タイにおける債権回収と倒産対応の実務(第7回)について

2021年03月26日(金)

タイにおける債権回収と倒産の対応の実務(第7回)について報告いたします。

債権回収と倒産対応の実務(第7回)について

 

タイにおける債権回収と倒産対応の実務 第7回

2021年3月26日

One Asia Lawyersタイ事務所

7回 タイのおける刑事手続き(番外編)

第6回までは、タイにおける裁判制度や強制執行について述べてきたが、最近、民事上の問題であったとしても、詐欺で刑事告訴を行うような事案が非常に多くなってきている。特に、外国企業に対しては、タイ国内での刑事告訴を通じて、相手方に圧力をかけて、相手方との和解や示談を成立させようとする動きが多い。刑事事件は、自社と、全く関係ないと考えている社も多いと思われるが、実は身近な存在である点を知って頂きたい。今回は、タイの刑事告訴手続きの概要を共有する。

その他刑事事件の時効、示談可能又は示談不可能な刑事事件の種類、検察ルートと弁護士ルートのメリット、デメリット等、よく聞かれる相談内容があるが、紙面の関係上、今回は一般的な手続きを述べるのみとし、次回からはタイの仲裁制度について詳述する予定である。

1 タイ国における刑事訴訟提起手続きの概略

タイ国内で犯罪が起きた場合、検察官もしくは被害者によって、刑事訴訟手続きが開始される。下図の通り、被害者は、被害届を警察に提出して検察に刑事訴訟を提起してもらうか(以下、「検察ルート」といいます。)、もしくは、弁護士に依頼して直接裁判所に訴訟提起する(以下、「弁護士ルート」といいます。)ことにより、刑事訴訟手続きを開始することが可能となっている(刑事訴訟法(以下法令名省略)第28条、第124条)。なお、弁護士ルートは、日本にはない制度のため、タイ独自の制度といえる。

<タイにおける刑事訴訟の手続き流れの概要>

※流れについては、PDFをご覧ください。 

2 検察ルートについて

まず、被害者が被害届を警察に提出すると、警察は捜査を行い、捜査結果を検察官へ報告する(第142条)。その後、検察官は被疑者を起訴するか否かを決定する。起訴された場合は、刑事訴訟が開始され、不起訴となった場合は、刑事訴訟は開始されず、被疑者は放免される。実務的には、被害届が受理されるまで、たらい回しにあったりすることが多く、受理されるまでに時間と労力を要することが多い。受理されると、警察署は被疑者に予備審問の期日を記載した文書を送達し、被疑者は、所轄の警察署で事情を説明する等の対応を行う必要がある。もし予備審問に対応しない場合は、逮捕令状等が発行される可能性があるため、留意が必要である。

また、起訴不起訴の判断のための十分な証拠がない場合は、検察官は警察に追加調査を命ずることができる(第143条)。検察官が不起訴判断をした場合であっても、被害者は直接裁判所へ訴訟提起する(弁護士ルート)ことは可能となっている(第34条)。検察官が起訴して裁判所へ事件を提起すると、被疑者の呼称が被告人に変わり、裁判所は、証人尋問を予定し(第172条)、刑事訴訟手続きを進めていくことになる(第182条)。

3 弁護士ルートについて

まず、被害者は、弁護士に依頼して刑事訴訟を提起することができ、裁判所は、最初に公判前聴取手続を行う。公判前聴取手続内で、被害者は原告として、被告が犯罪を犯したことについて証拠を示しながら主張する。また、被告はこの手続の中で反論を行うことができる。そして、一定の要件を満たす場合、この手続の中で双方が和解して刑事訴訟提起が取り下げられることもある。裁判所は双方が和解せず、公判手続きを行う必要があると判断した場合は、そのまま公判手続に移行していく。裁判所は、被疑者に対して証人尋問を行い(第172条)、公判手続を進行し判決を言い渡すという流れとなる(第182条)。

以 上

 

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