シンガポールにおけるDPホルダーのワークパス取得義務について

2021年03月04日(木)

シンガポールにおけるDPホルダーのワークパス取得義務についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポール:DPホルダーのワークパス取得義務

 

シンガポール:DPホルダーのワークパス取得義務

2021年3月
One Asia Lawyers Group代表
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士
栗田 哲郎 

1 DPホルダーのワークパス取得義務の発表

 2021年5月1日から、ディペンデント・パス(Dependant Pass)でシンガポールに滞在している外国人がシンガポールで働くためには、レターオブコンセント(Letter of Consent)ではなく、ワークパス(Employment PassまたはS Pass)の取得が必要になることが2021年3月3日に発表された。すなわち、以前まではワークパスを取得することなく、Letter of Consentのみで勤務できていたDPホルダーが、個別にワークパス(Employment PassまたはS Pass)を取得しなければならないことになり、これらのワークパスを取得するための、資格、給与などの要件が必要となり、S Passの場合は課税(Levy)が必要となることを意味している。

 ジョセフィン・テオ労働省大臣が、2021年3月3日、同省予算の審議中にこの変更を発表し、この変更の趣旨は「最近のワークパスの動きとの整合性のため」であり、Letter of Consentを介してシンガポールでの就労を希望するDPホルダーは、ワークパス保持者全体の約1%を占めており、ほとんどの者は現行のワークパスの基準を満たしているものの、一般のワークパスの基準を満たしていない者はシンガポールでの就労を停止しなければならないと述べ、シンガポールの雇用の創出を重視するSingapore Coreの政策の一環であると述べており、その詳細については今後政府が適宜発表していくとされている。

 なお、2020 年 6 月時点において、シンガポールには約 110 万人の外国人ワークパス保有者がおり、Letter of Consentで働いているDPホルダーは約 11,000 人いる。

2 現在の制度および適用免除

 現在、Sパス保持者の扶養家族がシンガポールで働くためには、関連するワークパスを申請する必要があったものの、その他のワークパスホルダー(Employment Pass、アントレパス、パーソナライズド・エンプロイメント・パスなどの外国人専門家)の扶養家族のDPホルダーについては[1]、比較的取得が容易であったLetter of Consentを申請することのみで勤務をすることが可能であったが、これが変更されることとなり、特に日本企業の駐在員の帯同家族などの勤務が困難となることを意味し、シンガポールでビジネスを行う日本企業にとっても影響が大きいと考えられる。

 上記の変更は、2021年5月1日から適用されることとなり、既にLetter of Consentで就労している場合はそのLetter of Consentの期限が切れた段階から適用されることになり、現在のLetter of Consentの有効期限が切れた時点でワークパスを申請しなければならない。逆に言うと、現在Letter of Consentで勤務しているDPホルダーはその期限が切れるまでは、このまま(ワークパスを取得することなく)勤務することができるものの、2021年5月1日以降はそのLetter of Consentの更新ができなくなる。

 なお、事業を所有するDPホルダーの場合、上記の変更の免除が認めら、Letter of Consentでの事業を継続することが可能であるが、以下の基準を満たす必要がある。

(1)事業の30%以上の株式を保有する個人事業主、パートナー、または会社の取締役であること、および

 (2)SGD1,400以上の給与で、3ヶ月以上働いている、CPFを収めるローカルもしくはPRを1人以上雇用していること

3 今後の対応策

 2021年5月1日以降、DPホルダーが勤務する場合に申請するワークパスとしては、主にエンプロイメントパスかSパスが選択肢になると思われる。

 しかし、エンプロイメントパスについては、年々その要件が厳しくなっており、比較的高額の給与が必要となっている。また、Sパスについても、2020年にその給与の最低基準が2回引き上げられ[2]、シンガポール政府は2021年予算演説において、Sパスの割当について、製造セクターについて従業員全体のうち20 パーセントから2023 年までに15 パーセントに割当の削減することを発表しているなど、いずれも要件が厳しくなっており、シンガポールでビジネスを行う日本企業は、シンガポールの労働法制、ビザの状況などに注意が必要である。

 

[1] エンプロイメント・パスまたはSパスホルダーが、配偶者または21歳未満の未婚の子供をディペンデント・パスでシンガポールに連れてくるためには、毎月6,000ドル以上の給料を得ている必要がある。

[2] Sパスは、以下の条件を満たす外国人従業員が対象となっている。

– 少なくとも2,500ドルの固定月給を得ていること(給与には実務経験が反映されていることが必要であり、年配で経験豊富な申請者は、資格を得るためにはより高い給与が必要となる)、

– 学位または卒業証書を持っていること、および

– 関連する職務経験があること。