速報:ラオスにおける外貨使用(外国人労働者の給与支払)について
速報:ラオスにおける外貨使用(外国人労働者の給与支払)についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
→外貨使用について
速報:ラオスにおける外貨使用(外国人労働者の給与支払)について
2023年7月20日
One Asia Lawyers Group ラオス事務所
1.背景
2022年10月1日より「改正外国為替管理法(以下、「外為法」)」が施行されており(詳細は2022年12月16日付のニュースレターをご参照ください)、ラオス国内における外貨の使用についてラオス中央銀行(以下、「中銀」)が主導となって規制の厳格化が進んでいます。今回、ラオス政府は、特に、外貨の保有と使用、商品及び/又はサービスの輸出入における資金の流れの監視、労働者の所得、外国からの直接投資、海外口座預金に関する報告及び両替サービスに関して厳格に実施することを目的として、2023年7月14日付で「外貨管理の実施に関する首相命令(No10)(以下、「首相命令」)」を発行しています。今回は、外貨の保有と使用及び労働者の所得に関する規定を中心に解説いたします。
2.外貨の保有と使用
(1)外貨の保有について
ラオスに居住する国内外の個人、法人、設立団体は、原則としてラオスの商業銀行へ外貨を預ける必要があります。個人及び法人は現金で外貨を保有することはできますが、中銀が定期的に定める上限額の範囲内での保有が前提となっています。上限額以上の現金を保有、かつ、その資金源が不明である場合、その現金は違法な資金とみなすと規定しています(第1条)。なお、中銀が定める上限額は、2023年7月末時点では確認できていない状態ですので、現時点では執行事例などは存在しないと認識しております。
(2) 外貨の使用について
中銀、財務省、商工業省、天然資源環境省、公共事業運輸省、教育スポーツ省、保健省、情報文化観光省及び労働省に対して、キープでの価格決定、表示、広告、キープでの取引(例えば、車両売買、高級品販売、コンサルタント料、商品代、薬代、治療代、旅行代、土地使用権の売買代、建設代、公共交通機関の運賃、授業料、スポーツ施設使用料、宿泊代、飲食代、ラオス人の賃金、給与など)が厳格に実行されているか、監督する権限があります(第2条)。また、ラオス国民、ラオスに居住する国内外の事業者に対しては、ラオス国内において、キープ決済を厳格に実施するように通達しています。
3. 外国人労働者の給与について
これまで外為法は、外国人労働者も含めて、ラオス国内で生じる労働者の賃金・給与も原則、キープで支払うことが規定されていました。今回の首相命令による改正では、労働者の賃金・給与は、キープ払いを原則とした上で、外国人労働者又は外国人専門家の雇用を必要とする事業者に関して外国人労働者に対するラオス国内での賃金・給与については、外貨で設定し、外貨で支払うことが可能と明示されています。外国人労働者の給与の支払い通貨に関しては、ラオス国内において数多くの議論がありましたが、キープ払いが厳格化される傾向にある中において、今回、外国人の給与所得については、例外的に外貨での支払いが可能であることが明記された点は、外国人投資家や労働者にとって望ましい措置だといえます。
4.その他
その他重要だと思われる改正は次の通りです。首相命令では、外国人投資家に対して、銀行口座の開設義務、資本金の振込や外貨収入の両替等について、新しい規制を追加しているので、留意が必要です。
(1)外国人投資家に対して
①投資許可証又は企業登録書を取得後に、ラオスの商業銀行へ預金口座を開設すること(第5.5条(1))。
②投資資金は、登録資本金も含めて、法律で定められた期限内にラオスへ全額送金すること。併せて、中銀に対して資本金輸入証明書の発行申請を行い(詳細は、ラオスにおける海外からの資金輸入証明書の取得については、2023年6月22日付のニューレターをご参照ください)、取得後は、投資許可証発行元又は事業許可証発行元に対して、取得したことを通知すること(第5.5条(2))。
(2)外貨で収入を得た場合
①外貨を両替するときは、ラオスの商業銀行の両替所(本店、支店、出張所又は承認された電子システム経由)以外での両替は認められません。
②許可されていない方法で両替した場合、行政罰又は法的措置が取られる可能性があります。
以 上
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