催中はすべての出席者がタイ 国内にいること。
 • 秘密会議への使用は禁止とする。
✓ 通常の投票と秘密投票の両方を想定した投票システムを整備すること。
✓ 新セキュリティ基準が施行されるまでは、旧セ キュリティ基準に準拠すること。

有効

2020 年

5月27 日

施行

デジタル経済 社会省

告示

電子システムによる会議のセキュリティ基準につい て(以下、「新セキュリティ基準」)
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/4.pdf
✓ 3 番の 2020 年の勅令の下に制定される。
✓ 同告示施行により、2 番の 2014 年の旧セキュリティ基準は廃止。
✓ オンライン会議開催時の手順や機密事項を扱うオンライン会議開催時の基準等を定める。

有効

2020 年

5月 29 日

施行

ETDA

ガイドライン

会議管理システムの情報セキュリティ保全基準
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/5.pdf
✓ 新セキュリティ基準の第 24 条に従い、ETDA が制定した。
✓ 全 41 頁にわたる詳細な基準
✓ 以下の基準を参考にしている。
• ISO27001 / ISO27002
• ISO27701
• 欧州ネットワーク・情報セキュリテ ィ機関(ENISA)のガイドライン
• タイのデジタルアイデンティティガ イドライン( Digital Identity Guideline for Thailand)〈ขมธอ. 19- 2561 版及び ขมธอ. 20-2561 版〉

有効

2020 年

5月 29 日

施行

ETDA

告示

会議管理システムの認証における規則、手順、条件 について
https://oneasia.legal/wp-content/themes/standard_black_cmspro/img/6.pdf
✓ 新セキュリティ基準の第 25 条に従い適合性を 評価し、認証を与えるために制定された。  
✓ 当該認証を取得することは事業者の義務ではない(あくまでも希望者のみ、申請可能)。

有効

 

2 新セキュリティ基準の概要について

2020 年 5 月 27 日に施行された新セキュリティ基準のポイントとしては、オンライン会議開催の
際に少なくとも以下に挙げる(1)~(7)のプロセスについて、各社が明確な基準を規定し、
遵守する必要があることです。
また、機密情報に関してオンライン会議を開催する際は、通常のプロセスに加え、別途基準を
規定する必要があります。各プロセスの具体的な実施事項については、後述する告示の規定事
項と別途施行された会議管理システムの情報セキュリティ保全基準に準ずる必要があります。
これらの規定は、別途付属定款で定めることも可能ですが、付属定款では詳細に触れず、別途
オンライン会議の運用に関する社内規定を制定し、会議の招集通知と合わせて会議参加者に送
付することも可能であると考えます。詳しい運用方法については別途お問合せ下さい。
なお、希望者に限り、自社のオンライン会議システムが新セキュリティ基準に適合しているか
否かについて ETDA に評価を依頼し、認証を受けることも可能となっています。

 

最低限の規定事項

通常のオンライン会議
機密情報を扱うオンライン会議
(1) 会議前の会議参加者の本人確認
(2) 音声、または音声+画像による双方向のコミュニケーション
(3) 会議参加者の会議資料へのアクセス
(4) 会議参加者による投票(通常投票、秘密投票)
(5) 関連データまたは証拠の保管及び保管基準
(6) 会議参加者全員のログデータの保管と保管基準
(7) エラー発生時の通知方法

※部外者が会議の内容を知り得ないようにするための安全対策を講じること。

※部外者の出入りを防止するために閉鎖された場所で会議が行われていることを証明すること。

※音声、または音声及び画像の保存を禁止すること。

※ETDA が定める会議管理システムの情報セキュリティ保全基準に準ずること。

 

デジタル経済社会省告示
「電子システムによる会議のセキュリティ基準について」
2020 年 5 月 27 日施行
重要事項抜粋(日訳)

第1章:一般

  ✓ オンライン会議を開催する際は、定められた方法で事前に通知すること。(第 4 条)
  ✓ 最低限、規定された7つのプロセスを有すること。(第 5 条)
  ✓ 別の政府当局がそれぞれ管轄する法規制において、会議開催に関連する別の運用方法を
   規定する場合、新セキュリティ基準を考慮した上で、それぞれが管轄する法規制に従い
   その運用方法の詳細を追記できる。(第 6 条)
  ✓ 秘密会議は、第 2 章に加え、第3章の規定にも従うこと。(第 7 条)

第2章:オンライン会議開催基準

  ✓ オンライン会議主催者は、自社で開発した会議管理システムまたはプロバイダーが提供
   する会議管理システムを使用可能。(第 5 条)
  ✓ 7つのプロセスの基準を規定。
    (1) 会議前のオンライン会議参加者の本人確認
      • ユーザーネームやパスワードを使用(第 8 条)
      • ワンタイムパスワードを使用(第 8 条)
      • その他の参加者による会議前または会議中の本人確認(第 8 条)
    (2) 音声、または音声+画像による双方向のコミュニケーション
      • 十分な回線容量を有すること。(第 9 条)
      • 電話やテキストメッセージによるコミュニケーション等、トラブルが起
        こった際の予備の方法が用意されていること。(第 9 条)
      • 議長またはシステム管理者が必要に応じて音声または音声及び画像の送
        信を中断する等、会議参加者の権限の管理が可能なこと。(第 10 条)
    (3) 会議参加者の会議資料へのアクセス
      • 会議資料は会議前または会議中に送付すること。(第 11 条)
      • 会議資料へのアクセス方法を事前に通知すること。(第 11 条)
      • 招集通知、会議資料、議事録、そのた会議関連資料は、データの形でも
        可能。(第 12 条)
    (4) 会議参加者による投票(通常投票、秘密投票)
      • 通常投票については、声、署名、またはメッセージ送信などの方法によ
        り、投票権限を有する参加者及び投票内容を特定できるようにすること。
      (第 13 条)
      • 秘密投票については、投票者を特性せずに、投票者全体の人数及び全票
        数についてオンラインアンケートを利用するなどして明示できるように
        すること。(第 13 条)
    (5) 関連データまたは証拠の保管及び保管基準
      • 議事録として記録する、全参加者数や参加者名簿を含むオンライン会議
        参加者の特定時に生じるデータまたは証拠(第 14 条)
      • 議事録として記録する、会議参加者の投票結果を含む投票時に生じるデ
        ータまたは証拠(第 14 条)
      • 会議システムまたはその他の方法で保存されるオンライン会議中の参加
        者の音声、または音声及び画像データ(秘密会議を除く)(第 14 条)
      • 会議中、7つのプロセスを実行中に発生したエラー(第 14 条)
    (6) 会議参加者全員のログデータの保管と保管基準
      • 参加者の識別情報またはユーザーネーム(第 14 条)
      • 標準時間に基づく、会議の開始及び終了時間(第 14 条)
      • オンライン会議の主目的に影響しないエラーによって会議は無効とはな
        らない。(第 14 条)
      • 会議の主催者は、エラーの是正とその影響に関するガイドラインを別途
        定款に定めることが可能。(第 14 条)
    (7) エラー発生時の通知方法
      • 会議主催者はエラーの際、エラー修正について通知する方法を確保する
        こと。(第 16 条)

✓ (5)及び(6)で保管されるデータは、以下の手順に従うこと。
    (1) 改ざんまたは編集を防止するため手順。ただし、データの内容に影響を及ぼさな
       い変更を除く。(第 15 条)
    (2) 保存後、データを再利用し表示する手順。(第 15 条)
    (3) データへのアクセス権限付与手順、アクセス権のない者へのアクセス拒否手順、
       及びシステム管理者および会議主催者が保存されているデータを編集してはなら
       ない措置を備えた手順。(第 15 条)
✓ プロバイダーの会議システムを使用する場合は、プロバイダーは会議開催語 7 日以内に
  システム内に保存された情報を引き渡すこと。(第 17 条)
✓ 会議に関する情報が破損した場合、会議主催者またはサービスプロバイダーは保存媒体
  から安全な方法で削除すること。(第 18 条)

第3章:機密情報に関するオンライン会議開催基準
  ✓ 会議で扱う情報について、部外者が知り得ないようにするための安全対策を講じること。
    (第 19 条)
  ✓ 会議参加者は、部外者が会議で扱う情報を知り得ないこと、及び部外者の出入りを防止
    するために閉鎖された場所で会議が行われていることを証明すること。(第 20 条)
  ✓ 音声、または音声及び画像の保存を禁止すること。(第 21 条)
  ✓ ETDA が定める会議管理システムの情報セキュリティ保全基準に準ずること。(第 22 条)
第4章:情報セキュリティ保全基準
  ✓ 最低限、以下の情報セキュリティ保全基準を定めること。(第 23 条)
     • 機密性(Confidentiality)
     • 完全性(Integrity)
     • 入手可能性(Availability)
     • 個人情報保護
     • その他、会議に関連して生成されるデータの真正性(Authenticity)、責任
     (Accountability)、否認防止(Non-reputation)、信頼性(Reliability)
  ✓ ETDA の定める情報セキュリティ保全基準に従うこと。(第 24 条)
  ✓ ETDA 又は ETDA が指定する機関は、同告示に定める基準に適合していることの評価及
    び認証を行うことができる。(第 25 条)
  ✓ 当該機関の認証を受けた会議管理システムは、当該告示に定める基準に適合した手順を
    有しているものとみなされる。(第 25 条)
  ✓ 会議管理システムの適合性の評価及び認証手続きは、ETDA が定める基準及び手続きに
    従うこと。(第 25 条)
  ✓ ETDA は、国内外の機関による会議管理システムの全部または一部が、第 24 条で規定さ
    れる ETDA の情報セキュリティ保全基準に適合している場合には、第 25 条の規定を順
    守しているとみなす旨、規定できる。(第 26 条)
  ✓ 同告示の施行前に準備され、まだ完了していないオンライン会議は、2557 年の旧セキュ
    リティ基準に従い実施すること。(第 27 条)
  ✓ 2557 年の旧セキュリティ基準に基づくオンライン会議の実施は、同告示施行後 60 日を
    超えない期間、許可される。(第 27 条)

以上

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yuto.yabumoto@oneasia.legal
藪本 雄登