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マレーシアにおける建設業に対する外資規制について

2022年01月11日(火)

マレーシアにおける建設業に対する外資規制についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

マレーシアにおける建設業に対する外資規制について ~建設業~

 

マレーシアにおける建設業に対する外資規制について
~建設業~

2022年1月
One Asia Lawyers Group
マレーシア担当
日本法弁護士 橋本 有輝 

 本稿では、建設業に関連する企業がマレーシアに進出する際の外資規制の問題について概説する。

1 マレーシアにおける外資規制

 マレーシアは、海外からの投資という観点において、ASEAN諸国の中では、シンガポールには及ばないもののメコン諸国をはじめインドネシア・フィリピン等に比べても自由度の高い国として位置付けられており、例えばサービス業等では100%の外資の出資が認められている。

ところが、建設業においては、依然として以下のような外資規制が残っている。

2 建設業における外資規制の概要

(1)規制の概要

 建設業を所管する機関は、Construction Industry Development Board Malaysia(以下、CIDB)であり、LEMBAGA PEMBANGUNAN INDUSTRI PEMBINAAN MALAYSIA ACT 1994(以下、CIBD法)に基づき、建築関連行為について概ね以下のような規制を課している。

 マレーシアで建設工事を行う全ての法人は、CIBDに登録しなければならない。

 ローカルコントラクター(定義は後述)は、一度登録すれば有効期間中において、認定されたグレードの制限下において建設工事を行うことが可能である。これに対し、外国コントラクター(定義は後述)は、プロジェクト毎にCIDBに登録審査を行う必要がある。

例えば、外国コントラクターが10件のプロジェクトを請け負うことを希望する場合、同社は全てのプロジェクトについて10件の個別の登録証明書を申請する必要がある。

(2)規制対象となる建設工事とは何か

 CIDB法は、「何人も、CIDB法に基づく有効な登録証明書なくして、建設工事(construction work)を行ってはならない。」(同25条(1))と規定する。

 そのうえ、建設工事(construction work)とは、

(a)建物、壁、(b)道路、鉄道、(c)排水、河川、(d)電気、機械、(e)橋、高架道路、ダム等に対して行われる建設、増築、取付、修繕、メンテナンス、更新、除去、改装、変更、解体を行う行為であると定義されている(同2条(1))。

  注意を要する点が2点ある。

 まず、上記定義には、建物を建てるといった典型的な建設工事に留まらず、建物等のメンテナンス行為も含まれているという点であり、その適用範囲には注意が必要である。

 また、上記規制は、あくまで「建設工事を行う者」に対する規制であるため、例えば施主から工事を請け負ったものの、自社では一切実際の建設工事を行わず、全ての工事過程を下請け業者に発注する場合には、登録は要求されない(CIDB職員への複数回にわたる照会で確認した。)。

3 外国コントラクター

(1)外国コントラクターの定義

 CIDBが発行するHandbookでは、外国コントラクター(Foreign Contractor)とは、外国で設立された企業及び外資が保有するマレーシアで設立された企業の株式保有割合が30%を超える企業としている。

 他方で、ローカルコントラクターは、70%以上がマレーシア資本で保有される企業とされている。

(2)外国コントラクターの登録制度概要

1段階(事前登録-PRE REGISTRATION

内容:外国コントラクターは、CIDBに外国コントラクターとしての事前登録する必要がある。申請はオンラインを通じて行い、承認も自動で行われる。

所要期間:1日

要件:最低資本要件としてRM750,000(以下「最低資本金」)

備考:外国コントラクターとしての事前登録は一度きり要求されるものであるため、一度取得すれば完了となる。

2段階(一時登録-TEMPORARY REGISTRATION):入札がある場合のみ

内容:外国コントラクターは、プロジェクトの入札に参加する場合、入札を許可される前に、CIDBから入札期間中の一時登録証明書を取得しなければならない。申請はオンラインで行う。仮登録証明書の有効期間は、入札期間に3ヶ月の評価期間を加えたものとなる。

所要期間:3-5営業日(CIDBの審査期間)

費用:RM550

要件:事前登録の完了、入札案内、最低資本金、1名以上の技術者(後述)がいること、その他建設業の経験を示す書類を補助書類として提出できる。

3段階(本登録-REGISTRATION OF FOREIGN CONTRACTORS

内容:入札に成功した場合又は入札のない案件の場合、外国コントラクターは、建設工事を開始する前にこの本登録を申請しなければならない。申請はオンラインで行う。この証明書の有効期間は、プロジェクト期間に加えて2年間の瑕疵担保責任期間となる。

所要期間:3-5営業日(CIDBの審査期間)

費用:申請時に契約金額の0.125%の賦課金(RM500,000以上のプロジェクトにのみ適用)、申請承認時にRM5,000

要件:発注書、最低資本金、技術者2名(うち1名は建設業で5年以上の経験があること)

   ※技術者要件について

    技術者は、CIDBが建設業に関連するものとしてHandbook等で指定する学部を卒業していなければならない。

備考:この本登録は、(作業毎に契約する類の契約でない限り)プロジェクト期間の冒頭に1回登録すれば足り、この期間が更新される際には、更新の際に再度1回登録すれば足りる。例えば、メンテナンス契約等で、契約期間が1年~複数年にわたる場合、契約開始時に一回登録すれば足りる。

4 Non-Contractor

 以上とは別に、外資企業が、建設工事に関連するものの、実際の工事自体は現場で行わない場合にもCIDBに登録することが可能である。

 これはNon-Contractorと呼ばれる区分であり、上記2(2)で指摘した通り、一切工事を自社で行わない元請け・下請け業者となる場合や、コンサルタントとして建設工事に関与する場合に登録が可能となる。

 ただし、このような登録は、CIDB法上要求されたものではないため、あくまで任意のオプションに過ぎない。上記3の通り、外国コントラクターにおいては、個別のプロジェクト毎にCIDBの審査を受ける必要があるため、その審査をスムーズにするために、CIDBに対して工事実績を示すという目的でなされるものである。

 以上、CIDBの外国コントラクターに対する規制の概要を説明した。実際に現地マレーシアにおいて建設関連工事を行う場合には避けて通れない規制であることから、進出時又はその前に自社のビジネスモデルに基づく調査を行うことが肝要である。