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ラオスにおける保税地域について

2023年07月20日(木)

ラオスにおける保税地域についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
保税地域について

ラオスにおける保税地域について

 

2023年7月20日
One Asia Lawyers Group ラオス事務所

1.背景

ラオスにおける保全地域については、2005年発行の「関税法」で定義づけされていますが、詳細は別途財務省が規定するとありました。その後、2009年に財務省より「2005年の関税法の実施に関するガイドライン」が発行され、その中で、より詳細に記載されました。その後、2011年に関税法が改正されましたが、免税店の規定が少しあるのみで、保税地域に関する記載は削除されています。現行の関税法は、2020年に改正されましたが、保税地域に関する詳細は、財務省が別途規定するとあり、今回、2023年6月1日付で「保税地域及び免税店に関する首相令(No212)(以下、首相令)」が発行されました。2023年7月28日より、施行される予定です。

免税店に関する内容は、2023年7月15日発行のニュースレターをご参照ください。

2.保税地域とは

首相令第2条によると、保税地域とは、国内外の市場への商品供給や貿易サービス提供のために、製造、加工、組立、集積、仕分け、包装、充填、蔵置、配送及びトランジットサービス(Customs Transit Service)への投資を受け入れることを目的として、政府が定めた地域又はある特定の場所を指すと定義されてます。保全地域内の原材料を含めた商品や物は、法律で定める一定の期間において、関税や納税の義務が保留されます。

3. ラオス国内の保税地域

財務省及び計画投資省が主導で、下記の10カ所を保税対象地域として定めるべく、調査を行い、調査結果に応じて、対象地域を増設したり、効果が得られないと判断される地域は対象外とするなど定期的に見直しを図る方針です。各保税対象地域は、その対象地域の周辺30km範囲以内と定めています(第8条)。

(1)ラオスとタイの間に架かる友好橋4カ所(首都ヴィエンチャン、サワンナケート県、カムムアン県、ボーケオ県)

(2)ルアンナムター県ボーテン・中国国境

(3)ルアンパバーン県国際空港

(4)ボーリカムサイ県ナムパーオ・ベトナム国境

(5)サワンナケート県デーンサワン・ベトナム国境

(6)チャムパサック県ワンタオ・タイ国境

(7)チャムパサック県ノーンノックキアン・カンボジア国境

 4.保税地域開発事業について

保税地域を開発する事業者(以下、開発事業者)は、ラオス政府100%投資、ラオス政府と国内外の民間企業の合弁投資、民間企業100%の投資のいずれかの形態となります(第10条)。開発事業者は、必要書類を揃えて、計画投資省のワンストプサービスから投資許可を得る必要があります。必要書類には、FS(フィージビリティスタディ)や合弁会社の場合は、合弁契約書の提出が求めれます。

(1)開発事業者の主な条件(第12条)

①法人であること

②登録資本金は、500億キープ(約3億6000万円[1])であること

③外資企業の場合、株式保有率が49%を超えていないこと

(2)開発許可取得手続き(第14条)

下記手続きは、投資奨励法に基づき進められます。

①投資計画省が主導で、政府とのMOU、実施可能性調査を検討

②MOU締結後12カ月以内に、開発事業者はFSを実施する

③開発事業者は、環境影響評価を行い、天然資源環境省へ提出する

④計画投資省は、FSの精査、承認を行い、コンセッション契約の締結を政府へ要請する

⑤開発事業者は、会社を設立し、事業許可証を取得する

 5.開発事業者の権利と責務

開発事業者は、関連する法令に従い恩典が受けられたり、権利が保護されると記載されているのみで、具体的な内容は規定されていません。その他、例えば、保税地域への投資事業を選出し、その事業者と事業契約を締結する権利、保税地域に建設した建物、建造物、重機、その他、固定資産に対して所有者となる権利が与えられてます。また、保税地域への投資事業者となることも可能ですが、開発事業者とは別の法人を設立する必要があります(第15条)。

責務としては、ラオス人労働者のスキルアップのために、特に女性や少数民族を優先して雇用することが規定されています(第16条)。

 6.保税地域への投資事業について

保税地域への投資事業としては、以下の事業があります。

(1)製造、加工又は組立

(2)集積、仕分け、包装、充填、蔵置、商品の配送及びトランジットサービスなどの商業・サービス業

(3)その他の事業

7.保税地域への投資事業者(以下、投資事業者)について

(1)保税地域への投資活動許可証の取得について

投資事業者は、商工省/局において企業登録書(Enterprise Registration Certificate)を取得し、関連する事業分野の事業許可証(Business Operation Certificate)を関連省庁から取得した後、投資活動許可証(Investment Activities Certificate)を取得するために必要書類を揃えて、財務省へ提出します。書類には、FS(フィージビリティスタディ)や環境影響評価書、定款、開発事業との事業契約書などが求められます(第19条、第21条)。

財務省は、完全に揃った書類を受領してから30日以内に、投資許可の可否を文書にて通知します(第22条)。許可された投資事業者は、財務省の電子システムに登録されます(第23条)。

投資事業者は、経済特区、ロジスティックスエリア、スマートシティ内への投資も、各管轄の管理機関から許可を取得することで、事業を行うことが可能となっています(第19条)。

(2)投資事業者の主な条件(第20条)

①法人であること

②開発事業者との事業契約を締結していること

③事業許可証を取得していること

④VAT登録事業者であること

⑤外資企業の場合、株式保有率が49%を超えていないこと

8.保証契約及び発行保証金(前払い式支払い)

投資事業者は、商業銀行又はその他の金融機関から保証状を発行してもらう形式で、関税当局と保証契約を締結し、前払金を準備する必要があります。前払金の額は、下記の表のとおり、事業内容により異なります。

事業内容

手付金額

陸上車両及びスペアパーツの輸入

30億キープ(約2100万円)

車両の部品の輸入(CKD)、贅沢品又は酒類、たばこ、香水、化粧品、宝飾品の輸入

10億キープ(約720万円)

Authorized Economic Operator制度により承認を受けた業者

法人発行の保証状により代替可能

投資事業者が、法律や関税に関する規則に違反した場合、15日以内に関税の支払いやその他の義務を果たすように通知し、期限内に従わなかった場合、関税当局は、前払金を預金している商業銀行や金融機関に対して、請求する金額を期日以内に政府の予算の口座へ送金するように通知を発出します。

[1] 15,000キープ=約110円(2023年7月末)

 

                                          以 上

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yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)