タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について
タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について報告いたします。
タイにおける新システムによるVAT登録及び関連書類提出方法について
2021 年 10月 18 日
One Asia Lawyers タイ事務所
1.はじめに
2021年8月24日のニュースレター[1]でお伝えした通り、2021年2月9日にタイ国外から提供される電子サービスに対する付加価値税(以下、 「VAT」)の徴収を規定した改正歳入法第53号(以下、「法第53号」)が成立し、2021年9月1日に施行されています。改正により歳入局と事業者[2]がオンライン上で納税関連文書のやり取りを含めた各種手続きを行えるようになりました(法第53号3条の16)が、その規則や手順については省令で別途定めることとされていました。
その後8月23日に発出された財務省令第377号(以下、「省令第377号」)により、電子的手段によるVAT登録や書類提出等の各種手続きにおける規則及び手順が明らかになり、さらに電子的手段として、歳入局はVES(VAT for Electronic Service)システム[3]を新たに導入しました。
省令第377号は「第1章:証拠書類[4]の作成、提出、受領、保管」と「第2章:VAT登録」の2部構成となっており、以下の通りそれぞれ解説致します。
2.証拠書類の作成、提出、受領、保管について
事業者はVESシステムにより申請書や書類の作成、提出、及び受領等の手続きを行うことが可能となります。
証拠書類の作成および保存は、少なくとも電子取引法と同等の基準で、①書面が変更されることなくアクセス及び復元が可能であること、②証拠書類を保存する際は信頼できる方法で行うことが求められています。①については、歳入局より、現在はPDFファイルのみ提出可能となっており、将来的にはZIPファイルの提出も可能となるようにシステムを改善中と回答を得ています。また、②については、歳入局では特定の方法を指定していないとの回答を得たため、電子取引法を監督するデジタル経済社会省(MDES)に照会したところ、電子取引法においても信頼できる書類の保存方法については明確な定義や要件は規定されていませんが、パスワード等でアクセス制限を設けておくことを推奨するとの回答を得ています。
VESシステムによる証拠書類の提出後は、当該書類の詳細及び受領日時が記載された認証メッセージが送信され、この受領をもって、証拠書類の提出が完了したものとみなされます。
3.VAT登録について
VES(VAT for Electronic Service)システムは今後、事業者がVAT登録、VAT登録情報の変更、VAT登録の取消し、または、VAT 登録に関連するその他の手続きを行う際にも利用されます。事業者は年間売上高が180万バーツを超えた日から30日以内にVAT登録を行わなければならない(歳入法第81/1条)ため、法第53号の施行開始日時点で既に売上が180万バーツに達している事業者は、早急にVESシステム上でVAT登録を行う必要があります。システム上でVAT登録が承認された場合は、従来のVAT登録証(PorPor20)に代わり、VESシステム上の登録事業者リストに掲載されます。
4.おわりに
10月18日現在、海外企業の登録件数は98件となっており、その内日系企業の登録も数社確認できています。法第53号は既に施行開始されているため、電子サービスをタイ国外からタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業は、早急に対応する必要があるといえます。
[1] https://oneasia.legal/7325
[2] 海外の電子サービスをタイ国内で利用する非VAT登録者(個人消費者など)に提供する企業を指し、電子サービス提供者だけでなく、電子プラットフォーム提供者も含む。
[3] https://eservice.rd.go.th/rd-ves-web/landing
[4] オンライン上でのVATの計算、提出、送金、課税、登録、還付、不服申し立て等に関する召喚状、納税通知書、申請書、報告書等を意味する。
以上
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