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インドネシアにおける企業結合に関する新規則について

2023年06月12日(月)

インドネシアにおける企業結合に関する新規則についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

企業結合に関する新規則(インドネシア)

 

企業結合に関する新規則(インドネシア)

2023年6月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル

1.はじめに

 インドネシアにおいては、事業競争監督委員会/Komisi Pengawas Persaingan Usaha(以下、KPPU)に関連して、ここ数ヶ月で以下の複数の規則が公布施行されており、この結果、企業結合に関する規則に重要な変更が行われています。

(1)独占的慣行および/または不公正なビジネス競争をもたらす可能性のある合併、統合、または株式および/または資産の取得の評価に関するKPPU規則2023年第3号(以下、「KPPU規則3/2023」。2023年3月30日公布・施行)

(2)事業体の合併・統合および株式取得の届出遅延に対する制裁金賦課のガイドラインに関する競争監督委員会規則(2012年第4号)の取消しに関するKPPU規則2023年第5号(2023年3月31日公布・施行)

(3)KPPUに適用される税外国家収入の種類と関税に関する2023年政府規則第20号(以下、「GR 20/2023」。2023年4月5日公布・2023年5月5日施行)

 なお、これらの公布・施行に伴って、以下の規則が廃止されています。

(1)独占的慣行および不公正なビジネス競争をもたらす可能性のある事業体の合併、統合、または会社の株式の取得の評価に関するKPPU規則2019年第3号

(2)事業体の合併または統合の届出遅延に対する罰金賦課のガイドラインに関するKPPU規則2012年第4号

2.本件のハイライト

 上記の結果、企業結合に関する届出に対して適用される規則は、以下の通りとなります。

(1) 届出義務の要件(KPPU 規則3/2023第3条)

 企業結合が以下に該当する場合、当事者はKPPUへ届出を行う必要があります。

 - 結合に関わる全当事者の売上高または資産価値の合計が基準値を満たすこと
 - 当該売上高又は資産価値がインドネシアにおけるものであること
 - 結合の結果、支配権の変更をもたらすものであること
 - 結合が関係会社間のものでないこと

(2) 売上高および資産価値の閾値及びその対象(KPPU 規則3/2023の第6条)

 上述の届出義務要件のうち、売上高、資産価値に関する閾値は以下となります。(いずれかを超えた場合、届出義務が発生)

 - 売上高の合計が5兆ルピーを超える場合 
 - 資産価値の合計が2.5兆ルピーを超える場合

 なおKPPU 規則3/2023によって、上記閾値の数値に変更はないものの、その計算対象となる「資産」が変更となっています。すなわち、従来は全世界の資産が計算対象とされていたものが、今回の規則によりインドネシア国内にある資産に限定されるようになっています。なお、「売上高」の計算対象に変更は有りません(従来通り、インドネシア国内の売上高が対象となります。)

(3) 新しいオンラインシステム

 企業結合の届出は主にEメールにて行われていましたが、KPPU 規則3/2023によって、KPPU の公式ウェブサイト(https://notifikasi.kppu.go.id)を通じたオンライン通知システムにて行われることとなりました。なお、同規則 第 13 条 (3) 及び(4) (c) に規定されているように、提出は営業日のインドネシア西部時間午前9時から午後2時までに限定されています。

(4) 通知書の提出期限

 届出期限に変更はなく、取引の発効日から 30 営業日以内とされています(KPPU 規則3/2023 第2条)。なお、期限を超えた場合、KPPUによる調査の対象となる可能性があります(同規則3/2023 第46条 2 (2))。

(5) 届出手数料

 以前は、企業結合の届出時に手数料は必要とされておりませんでしたが、GR 20/2023に伴って、届出提出時に手数料が必要となりました。届出手数料は、以下の計算式で算出されます。

 0.004×(一定額を基準とした資産価値または販売価値)

(6) 提出書類の確認期間短縮

 KPPU規則3/2023では、企業結合に関する提出書類について不備等がないかをKPPUが確認する期間が短縮されており、従来60営業日とされていたものが3営業日へと変更されています(第16条(3))。なお、当該期間後のKPPUによる審査期間に関する規定(90営業日以内)は維持されています(第18条(2))。

(7)  経過措置

 KPPU規則 3/2023は2023年3月31日から適用され、それ以前に行われた協議、通知、評価には旧規則が適用されます。

3.結論

 今回の企業結合に関する新たな規則の導入により、届出対象が狭まり(資産価値の計算対象がインドネシア国内に限定)、提出書類に関するKPPU側の確認期間が短縮化されるなど、企業活動の利益となる改訂がなされています。その一方で届出に当たって、オンラインシステムの利用が導入され、申請手数料が新たに要求されるなどの届出手続になされた変更について留意が必要となります。