ラオスにおけるPPP法草案の概要について

2020年07月01日(水)

ラオスのPPP法草案の概要について報告いたします

PPP法草案について

 

ラオスのPPP法草案の概要について

2020 年6月28日

One Asia Lawyersラオス事務所

インフラ輸出プラクティスチーム

  • 背景

アジアにおいては、インフラ整備の充実、加速が課題となっており、そのためには巨大な資本の投下が必要となっています。特に、ラオスは、これまで国の基盤となる各種インフラの整備を国家予算と外国からの資金援助に頼ってきました。2016年から2020年までの第8次国家社会経済開発5か年計画[1]では、強い経済基盤と経済的脆弱性の低減を成果の一つとして掲げており、ハード・ソフト面両方の実現のため、官民連携プロジェクト(Public Private Partnership、以下、「PPP事業」)に期待する声が高まっています。

 

ラオスにおいては、PPP事業は、多様なリスクが伴うにも関わらず、法制度が未整備な状態で実施されており、民間事業者が政府や各省庁と直接交渉し、個別の契約を締結するような流れとなっています。その事業分野としては主に、水力発電、国道開発整備、空港開発整備等があげられますが、投資の形態としては、外国企業が政府と合弁会社をラオス現地に設立し、政府から土地使用権や事業運営権等の権利を取得して実施する形態が主流となっています。

 

例えば、株式会社JALUXと豊田通商株式会社は、ラオス政府と運営事業契約を締結し、1994年から約20年間にわたり、ラオス現地法人「Lao-Japan Airport Terminal Services Co., Ltd.」の運営に携わっています。これは、日本企業が海外において取り組む初の空港ターミナル運営民営化プロジェクトとなっています[2]。同プロジェクトでは、日本企業の持つノウハウにより、空港管理・運営がなされ、ラオス政府に対する円借款により、国際線ターミナルの拡張と国内線ターミナルの新設、駐車場の整備を行い、機能が強化されています。

 

また、PPP発電事業の例としては、2006年から関西電力株式会社がラオス政府から独占開発権を取得して実施しているナムニアップ水力発電プロジェクトがあります。現地法人「ナムニアップ1パワーカンパニー」が2013年にラオス政府と27年間の売電及び事業権契約を締結し、一定期間管理・運営を行って資金を回収した後、公共側に施設を譲渡する方式をとっています[3]

特に、電力発電に関しては、官民連携のモデルケースとして成功している実績があり、ラオス政府としては、その成功体験を、電力分野のみならず、公共施設の維持管理、医療分野、教育分野等においても実現させたいという思惑があります。

 

ラオスにおけるPPPに関する法令としては、2017年4月に施行した改正投資奨励法があります。同法では、PPP事業を投資の一形態として定め、そして、PPPをコンセッション事業の分野の一つとしても位置づけています(2019年1月10日付けネガティブ事業及びコンセッション事業リストの承認に関する首相令(No03))

2016年の施行を目標として、2015年頃からPPP法の草案の作成が始まっています。2020年7月の現時点において、まだ草案は完成しておらず、計画投資省のウェブサイトに掲載されているPPP法の草案は、アジア開発銀行の協力のもと作成されたもので、2019年7月を最後にアップデートされていない状態です。同草案は、全体で80条から構成されており、PPP事業方式、入札手続、PPP契約書の内容や締結手続き等に関する規定も盛り込まれています。同草案の内容を踏まると、いかなる分野も統一ルールの下、プロジェクトを行えることが大きなポイントといえます。

  • コンセッション事業の中のPPP

前提として、投資奨励法(2017年4月施行)では、コンセッション事業を以下のように定義しています。

 

【第 41 条 コンセッション事業 】

コンセッション事業とは、あるビジネスの開発と推進のために、投資家が政府から法律に基づき運営許可を受けた事業である。たとえば土地コンセッション、SEZ・輸出加工工業区 開発、鉱山採掘、電力エネルギー開発、航空業、通信事業などがある。コンセッション事業リストは政府によって規定される。

 

政府は、下記の表のとおり7分野23業種をコンセッション事業と定めています。コンセッション事業上の政府が奨励する分野に該当すれば、土地利用の外資規制や税制の恩典が得られる可能性があります。

 

【コンセッション事業リスト】

No

分野(業種の数)

1

農業・林業(4業種)

 

植林・果樹栽培のための国土のコンセッション(天然ゴムを除く)

 

灌木、食糧、工芸作物、生薬その他の栽培のための国土のリース/コンセッション

 

畜産のための国土のリース/コンセッション など

2

鉱業・採石(3業種)

 

鉱物採掘と加工、原油とガスの調査採掘 など

3

電力エネルギー(2業種)

 

特定の電力生産事業(水力、石炭、風力、太陽光、廃棄物、その他)

 

送電コンセッション など

4

PPP事業(1業種)

5

経済特区開発(1業種)

6

事業のための政府の土地リース又はコンセッション(5業種)

 

インフラ開発、公益事業、建物の建設、サービスのための国土のリースコンセッション(例えば:ショッピングセンター、ホテル、ゲストハウス、レストラン、公園、学校、病院、市場、運輸ステーション など)

 

国家・地方レベルの自然、文化、歴史観光地開発

 

スポーツのための国土コンセッション/リース など

7

国の所有権を利用した様々なサービス事業(7業種)

 

空港の建設と地上サービス、取水、上水の生産、水道の供給

 

輸送事業(ロジスティック、ドライポート など)

 

有線・無線通信事業、衛星通信事業 など

 

  • PPPの定義

投資奨励法、コンセッション事業リスト及び現在草案中のPPP法の中では、PPP事業を「事業価値のある新規建設プロジェクト、インフラ整備、公共サービス関連事業」と定義しているのみで、分野や必要資本額等は限定されていません。一般的には、PPPの中にコンセッションが含まれることが多いですが、ラオスの場合は、上記の通り、コンセッション事業リストの中にPPPが含まれるので、少し特殊な体系といえると考えます。

 

  • PPP事業の形態

一般的に政府主導型及び民間提案型の二つの形態に分けられますが、PPP法草案では、以下の通り定義されています。

 

(1) 政府による直接連携

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、民間セクターと連携してプロジェクト開発のために政府が直接投資する形態を意味しています。

 

また、日系企業のラオス政府との合弁又は国営企業への出資に際して、国営企業と民間企業との相違が問題となります。この点、ラオスにおける国営企業の定義は次の通りです。会社法上の国営企業の定義は、政府が50%以上資金を投資している企業または、他の形態の企業が全会一致で国のものとなった企業を意味すると規定されています(会社法第196条)。

 

国営企業と民間企業との一番の相違は、取締役会の議長が、政府の職員である必要があり、会社に常駐することが義務づけられている点にあります(会社法第199条)。一般的に、財務省の国営企業管理局が会社の重役を選任する役割を担っているといわれています。それ以外は大きな相違はないと理解しておりますが、会社法上は、国営企業の機能に関する詳細が明示されておりません。なお、別途規定する細則が存在していますが、現行の会社法が改正される前の会社法(2005年)を根拠としたものであり、それに取って代わる細則は現時点では、発行されていない状況です。

 

(2) 民間による直接投資

案件ごとに法令の規定に従い、政府または国民議会の承認または県議会の合意のもと、プロジェクトの経済・技術的実施可能性評価調査結果に従い、政府のプロジェクト開発において、民間セクターが投資の全責任を持つかたちで参入し、政府から支援を受ける投資形態を意味します。

 

  • PPPの方式

PPP法草案では、下記の各方式について、次の通り、Design Build Finance Operate (DBFO)、Design Build Operate (DBO)、Build Operate Transfer (BOT)、Build Own Operate Transfer (BOOT)、Build Own Operate (BOO)、Build Transfer Operate (BTO)、Build Lease Transfer (BLT)、Build Transfer (BT)、Operate and Maintenance (O&M)といった方法が明示されています。

 

  • PPPの準備、検討及び入札

同草案によれば、PPPプロジェクトの初期提案書の提出から入札までの流れは以下の通りです。

手続き

責任者

初期提案書の作成・提出

実施政府機関

初期提案書の検討 (20日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

発案書の作成・提出(政府開発計画以外の新規   プロジェクトの場合(先端技術の導入など))

民間セクター

発案書の検討(15日以内)

官民連携推進委員会(計画投資省)

FS及び環境影響評価報告書の作成・提出

実施政府機関または民間セクター

FS及び環境影響評価報告書の検討(90日以内) および承認

官民連携推進委員会(計画投資省)

(国民議会等の承認必要)

FS及び環境影響評価報告書の修正(60日以内)

実施政府機関または民間セクター

入札要項等の書類準備(上記FS等承認後3日以内)

実施政府機関及び官民連携推進委員会

入札管理委員会の選定

財務局、実施政府機関、技術面のシニアアドバイザー、官民連携推進員会から構成

 

  • PPP契約書とその内容

計画投資省は、実施政府機関と協力して、プロジェクトの開発者として選定された民間セクターとPPP契約書の内容について協議することになっています。入札における落札後、30日以内に契約書を完成させる必要があります。

ワンストップサービス室はPPP契約草案とプロジェクトの詳細を民間連携推進委員会へ提案します。草案を修正する必要がある場合は、計画投資省は、同委員会が規定する期間内で、実施政府機関及び民間セクターと協議して、草案を修正及び変更します。

 

また、PPP契約書の基本的な記載事項は次の通りと定められています。なお、PPP法及びその他ラオスの法令に違反しない限り、上記以外で必要な条件を追加で規定することが可能です。

(1)プロジェクトの範囲及び業務内容

(2)契約当事者と事業主体者の責任

(3)各当事者のプロジェクトのリスクに対する責任

(4)民間セクターの関税及び税金の納税義務

(5)土地使用権、プロジェクト実施地へのアクセス及び便宜について

(6)技術、品質、安全面に関する実務規定

(7)建設期間、事業開始日、ビジネス及び維持管理

(8)財政、保証、精算及び契約不履行の場合の罰則規定

(9)契約書の単価の再検討、修正

(10)プロジェクトに問題が起こった時の政府及び民間の立ち入り検査をする権利

(11)契約書の再検討、修正及び変更

(12)技術面を含めたプロジェクトの範囲及び業務内容の条件変更

(13)プロジェクト追跡調査及び報告

(14)予備費に関する計画

(15)紛争解決

(16)契約期間

(17)準拠法

(18)プロジェクト管理

 

  • PPP契約締結のプロセス

同草案によれば、契約締結までの手順は、以下の通りとなっています。

 

  • 県・ヴィエンチャン都の計画投資課は、政府及び地方自治から契約締結の許可を取得します。
  • ワンストップサービス室は、政府及び地方自治体から契約締結の許可を取得後5日以内に、書面にて実施政府機関と民間セクターに対して通知を出します。
  • 民間セクターが通知を受け取った後、15日以内にワンストップサービス室へPPP会社[4]設立の許可申請を行います。
  • 政府の代表である県・ヴィエンチャン都の計画投資課とPPP会社の代表である民間セクターは、契約締結が許可された後、30日以内に署名式を行う必要があります。

 

以上のように、PPP草案においては、今まで不明確であったPPPプロジェクトの実施プロセスについて明示された点について評価できると考えます。今後のPPP草案の修正や施行予定等については未定ではありますが、引き続き状況を注視していく必要があると考えます。

 

                                             以 上

[1] file:///C:/Users/Windows%2010/Downloads/8th_NSEDP_2016-2020.pdf

[2] 豊田通商株式会社HPより引用(https://www.toyotatsusho.com/press/detail/180809_004232.html

[3] 関西電力株式会社HPより引用(https://www.kepco.co.jp/corporate/international/generate/laos.html

[4] PPP事業を実施するためにラオスの法令に則って入札により選定された法人又は法人グループにより設立された会社

 

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