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マレーシアにおける会社取締役および会社秘書のための新しい倫理規定

2023年11月14日(火)

マレーシアにおける会社取締役および会社秘書のための新しい倫理規定に関するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

会社取締役および会社秘書のための新しい倫理規定

 

会社取締役および会社秘書のための新しい倫理規定

2023年11月
One Asia Lawyers Group

橋本 有輝
弁護士(日本)
シャリル・ラムリ
弁護士(マレーシア)

1. はじめに

2023年9月11日、マレーシア会社委員会(以下「CCM」)は、会社取締役および会社秘書役に関する新しい倫理規程(”Code of Ethics”、以下「倫理規程」)を発表し、2024年1月1日より施行される。倫理規程は、マレーシアにおけるコーポレート・ガバナンス慣行を強化することを目的としており、会社が法令を遵守して運営されることを保証する上で、会社における最も重要な役職である取締役と秘書役の職務と責任に焦点を当てている。

本規程は、取締役と秘書役が期待される倫理的事項に関する一般的なガイドラインを提供し、その役割に応じて従うべき基準を定め、特にコーポレート・ガバナンス、透明性、誠実性、説明責任、持続可能性など、この領域で最近問題となっている事項に関する対策や措置を提案している。

この倫理規程は、あくまでガイドラインであり、法令ではないので、同ガイドラインに違反することが直ちに罰則等につながるものではないが、他方で同規程は、会社法その他の法令に定められた各種義務を具体化したものでもあるため(倫理規定前文)、その違反が会社法等の違反につながる可能性には留意する必要がある。

2. 定義

倫理規程における取締役とは、名称の如何を問わず、会社の取締役の地位を占める者を意味する。また、これには、取締役には登記されていないが、会社の取締役の過半数がその指示や命令に従って行動することが慣行となっている者や、補欠取締役・代理取締役(”alternate or substitute director”)も含まれる。

保証有限責任会社(”company limited by guarantee”)では、役員に”governors”、”trustees”、”chief executive officer”、”managing director”などさまざまな名称が与えられているが、これらの人物が会社の経営に責任を負う役職に就任している場合、これらの人物は会社の取締役とみなされる。

3. 倫理規程の主な事項

  1. コーポレート・ガバナンス – 取締役は常に会社の業務に精通し、会社が関連法規や契約要件を遵守していることを認識していなければならない。一方、会社秘書役は、会社またはその取締役もしくは従業員によって不正が行われている、あるいは行われる可能性があると誠実かつ合理的に考えられる情報を、取締役会または適切な当局の者に開示しなければならない。
  2. 汚職防止 – 取締役は、会社がマレーシア汚職防止委員会法(MACA)2009 の第 17A 項の要件に沿った適切な手続きを確立していることを確認しなければならない。この手続きには、汚職防止規程を整備すること、汚職リスク評価を定期的に実施すること、会社の汚職防止姿勢の理解を促進するために従業員や業務関係者に適切な研修を提供することが含まれる。
  3. 利害関係者との関係 – 取締役は、継続的な研修、意識向上プログラム、強固なコミュニケーションを通じて、優れたコーポレート・ガバナンスの実践の価値を従業員が十分に理解することを確保すべきである。
  4. サステナビリティの実践 – 取締役は、意思決定(戦略立案、リスク管理、投資決定を含む)のあらゆる側面にサステナビリティへの配慮を統合し、会社がサステナビリティ戦略、目標、ターゲットを設定し、それが会社全体の戦略やビジョンと整合していることを確認することなどにより、会社の環境、社会、ガバナンス(「ESG」)に対して説明責任を負わなければならない。また、取締役は、収益性の追求を促進するために、社会的、経済的、環境的条件における持続可能性の達成に向けた会社の適切な方針とイニシアティブを採用しなければならない。
  5. 反マネーロンダリングおよびテロ資金供与対策(AML/CFT – 取締役および会社秘書役は、会社が反マネーロンダリング、反テロ資金供与および非合法活動の収益に関する法律2001(AMLA)およびガイドラインの下で規定された原則と一致する方針および手続きを採用し、会社の業務が高い倫理基準に準拠して行われるようにしなければならない。なお、貸金業者やリース事業者等には、AMLAに基づくマネロン対策(CDDや定期的なリスク評価)が義務付けられている点に注意が必要である。
  6. プロフェッショナリズム – 会社秘書は、会社を管理する関連法規、規制、手続き、規則、ガイドラインの遵守を確保するために必要な措置を講じ、関連するすべての報告およびその他の規制要件を認識していなければならない。

4.結論

倫理規程の改訂を受け、取締役と会社秘書役は、規程に規定された要件を理解することが非常に重要である。行動規範を見直し、自社に適用される要求事項を特定し、行動規範の要求事項を遵守し、潜在的な法的責任を軽減するために、社内方針や手続きを策定・実施するなど、積極的な行動を取るべきである。

マレーシアの当事務所のチームは、様々な法規制の遵守やコーポレート・ガバナンスに関するアドバイスに精通しており、お客様の日々の業務や商業上の問題についても積極的にお手伝いしています。私たちのサービスについてもっとお知りになりたい方は、お気軽にお問い合わせください。