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マレーシアにおける企業統治法改正概要

2017年07月06日(木)

 マレーシアにおける企業統治法の改正について解説致します。

マレーシアにおける企業統治法改正概要

 

マレーシアにおける企業統治法改正概要

2018年7月6日

One Asia Lawyers マレーシア事務所
Lim Jo Yan & Co.

1、新規制の概要

 Securities Commission Malaysia (以下「SC」)は 2017 年 4 月 26 日に新しい企業統治法(Malaysian Code on Corporate Governance (以下「MCCG」))を発表しました。このMCGGは2012年版の旧法を改正するものであり、マレーシアにおける企業統治のあり方を国際的な標準に合わせることを目的としています。なお、以前に実施された意見聴取における草案の大部分が今回のMCGGに採用されています。

 MCGGはマレーシアにおけるすべての上場企業に適用されますが、一定以上の規模を有する会社(株式時価総額20億リンギット以上もしくは、FTSE Bursa MalaysiaにおけるTop100の企業(以下「大会社」))のみに適用される規定も存在します。また、MCGGは、中小企業等の日上場会社に対しては、MCGGの規定を採用することを推奨しています。

 MCGGは制度の採用の要否について、旧法で規定されていた「colpy or explain(遵守又は説明)」という概念を「apply or explain an alternative(適用又は説明をどちらか選択する)」という概念に変更しています。旧法では、特に制度を採用するよう要求されていませんでした。これに対してMCGGでは、会社がMCGGの制度を採用しないのであれば、代替的措置を採用する必要があります。更に、MCGGの制度を採用していない大会社は現在どのような制度を採用しているか、MCGGの制度を採用するまでの計画を開示することが要求されています。このアプローチはComprehend, Apply and Report の頭文字を取って「CARE」と呼ばれ、会社・取締役が制度に対する深い理解を持って企業統治を実施させるものです。 

 会社は、年次報告において、自社で採用したMCGGの制度または会社独自の制度及びその実行までのスケジュールを十分に説明する必要があります。

 上場会社は2017年12月31日付決算における年次報告からMCGGに従った情報の開示を要求されます。

 MCGGは制度を「実効が必要な規制」・「導入を推奨する規制」等に分けています。以下では、主な改正点について説明させていただきます。

2、主な改正点

(1)取締役の独立性強化

・取締役会の構成

 旧法では、議長が独立取締役でない場合は、取締役の過半数は独立取締役でなければならない旨、定めれらていましたが、その他の規制はありませんでした。

 今回の改正でMCGGでは、取締役会の半数以上(大会社では過半数以上)の取締役が独立取締役でなければならない旨定められることになりました。

・取締役の選任方法

 2018年1月以降、大会社において長期間選任されている取締役(12年超)に対する選任について下記2段階の投票過程を設定することが求められています。

 a. 支配株主(議決権の33%超を保有する株主・筆頭株主等の株主)による選任

 b. 非支配株主による選任

・取締役の多様性確保

 大会社の取締役会の30%以上は女性であることが要求されています。主要経営陣にも女性を採用することが推奨されています。

・取締役報酬の開示

 旧法では、取締役報酬に関する方針及び決定方法を年次報告で開示することが要求されていました。MCGGではこの方針及び決定方法を会社のウェブサイトで開示することを要求しています。

 さらに、MCGGは取締役に対し支払われた報酬の名称及び5万リンギット以上の報酬(給与・賞与・手当等その他の支払い)を取得する上位5名の主要経営陣に対する報酬の開示(全ての首脳陣の報酬の開示が推奨されています)を要求しています。

 なお、2016年新会社法では、公開会社・上場会社における取締役の報酬は株主総会決議により承認されなければならない旨規定するのみとなっています。そのため、MCGGにおける取締役報酬の開示は新会社法に加えて更なる開示を要求しているものと言えます。

(4)Audit Committee(監査委員会)の独立性の強化

 監査委員会の議長は取締役会の議長を兼任してはなりません。また、監査委員会は独立取締役のみで構成されることが推奨されています。

(5)Risk Management Committee(リスク管理委員会)の設置

 旧法では、会社は内部規則を作成する等適切なリスク管理を行うよう求めていました。

 MCGGは旧法の規定に加えて取締役会に過半数が独立取締役で構成されたリスク管理委員会を設置し、海外でのリスク管理に関する規則を作成すること等を推奨しています。

(6)株主総会の機能強化

 MCGGは、株主総会の機能を促進するため、下記事項を要求しています。

 a. 定時株主総会招集通知を28日前に発送すること(新会社法では21日前の発送と規定されているため、規制が強化されています。)

 b. 前取締役の株主総会への参加

 c. 電子的方法による遠隔地に居住する株主の参加

3、将来の規制強化

 SCはCorporate Directors 及び Corporate Governance Council (企業統治委員会)設置等による企業統治強化のための 3 年計画を導入し、企業統治のレベルを向上させる予定をしています。また、SC はMCCG の枠組みを通して、中小企業等の企業統治の強化を目指しており、RegTech (technology for regulatory enforcement)を通じた企業監視や、男女共同参画を促進する予定をしています。
 現在、中小企業等の非上場会社は、これらの規制の採用は強制されていませんが、将来の法改正で採用しなければならない可能性があるため注意が必要です。

以 上