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東南アジア・南アジアにおけるESG/SDGs/人権DD 有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報の開示について

2023年06月14日(水)

東南アジア・南アジアにおけるESG/SDGs/人権DD 有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報の開示についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報の開示について

 

グローバルビジネスと人権:
東南アジア・南アジアにおけるESG/SDGs/人権DD
有価証券報告書等におけるサステナビリティ情報の開示について

2023年6月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター
アジアSDGs/ESGプラクティスグループ

1.はじめに

 「サステナビリティ情報」に関する開示については、2022年6月に公表された金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」に関して制度整備を行うべきとの提言がなされました。当該提言を踏まえ、金融庁は、2023年1月31日、サステナビリティに関する企業の取組みの開示の新設、コーポレートガバナンスに関する開示の充実などを含む、「企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令」(改正開示府令)を公布しました。改正後の規定は、令和5年3月31日以後に終了する事業年度に係る有価証券報告書等から適用されます。

 本ニューズレターでは改正開示府令のうち、サステナビリティ開示を中心に解説いたします。

2.「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正

(1) 概要

 1) 概要

   有価証券報告書等に、「サステナビリティに関する考え方及び取組」欄が新設されました(第一部【企業情報】第2【事業の状況】2)。また、人的資本・多様性やコーポレートガバナンスに関する開示については、拡充が行われました。

 2) 記載事項

  改正開示府令により新設、拡充された記載項目は以下のとおりです。

サステナビリティに関する考え方及び取組(サステナビリティ関係)

項目

内容

留意点

①ガバナンス

サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、及び管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続

・全ての企業が開示することが求められる

②リスク管理

サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、評価し、及び管理するための過程

③戦略

短期、中期及び長期にわたり連結会社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組

・各企業が「ガバナンス」と「リスク管理」の枠組みを通じて重要性を判断して開示することが求められる

・記載しないこととした場合でも、当該判断やその根拠の開示を行うことが期待される

④指標及び目標

サステナビリティ関連のリスク及び機会に関する連結会社の実績を長期的に評価し、管理し、及び監視するために用いられる情報

サステナビリティに関する考え方及び取組(人的資本・人材の多様性)

項目

内容

留意点

①人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針

人材の採用及び維持並びに従業員の安全及び健康に関する方針等

・上記①、②の重要性判断にかかわらず、全ての企業が開示することが求められる

②①の方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績

従業員の状況(女性活躍関係)

項目

内容

留意点

①管理職に占める女性労働者の割合

連結ベースでの開示は求められていないが、努めるべきとされる

・女性活躍推進法及び育児・介護休業法に基づき公表する場合は記載が求められる

・公表義務については、女性活躍推進法等に従う

②男性労働者の育児休業取得率

 

③男女の賃金の差異

全労働者、正規雇用労働者、パート・有期労働者別の賃金格差を記載

コーポレート・ガバナンスの概要

項目

内容

留意点

①取締役会等の活動状況

開催頻度、具体的な検討内容、個々の取締役又は委員の出席状況等

 

②監査の状況

・監査役監査の状況(開催頻度、具体的な検討内容、個々の監査役の出席状況及び常勤の監査役の活動等)

・内部監査の状況等(内部監査の実効性を確保するための取組)

 

出典:「記述情報の開示の好事例集2022」

(2) サステナビリティに関する考え方及び取組の留意点等

 1) 記載上の留意点

 ・企業の中長期的な持続可能性に関する事項について、経営方針・経営戦略等との整合性を意識して説明することとされています

 ・サステナビリティ情報には、国際的な議論を踏まえると、例えば、環境、社会、従業員、人権の尊重、腐敗防止、贈収賄防止、ガバナンス、サイバーセキュリティ、データセキュリティなどに関する事項が含まれ得ると考えられます

 ・開示の重要性の判断においては、「記述情報の開示の重要性は、投資家の投資判断にとって重要か否かにより判断すべきと考えられる」とされており、その重要性は「その事柄が企業価値や業績等に与える影響度を考慮して判断することが望ましい」とされていることが参考になります

 2) 気候変動対応について

   気候変動対応についても、企業において、「ガバナンス」と「リスク管理」の枠組みを通じて、投資家の投資判断の観点から重要性を判断し、開示の要否を決定することになります。その際、国際的に確立された開示の枠組みである気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)又はそれと同等の枠組みに基づく開示をした場合には、適用した開示の枠組みの名称を記載することが考えられます。

   また、金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループ報告において、温室効果ガス(GHG)排出量に関しては、投資家と企業の建設的な対話に資する有効な指標となっている状況に鑑み、各企業の業態や経営環境等を踏まえた重要性の判断を前提としつつ、特に、Scope1(事業者自らによる直接排出)・Scope2(他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の GHG 排出量について、企業において積極的に開示することが期待されるとされています。

3.具体的な開示項目とポイント

(1)検討 

 2023年1月31日、金融庁は、改正開示府令において新たに求められている「サステナビリティ情報」並びに有価証券報告書の主要項目である「経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、「事業等のリスク」及び「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」に関する開示の好事例を取りまとめた「記述情報の開示の好事例集2022」を公表しています[1]

 改正開示府令に従った対応をするには、本事例集が参考になるものと思われます。以下それぞれの項目について、投資家・アナリストが期待・有用と考えるポイントを列挙させていただきます。

 ①「サステナビリティ情報」(環境(気候変動関連等))に関する投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントについて

 1.TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言の4つの枠組み(ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標)に沿った開示は、引き続き有用
 2.TCFD提言に沿った開示を行うにあたり、財務情報とのコネクティビティを意識し、財務的な要素を含めた開示を行うことは有用
 3.リスク・機会に関する開示について、一覧表で、定量的な情報を含めた開示を行うことは有用
 4.トランジションやロードマップといった時間軸を持った開示を行うことは、海外の気候変動に関する開示でも重視されており有用
 5.サステナビリティ情報に関する定量情報について、前提や仮定を含め開示することは有用
 6.実績値を開示することは、引き続き有用

 ②「サステナビリティ情報」(社会(人的資本、多様性等))に関する投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントについて

 1.人的資本可視化指針で示されている2つの類型である、独自性(自社固有の戦略や、ビジネスモデルに沿った取組み・指標・目標を開示しているか)と比較可能性(標準的指標で開示されているか)の観点を適宜使い分け、又は、併せた開示は有用
 2.KPIの目標設定にあたり、なぜその目標設定を行ったのかが、企業理念、文化及び戦略と紐づいて説明されることは有用
 3.マテリアリティをどう考えているのかについて、比較可能性がある形で標準化していくことは有用
 4.グローバル展開をする企業は、サステナビリティ情報の開示において、例えば、人権に関する地政学リスク等、ロケーションについて着目することも有用
 5.独自指標を数値化する場合、定義を明確にし、定量的な値とともに開示することは有用
 6.過去実績を示したうえで、長期時系列での変化を開示することは有用
 7.背景にあるロジックや、前提、仮定の考え方を開示することは有用
 8.人的資本の開示にあたり、経営戦略をはじめとする全体戦略と人材戦略がどう結びついているかを開示することは有用

 ③「経営⽅針、経営環境及び対処すべき課題等」に関する投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントについて

 1.経営方針等の中で、例えば、対象となる顧客のセグメントや、競合との差異・優位性等、顧客と競合に関する具体的な開示をすることは、戦略・ストーリーの説得力が増すため有用
 2.非財務指標の設定について、過去からの変化を、その理由とともに比較できる形で示すことは有用
 3.キャッシュの原資と使途について、優先順位を示しながら開示することは、財務戦略や経営方針等の意図が明らかになるため有用
 4.長期ビジョンからのドリルダウン(全体像⇒定量情報を含めた詳細情報といった流れでの説明)による記載は、分かりやすく有用
 5.非財務情報について、財務情報との関連性を示すことは有用
 6.株主還元という観点から、TSRについて継続的に開示することは有用

 ④「事業等のリスク」に関する投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントについて

 1.リスクを全て見通すことはできないため、見直しを行うことが重要。その際、リスクの見直しを定期的に行うこと、見直しの体制やプロセス、変更されたリスクが分かるような記載及び変更となった理由が示されることは有用
 2.リスク及びその対応策を明確に開示することは、社内において、リスク及びその対応策の認識向上にも資するため有用
 3.投資家の判断に重大な影響を及ぼす可能性という観点から、影響度の大きさに優先順位を付けて開示をすることは有用

 ⑤「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」に関する投資家・アナリストが期待する主な開示のポイントについて

 1.MD&Aは、投資家として非常に重要であり、経営方針等で示されている戦略や施策が当初の想定通りに進んでいるか(想定通りではない場合、その理由)、経営目標を達成できそうか等を確認することに活用
 2.長期経営計画や中期経営計画に対する毎年の進捗状況をMD&A等で開示することは有用
 3.指標等の予想と実績の開示に加え、予想と実績が乖離した場合には、その理由を記載することは有用
 4.指標を変更したことに関し、指標の考え方や、変更理由を具体的に記載することは、対話のための土台となることから有用
 5.ROIC(投下資本利益率)ツリーにより、個々の要素と全体の繋がりを体系的に示すことは有用。更に言えば、ROICツリーにおいて、個々の要素の貢献度の軽重や、定量情報等が記載されると、より有用
 6.企業価値向上に繋がるドライバーについて、重要な部分を示し、それを経営層がどう考えているかの説明は有用

(2)上記個別事項の項目とは別に、全般として、「企業価値の向上にどのような影響を与えるのか」・「サステナビリティ情報の開示について、より分かりやすく、魅力的に伝えることを意識すること」などが個別開示において有用とされています。

4.まとめ

  金融審議会ディスクロージャーワーキンググループは、今後の検討課題、ロードマップとして、我が国では、最終的に全ての有価証券報告書提出企業が必要なサステナビリティ情報を開示することを目標としつつ、今後、円滑な導入の方策を検討していくことが考えられるとしています。

  サステナビリティ基準委員会(Sustainability Standards Board of Japan: SSBJ)は、国際サステナビリティ基準審議会(International Sustainability Standards Board: ISSB)が2023年前半にサステナビリティ開示基準を最終化することを目指していることを踏まえ、日本版のサステナビリティ基準の草案を遅くとも2024年3月31日までに、確定基準を2025年3月31日までに公表することを目標としています。

  同ワーキンググループとしても、この流れを受けて、このような開示基準を法定開示に取り込んでいくことを検討するとしています。

  各企業は、この流れも踏まえ、予め対応を検討していくことが求められます。

以 上

[1] https://www.fsa.go.jp/news/r4/singi/20230131/00.html