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改正公益通報者保護法の指針について

2021年09月15日(水)

改正公益通報者保護法の指針についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

改正公益通報者保護法の指針について

 

改正公益通報者保護法の指針について

2021年9月15日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2021年8月20日に消費者庁より「公益通報者保護法第11条第1項及び第2項の規定に基づき事業者がとるべき措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るために必要な指針」(以下「指針」といいます。)が公表されました。

1 背景

 近年、企業の不祥事が後を絶たず、社会問題化しているなか、不祥事をより早期に発見、是正し、被害を防止するため、「公益通報者保護法の一部を改正する法律」(以下「改正法」といいます。)が昨年成立しました。改正法の施行日は本ニューズレター作成日時点で未定ですが、改正法では施行日について「公布の日(2020年5月12日)から起算して2年を超えない範囲内で政令で定める日」と規定されています。

 指針に関連する改正法第11条第1項及び第2項は以下のような内容となっております。

第11条

1 事業者は、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報を受け、並びに当該公益通報に係る通報対象事実の調査をし、及びその是正に必要な措置をとる業務(次条において「公益通報対応業務」という。)に従事する者(次条において「公益通報対応業務従事者」という。)を定めなければならない。

2 事業者は、前項に定めるもののほか、公益通報者の保護を図るとともに、公益通報の内容の活用により国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に係る法令の規定の遵守を図るため、第3条第1号及び第6条第1号に定める公益通報に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置をとらなければならない。

 このように事業者に対して、新たに公益通報対応業務従事者を定める義務及び公益通報に適切に対応する体制を整備する義務を課しています。

2 指針の内容

 改正法では、事業者がとるべき措置に関する具体的な内容は指針に定めるとしており(改正法第11条4項)、今回改正法の施行に向けて指針が公表されました。

 指針の概要は以下のとおりです。

①公益通報対応業務従事者の選定

 (a) 受付、調査及び是正措置を実施する公益通報対応業務従事者の選定

 (b) 従事者を定める方法

  ■従事者であることが従事者となる者自身に明らかとなる方法(書面等)にて指定

 ②公益通報への対応体制

  (a) 公益通報窓口の設置

  ■部門横断的に受け付ける公益通報受付窓口を設置し、調査及び是正に必要な措置をとる部署及び責任者を選定

  ■経営陣からの独立性を確保する仕組みを整備

  (b) 公益通報に対する受付、調査及び是正措置の実施

  ■公益通報の受付及び調査の実施

  ■是正措置及び当該措置が適切に機能しているかを確認する措置の実施

  ■公益通報者に対する是正措置等の通知

 (c) 公益通報対応における利益相反の排除

  ■受付、調査及び是正措置に事案に関係する者を関与させず、利益相反を排除

 (d) 体制を実効的に機能させるための措置

  ■公益通報者保護法及び公益通報対応体制について役職員及び退職者への教育・周知

  ■公益通報対応業務従事者への教育

  ■通報の対応関する記録の作成及び保管

  ■公益通報対応体制の定期的な評価・点検及び改善の実施

  ■公益通報に関する運用実績概要の開示

  ■内部規定の策定及び運用

 ③公益通報者への保護体制

  (a) 不利益な取り扱いの防止

  ■解雇等の不利益な取扱いの防止、不利益な取扱いの有無を把握する措置及び不利益な取扱いからの救済・回復措置の実施

  ■不利益な取扱いを行った者に対する懲戒処分その他の適切な措置の実施

 (b) 秘密漏洩の防止

  ■公益通報者を特定させる事項を必要最低限の範囲を超えて情報共有を行うことを防ぐ措置及び秘密漏洩に関する救済・回復措置の実施

  ■公益通報者の特定を防ぐ措置の実施

  ■秘密漏洩を行った者に対する懲戒処分その他の適切な措置の実施

 

3 まとめ

 改正法では、公益通報対応業務従事者又は公益通報対応業務従事者であった者に対し、公益通報対応業務で知り得た公益通報者を特定させる情報を正当な理由なく漏洩してはならないと守秘義務を課した上で、違反した者には刑事罰を定めました(改正法第12条、第21条)。また、行政機関は、事業者の義務履行に関して報告の要求、助言、指導、勧告のほか、勧告を受けた事業者が従わない場合は、その旨を公表するといった行政処分が可能とされました(改正法第15条、第16条)。さらに行政機関に対して報告をしなかった又は虚偽の報告をした事業者に対する過料処分も定められました(改正法第22条)。

 したがって,違反した場合の刑事罰及び行政処分が定められたこともあり,事業者は、本指針に基づいて内部通報体制の整備及び従業員への教育・周知を十分に行い、また、報告が虚偽とならぬよう十分注意する必要があります。

以上