ラオスにおける職業紹介法について
ラオスにおける職業紹介法についてのニュースレターを発行しました。
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ラオスにおける職業紹介法について
2023年11月22日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1. 経緯
ラオスにおいて、職業紹介、あっせん等を規定する主な法令は、2010年1月12日付「職業紹介事業にかかる会社設立及び管理に関する労働社会福祉大臣合意(No043)(以下、「労働社会福祉大臣合意」)」、2013年12月24日付「ラオス労働法(No43)」、2015 年 7 月 13 日付「 ラオス国籍者へと保全される事業リストに関する商工大臣令(No.1328)(以下、「保全事業リスト」)」、2019 年 1 月 10 日付「ネガティブ事業及びコンセッション事業リストの承認に関する首相令(No03)(以下、「ネガティブリスト事業リスト」)」があります。
これらは、すべて有効とされていますが、特に外資規制については、各規定が矛盾した状況が続いています。例えば、労働社会福祉大臣合意の中で、会社設立の条件として「ラオス国籍又は外国人はラオス人と共同出資であること(同合意11条)」が規定されています。他方、同事業は、保全事業リストにも記載されており、外国人の参入は不可の事業に分類されています。さらに、2019年に改正されたネガティブリスト事業リストとして、新たに職業紹介業が規定されたことにより、ラオス国内の投資家との合弁会社という条件付き(労働社会福祉大臣合意が参照されている)で、外国人の事業への参入が認められるようになったと解釈されます。
今回、ラオス政府は、2023年7月17日付で「職業紹介法」を制定、2023年9月9日より施行されています。職業紹介法は、全部で66条から成り、国内・国外への職業紹介、職業紹介組織、失業認定証の発行、労働市場の情報、職業紹介事業、職業紹介事業組合や禁止事項等で構成されています。
本稿では、職業紹介事業について簡単に解説いたします。
2. 職業紹介事業について
職業紹介業は、労働社会福祉省(以下「労働省」)の管轄下にあります。会社法に従って会社を設立し、企業登録書(Enterprise Registration Certificate)を取得した後に、投資奨励法に従い投資許可証(Investment License)を取得し、その後で労働省より職業紹介業に関する事業許可証(Business Operation Certificate)を取得する手続きの流れとなっています(第38条)。具体的な手続きの流れは、別途規定するとあります。
職業紹介業は、①国内への職業紹介業、②国外への職業紹介業、③その他職業紹介に関連する事業に大別されます(第39条)。
職業紹介事業者の条件は以下の通りです(第40条)。
(1) 企業登録書及び投資許可証を取得していること
(2) 規定に従い資金が十分にあること
(3) フィージビリティスタディ(FS)及び事業計画書があること
(4) 事務所又は建物、機器、工具、車両等を保有していること
(5) 技能開発施設を有する、又は技能開発施設との協力協定を結んでいる
(6) 職業紹介に関する知識、技術、経験を有する人材がいること
(7) 事業者の活動履歴書があること
(8) その他、業種ごとの条件
職業紹介事業を行う法人は、職業紹介の事業許可書を取得するために、下記の書類を揃えて、労働省へ提出します。労働省は、完全に揃った申請書類一式を受領後、30日以内に事業許可書の発行の可否を検討して、文書にて事業者に対して通知します(第42条)。事業許可書は3年間有効であり、更新可能となっています(第43条)。
申請に必要な書類は、以下の通りです(第41条)。
(1)職業紹介事業申請書
(2)企業登録書及び投資許可書の写し
(3)FS及び事業計画書
(4)職業紹介会社の国内労働者の使用に関する会社規定
(5)その他必要な書類
3.登録資本金について
同法には、登録資本金についての規定はありませんが、ネガティブリスト事業リストには、労働社会福祉大臣合意に準ずると記載があります。同合意第16条に以下の通り規定されています。なお。保証金は、労働省の銀行口座へ振り込む必要があります。
業種 |
資本金/回転資金 |
保証金 |
国内職業紹介業 |
2憶キープ以上 (約9,600USD) |
2,000USD以上
|
国外職業紹介業 |
20憶キープ (約96,000USD) |
20,000USD以上
|
※1USD=約20,500キープ(2023年11月22日現在)
4.外資規制について
同法には、外資規制についての規定はありませんが、ネガティブリスト事業リストには、労働社会福祉大臣合意に準ずると記載があります。同合意第11条によると、職業紹介事業は「ラオス国籍の個人、法人及び外国人の場合は、ラオス人との合弁会社」である必要があると規定されています。外資比率などは特段規定されていませんので、自由に設定可能と解釈されます。
以上
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