ラオスにおける金銀行(Bullion Bank )について
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ラオスにおける金銀行(Bullion Bank )について
2025年1月14日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所
1.背景
ラオスは、外貨準備高が著しく不足しており、2023年時点で、2-3か月分の輸入支払いにも満たないと言われています。そこで、ラオス政府は、金の取引を専門に行う「金銀行(Lao Bullion Bank)(以下、「LBB」)」を設立し、ラオス経済の安定化、現地通貨キープ安の緩和に着手しました。
2024年8月7日にラオス財務省と現地企業PTLホールディングとの間で合弁契約署名式が行われ、LBBが設立されました。LBBのホームページ によると、ラオスは、金の生産量がアジアの中で第6位にランクされており(World Gold Council as of December 2023)、約500トンから1,000トンの埋蔵量があると推定されています。この潜在市場を活性化させるために、2024年10月にStoneX APAC Pte. Ltd.と戦略的パートナーシップを締結、貴金属取引の知識や技術の強化をはかることで、国際的な基準で金の流通を管理することを目指します。
今回、ラオス中央銀行(以下「中銀」)は、2024年11月29日付で「金銀行の事業に関する合意(No1277)(以下、「合意」)」を発行し、そのサービス内容について規定しています。
2.LBBの事業内容について
LBBは、商業銀行法及び合意に基づき事業を行う必要があります。LBBは、商業銀行法第3条に規定する「一定の金融商品、金融分野、地域及び対象顧客に特化してサービスを提供する特殊銀行」に分類されます(詳細は、商業銀行法の改正に関するニューズレターをご参照ください)。LBBのサービスは以下の通りです(合意第5条)。
(1)金預金
普通預金、定期預金等の開設。利息の有無が区別されます。預けた金の価値は、世界的に使用されているドル建て国際価格で決定されますが、キープに換算した額となります(合意第5条)。現金でも金でも引き出すことが可能です。
(2)金による融資
金や地金を担保として、金又は現金を融資。融資に関しては、2021年6月17日付「商業銀行の信用サービスに関する合意(No296)」及び合意に基づき実施されます(合意第7条)。
(3)金の売買
自動販売機等で金の延べ棒や硬貨の販売(合意第8条)。
(4)預金
BLLと金の売買のためだけに使用する現金(キープ)の普通預金口座の開設。但し、ラオスに居住していない顧客に対しては、外国通貨で口座を開設することが可能です(合意第9条)。
(5)金の輸出入
貿易取引の決済を金で行うためのサービス(合意第10条)。
(6)金の純度証明
金の品位を検査し、下記の内容を含めた証明証を発行。金の品位とは、金にどの程度、金 が含まれているか純度検査をして認定します(合意第11条)。
①原産地(あれば)、②所有者の名前、③地金を分与した人及び相続した人、④純度、⑤重量、⑥生産年(あれば)
(7)金の精錬
銀行が保有する金の純度を高めるため、銀行内に精錬所を設置。顧客の持ち込んだ金も精 錬することが可能(合意第12条)。
(8)貴金属の保管
金の延べ棒、金硬貨、貴金属製品、ダイヤモンドや有価証券などを預ける貸金庫(合意第13条)。
(9)中銀が許可するその他のサービス
上記のサービスを提供するためには、金銀行事業の事業許可証を取得後1年以内に、ロンドン貴金属市場協会(LBMA)やシンガポール地金市場協会(SBMA)の会員基準を満たし、加盟することが義務付けられています(合意第14条)。
以上
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)