ラオスにおける知的財産登録代行について
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→知的財産登録代行
ラオスにおける知的財産登録代行について
2025年1月8日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
2023年11月に知的財産法が改正されていますが、その中で、商標登録などの知的財産権の登録の代行が行える者については、「ラオスの法律に基づいた代理人」と記載されているのみであり、具体的にどのような資格が必要であるのか明記されておりません。日本であれば、弁理士又は弁護士資格を持つ者のみ代行できると法律で定められていますが、知的財産権登録における代理人について規定する法律は、ラオスには存在していません。従って、実務は、ラオスに居住する個人や法人が、知的財産所有者から委任を受けて、登録を代行している状況にあります。
今回、商工業省は、代行資格について定めた「知的財産登録代行サービスに関する合意(No2482)(以下「合意」)」を2024年12月9日付で発行し、官報掲載日の12月16日から45日後に施行されます。これにより、商標登録に際しては、現地の資格のある法律事務所又はコンサルティング業に必ず業務を依頼する必要があることになりました。
2.知的財産権の登録代行資格について
知的財産権の登録代行サービス(以下、「知財登録代行業」)の許可を取得するための要件は以下のとおりです(合意第5条)。
(1)法律業務又はコンサルティング業(全般)の事業許可証を取得していること
(2)知的財産局が実施する知的財産に関する講習を受講したことのある者が2人以上いること
(3)少なくとも2年以上の知的財産権の登録業務に従事する実務経験者が2名以上いる場合、その実務経験者は、上記(2)で記載する講習を受ける必要はない。
3.知財登録代行業許可証について
知財登録代行業の許可を取得するためには、以下の書類を揃えて、商工業省知的財産局(以下、「知財局」)へ提出する必要があります。完全に揃った書類を提出後、5日以内に、知財局は知財登録代行業許可証を発行します(合意第7条)。許可証は、2年間有効であり、満期になる60日前に更新申請をする必要があります(合意第8条)。
<申請に必要な書類>
(1)知財局所定の申請書
(2)企業登録書(Enterprise Registration Certificate)の写し
(3)法律業又はコンサルティング業の事業許可証(Business Operation License)の写し
(4)知的財産権に関する受講証明書の写し
4.知財登録代行業者の禁止事項
知財登録代行事業者に対する禁止事項は以下のとおりです(合意第12条)。
(1)法令に違反するような事業を行うこと及び知財局から許可を取得せずに業務を行うこと
(2)知財登録代行業許可証を他人へ使用させたり、賃貸したり、譲渡すること
(3)有効期限が切れた知財登録代行業許可証を使用すること
(4)サービス利用者が提供した内容と異なる文書、情報、証拠、釈明、主張を意図的に改ざんしたり提供すること
(5)サービス利用者と紛争を抱えている当事者の弁護人となること
(6)他の事業者に対して誹謗中傷や損害を与える広告、又は不当なマーケティング行為をすること
(7)許可なしにサービス利用者の情報を公開すること
(8)ラオスの知的財産分野に従事する管理職員を自身の会社のスタッフとして雇用すること
(9)その他法令に反する行為
5.知財登録代行事業者に対する罰則規定
合意に違反した知財登録代行事業者に対して、以下の通り罰金が科せられます(合意第17条)。なお、2回違反した場合は、罰金額が2倍となり、3回目は、罰金額が5倍となり、知財登録代行業許可証がはく奪されます(合意第18条)。
(1)知財局から許可を取得せずに外国籍の知的財産所有者に対してサービスを提供した場合、1回につき30,000,000キープ(約21万円)の罰金を科すとともに、警告、教育、記録
(2)知財登録代行業許可証を他人へ使用させたり、賃貸したり、譲渡した場合、1回につき50,000,000キープ(約36万円)の罰金を科すとともに、警告、教育、記録
(3)有効期限が切れた知財登録代行業許可証を使用した場合1回につき1,800,000キープ(1万3千円)罰金を科すとともに、警告、教育、記録
(4)サービス利用者が提供した内容と異なる文書、情報、証拠、釈明、主張を意図的に改ざん
したり、他の事業者や知財局に対して誹謗中傷や損害を与える広告、又は不当なマーケティング行為をした場合、刑法典[1]第205条、第206条及び第374条及びその他関連する法令の適用
(5)許可なしにサービス利用者の情報を公開した場合、実際に生じた損害額を罰金として科すとともに、警告、教育、記録
[1] <刑法典第205条>
名誉毀損及び誹謗 書面、口頭、その他方法により他者の名誉を著しく損なわせる者に対し、3か月から1年の自由剥奪刑又は自由の剥奪のない再教育及び100万から500万キープの罰金が科されるものとする。 書面、口頭、その他方法による他者への虚偽の誹謗の結果、その名誉を著しく損なわせる者に対し、3か月から1年の自由剥奪刑又は自由の剥奪のない再教育及び100万から 500万キープの罰金が科されるものとする
<刑法典第206条>
他人に対する恥辱 他人の名誉を侵害し、恥辱する者に対し、批評又は自由剥奪しない再教育又は3か月 から1年の自由剥奪刑及び100万から 500万キープの罰金が科せられるものとする。
<刑法典第374条>
書類の偽造又は偽造書類の使用 文書、署名、若しくは印章を偽造する者、又は文書につき言葉を削除若しくは追加する者に対し、3か月から2年の自由剥奪刑及び100万から 500万キープの罰金が科される ものとする。 偽造文書を知りながら使用する者に対し、3か月から2年の自由剥奪刑及び300万 から1000万キープの罰金が科されるものとする。 文書の偽造又は偽造文書の使用により重大な損害が生じる場合、その犯罪人に対し、 2年から5年の自由剥奪刑及び700万から2000万キープの罰金が科されるものとする
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)