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ニュージーランドにおける公正取引法の改正について

2022年01月12日(水)

ニュージーランドにおける公正取引法の改正についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

ニュージーランドにおける公正取引法の改正

 

ニュージーランドにおける公正取引法の改正

2022年1月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター(日本語版)

 ニュージーランドでは2021年8月に、2021年公正取引改正法(「Fair Trading Amendment Act 2021」、以下「改正法」)が成立しました。この新しい法律は、1986年公正取引法(「Fair Trading Act 1986」、以下「公正取引法」)を改正し、消費者や中小企業の脆弱性を悪用する圧力戦術、欺瞞、一方的な契約条件の使用および慣行をターゲットに、非良心的取引に対するさらなる保護を提供するものです。改正法により導入された一部の規定は既に2021年8月17日に施行されていますが、最も重要な変更点は2022年8月16日に施行される予定です。

非良心的行為の禁止(第7条・第8条)

 改正法は、取引における非良心的行為の禁止を導入しています。「非良心的行為」(unconscionable conduct)の定義は記載されていませんが、改正法は、その行為が非良心的かどうかを評価する際に裁判所が考慮する要因の非網羅的リストを提供しています[1]。これらの要素は、交渉力の差、影響を受ける人(すなわち、その行為により不利益を被る、または被る可能性がある人)は取引者が提供する文書を理解出来るかどうか、そして当事者が誠実に行動した程度などを含みます[2]

 非良心的行為のシステムまたはパターンの有無、特定の個人がその行為によって不利益を被る(または被る可能性がある)かどうか、または契約が存在するかどうかにもかかわらず、その行為は非良心的とみなされる場合があります[3]

 非良心的行為を行った個人には最高20万NZドル、ビジネストレーダーには最高60万NZドルの罰金が科せられる可能性があります[4]。 また、民事訴訟および救済措置に関する公正取引法の既存の規定も適用されます。

不公正な契約条項の規制が小規模取引契約にも拡大される(第26B条〜第26E条)

 今まで「不公正な契約条項」 (unfair contract terms)に対する規定は、標準形式の消費者契約(すなわち、企業と個人の間の契約)に限定されていました。しかし、改正法の第26B条〜第26E条は、これらの規定の適用範囲を拡大し、小規模取引契約も対象としています。すなわち、年間25万NZドル以下の小規模企業間契約を意味します[5]

 契約条項が「不公正」であるかどうかを判断する既存のテストは、今後、小規模取引契約にも適用されます[6]。いかなる条項が次の3つの特徴をすべて備えている場合、不公正とみなされます。

(a) 当該条項が、契約に基づいて発生する当事者の権利と義務に著しい不均衡をもたらす場合
(b) 当該条項により利益を受ける当事者の正当な利益を保護するために合理的に必要でない場合
(c) 当該条項が適用、施行、または依拠された場合に、当事者に(金銭的または他の)不利益をもたらす場合[7]

 裁判所が条項を不公正であると判断した場合、その条項を適用、実施または信頼することはできません。本違反は、個人の場合は最高20万NZドル、または法人の場合は最高60万NZドルの罰金で処罰され[8]、民事上の救済措置も適用されます。

不招請勧誘直接販売に対する、敷地からの退去・敷地内に入らないという新たな指示(36RA条)

 公正取引法は既に、不招請勧誘直接販売契約に関して、消費者に特別な保護を与えています。このような契約は、消費者の自宅や職場へ無断で訪問や電話にて行った交渉の結果であり、100NZドル以上の商品やサービス、あるいは供給時に価格が確定できない商品の供給に関する契約を意味します[9]。 現行の保護規定には、このような契約の内容や形式に関する要件(例えば、書面で明確に表現することや、支払うべき合計金額を含めること)、および消費者が契約を取り消す権利などが含まれています[10]

 改正法は、新しい条項36RAを導入したことにより、居住者(または居住者の権限で行動する者)は、不招請勧誘直接販売契約の交渉のために敷地に立ち入った人物に、その敷地から出るように、または立ち入らないように指示することができるようになりました。本指示は、可聴または可視でなければならず、口頭または書面やその他の視覚的な形式で、一般的な指示(例:営業員に電話をかけないと指示するよう玄関に通知する)または特定の指示(例:対面して口頭にて指示)でも構いません。特定な指示の場合、不招請勧誘直接販売者はその指示から2年以内に、不招請勧誘直接販売契約の交渉のために、その建物に入ったり再入場したりしてはなりません。

 本指示に違反した個人は、最高1万NZドル、法人は最高3万NZドルの罰金に処せられる可能性があります[11]。 また、契約の取り消しや変更、賠償金の支払い命令など、一定の民事上の救済措置も用意されています。

既に施行されているその他の規定

 上述の通り、改正法により導入され一部の規定は、既に2021年8月17日に施行されています。(上記で説明した修正条項よりも重要度は低いものの)施行されている規定には以下のような変更点が含まれています。

 ・電話で延長保証を販売する事業者は、契約締結日から5営業日以内に、消費者に延長保証契約の書面を提供することが義務づけられました[12]
 ・経営禁止命令(ニュージーランド国内で事業を行う会社の取締役として活動すること、または経営することを禁止する命令)の範囲が拡大され、より広い状況に適用するようになりました[13]
 ・商務委員会は、公正取引法に基づく調査や照会に関する情報、文書、証拠の開示を禁止することができるようになりました[14]

以上

 

[1] 改正法第8条にて規定されています。

[2] これらの概念は、オーストラリア消費者保護法第20条の概念と類似しています。詳しくは2021年10月号ニュースレター「オーストラリアの消費者保護法」をご覧ください : https://oneasia.legal/7352

[3] 改正法第7条

[4]公正取引法第40条第1項

[5] 改正法第26条D項

[6] 既存のテストは、公正取引法第46L条で規定されています。

[7] 本テスト及び中小企業への適用は、オーストラリア消費者保護法第23条に類似しています。詳しくは2021年10月号ニュースレター「オーストラリアの消費者保護法」をご覧ください : https://oneasia.legal/7352

[8]公正取引法第40条第1項

[9]公正取引法第36K条。

[10]公正取引法第第36L条〜第36R条にて、全ての保護・義務のが規定されています。

不招請勧誘直接販売契約に関する概念及び保護は、オーストラリアにおける「不招請勧誘による消費者契約」(unsolicited consumer agreements)(オーストラリア消費者保護法第69条)と類似しています。詳しくは2021年10月号ニュースレター「オーストラリアの消費者保護法」をご覧ください : https://oneasia.legal/7352

[11] 公正取引法第40条第1B項

[12] 公正取引法第36U条を改正する改正法第10条

[13] 公正取引法第46C条を改正する改正法第14条。

[14] 公正取引法に新しい第48T項を挿入する改正法の第20項。