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オーストラリア外資規制アップデート:外国人保有資産に関する新登記制度の導入について

2023年06月13日(火)

オーストラリア外資規制アップデート:外国人保有資産に関する新登記制度の導入についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

オーストラリア外資規制アップデート:外国人保有資産に関する新登記制度の導入

 

オーストラリア外資規制アップデート:外国人保有資産に関する新登記制度の導入

2023年6 月吉日
One Asia Lawyers
オーストラリア・ニュージーランドチーム

1.はじめに

 オーストラリアでは、2023年7月1日より、外国投資家の保有する資産の登記制度(Register of Foreign Ownership of Australian Assets)が導入されます。これは、オーストラリアの外資規制Foreign Acquisitions and Takeovers Act 1975(Cth)(以下「本法令」)の下位規則の改正法であるTreasury Laws Amendment (Measures for Future Instruments) Instrument 2023により新たに導入される登記制度です。

 本稿では、この新たな外国人保有資産登記制度の概要および留意点についてご紹介します。

2.改正後の登記制度

 新登記制度において、Register of Foreign Ownership of Australian Assets(以下「登記簿」)には、住宅用地、商業用地、農地、企業・団体関連権益、鉱業・生産・探査用地など、オーストラリアの資産に対する外国人の所有権に関する詳細が記録されます。登記簿の導入後、本法令において外国人(Foreign Person)とみなされる個人・法人は、そのような資産の所有権について届け出ることが求められます。登記簿は、2023年6月26日から開設予定のオーストラリア税務局(ATO:Australian Taxation Office)の管理するオンライン・サービスにより手続きが可能となります。

 また、同登記簿は、ATOの既存の外国投資登記簿(水、商業用地、農業用地および住宅用地の登記簿)に取って代わることになります。

3.登記義務の概要

 登記簿の導入後、外国人(Foreign Person)は、本法令に規定のいずれかの事象が発生した場合に、ATOに対し登記通知(Register Notice)を提出することが求められます。登記通知の提出が求められる事象には、オーストラリアの土地に対する権利(衡平法上の権利を除く)の取得、外国人(Foreign Person)への譲渡、 土地に対する権利の性質の変更などを含みます。

 なお、本法令における外国人(Foreign Person)の定義は広義に設定されており、非居住者である個人、外国人が20%以上保有する法人、複数の外国人が合計40%を保有する法人等にも適用されます。また、外国人のAssociate(関連者)の定義に該当する者にも適用されます。

 登記通知を行う必要がある場合、事象の発生日(Registrable Event Day)から 30 日以内に登記通知を提出する必要があります。Registrable Event Dayのタイミングは、通知が必要とされる事象によって異なります。例えば、オーストラリアの土地の権利を取得するために通知が必要な場合、Registrable Event Dayは、当該権利を取得した日となります。対象資産の保有者が本法令上の外国人になったために登記通知の提出が必要な場合のRegistrable Event Dayは、当該保有者が外国人になった日です。土地に対する権利の性質の変更の場合のRegistrable Event Dayは、当事者が変更を知った日または知るべきであった日であるとされています。

4.罰則

 登記通知を行う必要があるにもかかわらず、Registrable Event Dayから30日以内に登記通知を行わなかった場合は、250ペナルティユニット(68,750豪ドル)の民事罰が課されます。

5.おわりに

 本新登記制度の開始により、外資規制において外国人とみなされる者がオーストラリアで新たに資産を保有する場合、またはオーストラリアで資産を保有する企業へ投資または買収する場合に、新たな報告・登録要件が課されることになります。オーストラリアへの投資を計画している、または既にオーストラリアに対象資産を保有する日本企業は、従来の外資規制と併せて当該新登記制度の対応について留意する必要があります。