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改正消費者契約法の概要について

2023年06月13日(火)

改正消費者契約法の概要についてニュースレターを発行いたしました。 PDF版は以下からご確認ください。

改正消費者契約法の概要

 

改正消費者契約法の概要

2023年6月13日

One Asia Lawyers 東京事務所

弁護士 松宮浩典

「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」[1](令和4年法律第59号)が2022年6月1日に公布、2023年6月1日に施行されました。

本ニューズレターでは、上記法律によって改正された消費者契約法(以下「改正法」といいます)に関して解説いたします。

1.概要

 改正法における主な改正点[2]は、次のとおりになります。

①契約の取消権の追加

②解約料の説明の努力義務

③免責の範囲が不明確な条項の無効

④事業者の努力義務の拡充

上記の改正点についてそれぞれ解説いたします。

2.契約の取消権の追加(改正法第4条3項)

 消費者契約法において、消費者が事業者の一定の行為(困惑を通じて消費者の意思表示に瑕疵をもたらすような不適切な勧誘行為)により困惑し、それにより当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、取消しが認められることとされています。改正前の消費者契約法では、事業者の一定の行為として、以下の8つの類型が定められていました。

①不退去

②退去妨害

③社会生活上の経験が乏しいことを不当に利用して、不安をあおる告知

④社会生活上の経験が乏しいころを不当に利用して、恋愛感情等に乗じた人間関係の濫用

⑤加齢等による判断力の低下の不当な利用

⑥霊感等による知見を用いた告知

⑦契約締結前に契約による義務の全部若しくは一部を実施し、原状回復を著しく困難にすること

⑧契約締結前に契約締結を目指した事業活動を実施し、これにより生じた損失の補償を請求する旨の告知

 改正法では、新たに以下の3つの類型が追加されました。

⑨勧誘することを告げずに、退去困難な場所へ同行し勧誘をすること(改正法第4条3項3号)

⑩威迫する言動を交え、相談の連絡を妨害すること(改正法第4条3項4号)

⑪契約前に目的物の現状を変更し、原状回復を著しく困難にすること(改正法第4条3項9号)

3.解約料の説明の努力義務(改正法第9条2項)

 改正前の消費者保護法では、契約の解除等に伴う違約金等の額及び説明に関する明文規定はありませんでした。事業者から消費者に対し違約金等を請求する際に、違約金等について説明をする必要がないため、高額な違約金等を設定して不当に利益を得る場合がありました。

そこで改正法では、消費者からの求めに応じて、事業者に対して違約金等の算定根拠の概要について説明する努力義務が定められました。

第9条2項

事業者は、消費者に対し、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項に基づき損害賠償又は違約金の支払を請求する場合において、当該消費者から説明を求められたときは、損害賠償の額の予定又は違約金の算定の根拠(第12条の4において「算定根拠」という。)の概要を説明するよう努めなければならない。

4.免責の範囲が不明確な条項の無効(改正法第83項)

 改正前の消費者保護法において、事業者に故意又は重大な過失がある場合における事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項は無効とされていました。しかしながら、事業者に軽過失が認められる限度で契約条項を有効にするために特段の要件は設けられておらず、「関連法令に反しない限り」等の留保文言によって事業者に軽過失が認められる限度で契約条項を有効とすることが可能でした。

 改正法では、損害賠償責任の一部を免除する契約条項は、事業者が軽過失の場合に限り有効であることを明確に記載することが求められ、軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていない条項は無効となります。

 例えば、「関連法令に反しない限り」や「法律上許される限り」といった記載ではなく、「弊社に軽過失がある場合に限り」や「弊社に故意又は重過失がある場合を除き」等と規定することで、軽過失による行為に限り適用されることが明らかにされているため、当該契約条項は無効とならないと考えられます。

第8条3項

事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)又は消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重大な過失によるものを除く。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する消費者契約の条項であって、当該条項において事業者、その代表者又はその使用する者の重大な過失を除く過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないものは、無効とする。

5.事業者の努力義務の拡充(改正法第31項)

 改正により、事業者に対して次のような努力義務が課されることになりました。

まず、事業者が消費者に契約締結の勧誘をする際、個々の消費者の知識及び経験に加え、「年齢、心身の状態」を総合的に考慮した上で、契約の目的となる者の性質に応じて、契約内容についての必要な情報を提供することが努力義務として課されました(改正法第3条1項2号)。

 また、消費者が定型約款の表示請求権(民法第548条の3第1項)を実際に行使できるようにするため、事業者の努力義務として定型約款の表示請求権についての必要な情報を提供することが規定されました(改正法第3条1項3号)。

 さらに、消費者が解除権の行使に関する情報の提供を求めたときは、解除権の行使に関して必要な情報を提供する努力義務が定められました(改正法第3条1項3号)。

第3条1項

事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。

1 消費者契約の条項を定めるに当たっては、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容が、その解釈について疑義が生じない明確なもので、かつ、消費者にとって平易なものになるよう配慮すること。

2 消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者の理解を深めるために、物品、権利、役務その他の消費者契約の目的となるものの性質に応じ、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で、消費者の権利義務その他の消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること。

3 民法(明治29年法律第89号)第548条の2第1項に規定する定型取引合意に該当する消費者契約の締結について勧誘をするに際しては、消費者が同項に規定する定型約款の内容を容易に知り得る状態に置く措置を講じているときを除き、消費者が同法第548条の3第1項に規定する請求を行うために必要な情報を提供すること。

4 消費者の求めに応じて、消費者契約により定められた当該消費者が有する解除権の行使に関して必要な情報を提供すること。

 

[1] 消費者庁「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」新旧対象条文

[2] 消費者庁「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律」概要

以上