ラオスにおける仮想通貨に関する規定について
ラオスにおける仮想通貨に関する規定について報告いたします。 →仮想通貨に関する規定について
「ラオスにおける仮想通貨に関する規定について」
2019 年 8 月 20 日
One Asia Lawyers ラオス事務所
藪本 雄登
内野 里美
1.背景・経緯
昨今、ラオス国内外からeコマースに関連するビジネスも増えており、決済システムに関する法整備が進められています。隣国タイにおいては、すでに、仮想通貨を定義する法律が制定され、仮想通貨交換業者のライセンス制度が導入されていますが、ラオスにおいては、仮想通貨を規定する法令は存在しません。タイの経済、社会、文化等の影響を受けやすいラオス社会において、仮想通貨のネガティブな影響が懸念されています。
そこで、ラオス中央銀行(以下、「中銀」)は、2018年8月29日付で仮想通貨は合法的に認められた通貨でも、決済手段でもなく、誰の管理下にもなく、様々なリスクが存在するため、投資や売買に関しては、事前に十分に情報収集する必要があると、国民に対して、注意喚起を出しています。
また、ラオス国内の金融業者に対して2018年10月30日付で仮想通貨への投資、売買に関する勧告(以下、「中銀通達」)が出されています。
以下、金融業者に対する中銀通達について解説いたします。
2.中銀通達の概要
運営・発行主体が明確であり、法定通貨の代替として世界中で普及している「電子マネー」という類似の概念をうたい文句に、仮想通貨を使用した商品の代金及びサービス料の支払いの受入れや仮想通貨への投資、売買又は仮想通貨に関連したビジネスへの勧誘を目的として広告が出始めたことをきっかけに、中銀より通達が発出されました。
中銀は、当局の管理下にあるすべての金融業者に対して仮想通貨に関連した取引禁止事項を以下の通り規定しています。
1.自身又は顧客の利益のための仮想通貨への投資又は売買を禁止する 2.自身が提供するサービスの一環として、仮想通貨交換業を行うことを禁止する 3.仮想通貨取引所(Platform)の構築又は仮想通貨関連取引の仲介役となることを禁止する 4.顧客によるクレジットカード等を介した仮想通貨の購入を禁止する 5.顧客に対して、仮想通貨への投資若しくは取引の勧誘又は仮想通貨に関連する相談業務を行うことを禁止する
また、上記以外に、金融業者は、仮想通貨取引に使用することを目的とした口座の開設に加担することにならないよう、顧客の身元確認及び顧客管理を徹底するように、注意を促しています。また、仮想通貨に関する広告において、金融業者の名前や商標が無断で使用されることで、多大なる損失を被る可能性について指摘しています。
3.現状・今後の動向
ラオス政府とタイの商業銀行との合弁銀行であるJoint Development Bankは、同中銀通達が出された翌日に、別途、仮想通貨に関する取引は一切行わないことを公表しています。また、2019年7月22日付で中銀より「仮想通貨とは何か?仮想通貨の詐欺にあわないために」という解説も出ています。
以上のように、国民が仮想通貨の取引を行うことを明確禁止する規定はなく、注意喚起を促す程度にとどまっているのが現状ですが、今後、ラオス政府がどのような規制をかけるのか、その動向に注目していく必要があります。
以 上