日本におけるコーポレートガバナンス・コードの改訂について

2021年03月23日(火)

日本におけるコーポレートガバナンス・コードの改訂についてニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認ください。

日本におけるコーポレートガバナンス・コードの改訂について

 

日本:コーポレートガバナンス・コードの改訂について

2021年3月23日

One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia
日本法弁護士 江副  哲
同      藤村 啓悟
同      栗田 哲郎

1. はじめに

 2021年にコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」といいます。)の改訂が予定されています( 2018年の改訂時には,2021年3月に改訂案が発表され,同年6月1日に改訂されるというスケジュールでしたが,現時点では,改訂案は発表されていません。)。

コーポレートガバナンスの課題を検討する,金融庁主催の2021年12月8日開催のCGコードフォローアップ会議では,「コロナ後の企業の変革に向けた取締役会の機能発揮及び企業の中核人材の多様性の確保(案)」と題する意見書(以下「意見書」といいます。)につき議論されました。

 意見書は,これまでのフォローアップ会議での議論を取りまとめたものであり,改訂案について言及されていますので,CGコードの改訂案は意見書の内容を参照する形で作成される見通しです。

 今回のCGコード改訂は,東京証券取引所の市場区分再編とも関連しています。そのため,本稿では意見書の内容から,改訂予定の内容を概説するとともに,東証の市場区分再編との関わりも説明します。

2 改訂の背景

 CGコードは2015年に策定され,2018年に改訂が行われています。今回は2度目の改訂で,3年に1度のペースで改訂が行われています。

 改訂はコーポレートガバナンスの課題に対応する形で行われます。前記のフォローアップ会議では,資本コストを意識した経営,取締役会の機能発揮, 中長期的な持続可能性,監査の信頼性の確保,グループガバナンスのあり方,コロナ後の企業の変革などといった課題が挙げられており,これら課題について議論が行われています。意見書は,これらのうち,取締役会の機能発揮,中長期的な持続可能性に関連する事項の改訂につき,提案を行っています。

3. 独立社外取締役の3分の1以上の選任

 意見書では,2022年に予定されている東京証券取引所の市場区分再編後のプライム市場につき,その上場企業に対し,独立社外取締役の3分の1以上の選任を求めるべきであると提案しています。 これは,諸外国のCGコードや上場規則の大半は,3分の1以上ないし過半数の独立社外取締役の選任を求めていることや,独立社外取締役が企業の経営環境の変化を見通し,経営戦略に反映させることを期待してのことです。

 また,諸外国のCGコードや上場規則が過半数の独立社外取締役の選任を求めていることも踏まえ,それぞれの経営環境や事業特性等を勘案して必要と考える企業には,独立社外取締役の過半数の選任を検討するよう促すべきであるとの提案もなされています。

 ただし,これは独立社外取締役を増加させればさせるほど,期待される企業価値の向上及び経営監督機能の強化に資するという前提に立ったものです。現状では,独立社外取締役の数を増加させることのみを目的とすることに否定的な意見もあります。  

 しかし,特に支配会社を有する上場企業については,そのような企業特有の問題に対応するために,過半数の独立社外取締役選任を求めることが積極的に検討されています。支配会社を有する上場会社では,支配会社と少数株主との間に構造的な利益相反リスク(例えば親会社と子会社間の取引の場合など)があるため,取締役会の独立性を高める必要性があるからです。

 2021年1月26日開催のCGコードフォローアップ会議では,会議メンバーから支配会社を有する上場会社では,独立社外取締役を過半数選任とすべきという意見も複数出ている状況です。        今後の会議の議論次第では,支配会社を有する上場会社は,特別に独立社外取締役の過半数の選任を要求される可能性があります。

4. スキルマトリックスの公表

 意見書では,スキルマトリックスの開示を求めることが提案されています。

 スキルマトリックスとは,各取締役が有するスキルを,マトリックス表でまとめたものになります。

 スキルマトリックスを開示することの意義は,株主が取締役会のスキル構成を知ることができることに加え,会社自身が取締役会の構成を検討し,説明することに資する点にあります。

 上記のような意義・目的の達成手段として,各取締役の有するスキルの組み合わせ,いわゆるスキルマトリックスの開示を求めることが検討されています。

5. 企業の中核人材における多様性(ダイバーシティ)の確保

 社会の多様化に対応し,企業の持続的な成長を確保する上では,企業内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な価値観が求められます。このため,企業内の多様性を確保することについても,CGコードの改訂案として提案されています。

 意見書は,企業内の多様性確保を推進するために,女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等,中核人材の登用等における多様性の確保についての考え方と自主的かつ測定可能な目標を示すとともにその状況を公表することを求めるべきとします。

 また,意見書は,多様性の確保を推進するための人材育成体制や社内環境整備を促すために,企業が多様性の確保に向けた人材育成方針・社内環境整備方針をその実施状況と合わせて公表するように求めるべきとしています。 

6. 市場区分再編との関連

 今回のCGコード改訂で,上場企業に大きな影響があるのは,東京証券取引所の市場区分再編にあたっての市場選択手続です。特に,2022年の新市場区分移行後の「プライム市場」では「より高いガバナンス水準」が求められます。

 市場選択手続では,改訂後CGコードの内容を反映したコーポレートガバナンスに関する報告書が提出書類となっています。

 したがって,上場企業においては,新市場区分の市場選択手続にあたり,改定後CGコードへの対応が必要となる可能性がありますので,今後もCGコードフォローアップ会議における議論の動向を注視する必要があります。

 

以上