タイにおける暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容
タイにおける暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容について報告いたします。
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タイにおける暗号資産取引所によるNFT等の取り扱いに関する新たな規制内容
2021年6月15日
One Asia Lawyers
暗号通貨・STOプラクティスチーム/タイ事務所
2021年6月9日、タイ証券取引委員会(SEC)は、既存の「Re: 暗号資産事業を行うための規則、条件、手続き」通達を改正する新たな通達SEC No.Kor Thor.18/2564(以下「第11号通達」)を承認し、同通達は同月11日に施行されています。なお、この通達は施行日以前には遡って適用されません。
今回の改正の主な内容は、同通達で追加された第39/1条(以下「通達1項」)および第39/2条(以下「通達第2項」)です。以下、その内容を解説します。
まず、通達第1項では、以下の性質を持つユーティリティトークン(証券性を有さない暗号資産のうち暗号通貨以外の暗号資産)または暗号通貨(支払手段性を有する暗号資産)の取引については、暗号資産交換事業者はそのサービス提供が禁止されます。
(1) ミームトークン:
一定の目的や実体、裏付けを持たず、ソーシャルメディアの動向によって価格が変動する暗号資産
(2) ファントークン:
インフルエンサーやスポーツチームなどのファン向けに発行される暗号資産
(3) ノンファンジブル・トークン(NFT):
対象物または特定の権利の所有権または権利の付与を宣言するためのデジタルクリエイションとして発行されるトークンで、唯一無二なものであり、同一カテゴリー、同一タイプの暗号資産と同額で交換できないもの
(4) ブロックチェーン取引に利用される暗号資産で、暗号資産交換事業者またはその以下の関係者が発行するもの
- 取締役、執行役員および支配人
- aの配偶者または同居人
- aにより支配されている法人
- SECの通達「グループビジネスの特性の規定」に基づく親会社、子会社、関連会社
次に、通達第2項は、暗号資産交換事業者に対して、暗号資産の発行体がホワイトペーパー等に従わない場合には、当該暗号資産交換事業者は当該暗号資産を暗号資産取引所から上場廃止にすることを規定する上場規則を定めることを要求しています。
また、暗号資産交換事業者は、第11号通達の施行日、つまり6月11日から30日以内に、通達第1項および通達第2項に対応する必要があります。
今回の改正で重要な点は、規制対象はあくまでタイ国内でライセンスを受けている暗号資産交換業者のみが規制対象ということであり、例えば、海外エンティティによるNFTプラットフォーム等は今回の規制では対象に含まれていませんし、個人間のNFT取引も規制されていません。
今回の改正の趣旨は、価格変動が大きく相対的にハイリスクとされるものや、インサイダーのリスクが相対的に高い類型の暗号資産等をタイ国内の暗号資産取引所に上場させないことによって投資家保護を図る点にあると思われますが、価値の源泉の観点から相対的に安全視されているNFTを規制対象にする点は、世界でも稀な例であり、今後の運用に注目が集まっています。
参考:
Notification of SEC No. KorThor. 18/2564 Re: Rules, Conditions and Procedures for Undertaking Digital Asset Businesses (No. 11)
http://www.ratchakitcha.soc.go.th/DATA/PDF/2564/E/126/T_0009.PDF
SEC News : https://www.sec.or.th/EN/Pages/News_Detail.aspx?SECID=8994
以上
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