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ベトナムにおける改正汚職防止法の概要について

2019年10月31日(木)

ベトナムにおける改正汚職防止法の概要 ~民間企業に要求される対応とは~  について報告いたします。
→改正汚職防止法の概要について

 

ベトナムにおける改正汚職防止法の概要
~民間企業に要求される対応とは~

2019 年 11 月 1 日
One Asia Lawyers タイ事務所
弁護士 小出 将夫

1.はじめに

 ベトナムにおいて、本年、改正汚職防止法(以下「新汚職防止法」といいます。)及び同法に関する政令59/2019/ND-CP号(以下「政令59号」といいます。)が新たに施行されました。

 特に注目すべき改正点は、これまでの汚職防止法における規制の対象は公的機関(とその職員)のみであったところ、新汚職防止法においては民間企業(その一部の職員を含む)も規制の対象に含まれることとなった点です。いわゆる「商業賄賂」、民間企業の社員間における贈収賄についても規定されており、違反した場合、刑事責任を問われる可能性がある点です。

 以下では、新汚職防止法及び政令59号のうち、特に民間企業・職員に関する規制内容の概要をご紹介いたします。

2.新汚職防止法の規制概要

(1)規制の対象となる民間企業等

ア.対象者

 新汚職防止法では、「非公的機関の企業・組織」において一定の「職務・権限を有する者」が規制の対象とされています。

 ここにいう「非公的機関の企業・組織」とは、文言上広く一般の民間企業・組織が含まれると解釈され、「職務・権限を有する者」とは、給料が支払われているかどうかを問わず、契約その他の形式に基づき、特定の任務・公務を行うために任命、選任又は雇用され、そのための権限を与えられている者と定義されており、その一例として、管理職の地位にある者が含まれることが明示されています。

イ.規制の対象となる行為

 規制の対象者は、横領、収賄、私利目的による企業・組織に対する贈賄又は賄賂の仲介を行うことが禁止されています。新汚職防止法には、これらの禁止行為を行うと、違反行為の重大さや性質に応じて、組織内における懲戒処分、行政罰や刑罰の対象となると規定されています。

 なお、民間の対象者における汚職に該当する行為は、公務員における汚職に該当する行為よりも狭い範囲となっています。

※参考 民間企業・組織の対象者の禁止行為と公的機関の対象者の禁止行為比較

公的機関 民間企業・組織

①横領
②収賄
③私利木て刑による企業・組織に対する贈賄又は賄賂の仲介
④資産の不正流用のための権限濫用
⑤任務・義務の遂行上の権限濫用(私利目的)
⑥権限逸脱(私利目的)
⑦他人に影響を及ぼすための権限濫用(私利目的)
⑧偽造(私利目的)
⑨権限濫用による公的資産の不正使用(私利目的)
⑩嫌がらせ(私利目的)
⑪義務の不履行又は不適切履行(私利目的)
⑫法律違反の隠匿のための権限濫用、調査防該当(私利目的)

①同左
②同左
③同左

 

(2)民間企業の責任と義務

ア.新汚職防止法において、民間企業は、腐敗の予防・撲滅目的として、以下を実施することが義務として課せられています。

 ①汚職行為の防止措置の実施
 ②汚職行為を発見した場合に当局へ報告すること及び汚職行為に関して当局の対応に協力すること
 ③汚職行為を発見し次第、当局に対して速やかに情報提供を行うこと

 また、上記の実施とあわせて、民間企業に対しては、汚職行為の防止を目的として行動指針や内部統制システムの構築が求められており、上記義務を順守することができる体制を整える必要があることとされています。さらに、従業員に対する倫理規定についても、これを制定することが推奨されています。

 なお、上記義務の違反について、現時点では当該義務違反に対する罰則等を定める他の法律・政令は制定されておりません。

イ.公開会社・金融機関等

 公開会社・金融機関などの一定の民間企業は、上記に加えて汚職行為に関する組織の代表者の責任に関する社内規則を制定することや、法の定める一定の情報をウェブサイト等で公開するなどの義務が課せられています。これらの義務に違反した場合には、行政罰の対象となるとされていますが、現時点で行政罰に関する法律・政令は制定されておりません。

 また、公開会社等の管理職の地位を有する者は、当該義務違反が生じた場合は社内規則に従い処分されることとされており、当該公開会社等の義務違反の状況について、当局は調査権限を有しており、もし公開会社等が義務違反につき管理職を処分しなかった場合には、当局により公開会社等の名称、住所、違反内容が公表される可能性があります。

3.さいごに

 新汚職防止法も、その主なターゲットはやはり公的機関(公務員)であると考えられますが、民間企業に対する規制についても、今後実務上どのような形で運用されていくか、重要な事例については引き続き弊所にて情報提供させていただければと考えております。

以 上