• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

フィリピン小売業自由化法の改正法の施行について

2022年02月12日(土)

フィリピン小売業自由化法の改正法の施行についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピン小売業自由化法の改正法の施行について

 

フィリピン小売業自由化法の改正法の施行について

2022年2月
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae

第1      はじめに

 2000年に制定された小売業自由化法(Retail Trade Liberalization Act of 2000、Republic Act No. 8762、以下「RTLA」)を改正するR.A.11595が、2022年1月21日に遂に発効しました。  

 RTLAは、東南アジア諸国の中でも最も要件が厳しいと評価されており、特筆すべきは、最低資本金USD250万という要件で、これは外国人投資家から極めて制限的であると評価されてきました。

 フランクリン・ドリロン上院議員(Senator Franklin Drilon)は、1月の声明の中で、RTLAの成立から22年経った今でも、フィリピンの小売業投資ポートフォリオは非常に貧弱であることを強調しました。2021年時点において、貿易産業省( Department of Trade and Industry(以下、「D T I」))に登録されている外国小売企業は46社のみであり、2000年以来、小売企業の増加はわずか年間2社となっています。

 今回のRTLAの改正によって、小売業自由化が進み、外国直接投資に必要な後押しをすることが期待されています[1]。以下、小売業自由化法に関する主な改正点について述べます。

第2 R.A.11595により導入された修正案

①最低資本金規制を25,000,000ペソへ引き下げ

 RTLA改正前は、フィリピンで小売業を営む外国企業は、最低250万米ドルという高額の最低払込資本金を維持することが求められていました。また、旧法では、払込資本金の額や、高級品や贅沢品に特化した企業であるかどうかによって、カテゴリー分けされることになっていました。

 R.A.11595による改正により、分類はなくなり、すべての外国人小売業者は、25,000,000ペソ(およそ5700万円)の払込資本金を維持することのみが義務づけられました。

 この資本金は、3年ごとにDTI、フィリピン証券取引委員会(Securities and Exchange Commission、以下「SEC」)、フィリピン国家経済開発庁(National Economic and Development Authority、以下「NEDA」)によって見直されます。

②1店舗あたりの必要投資額を10,000,000ペソへ引き下げ

 1店舗以上の実店舗を持つ外国人小売業者の最低投資額は、RTLAの改正後にはUSD 830,000,000米ドルから10,000,000ペソ(およそ2300万円)に引き下げられています。

 最低投資額には、有形・無形の総資産の価値が含まれ、共同利用のための投資額の日割り計算も含まれます。また、この改正により、払込資本金は、1店舗あたりの最低投資額を遵守するための資産購入に充てることができることが明確になりました。

③外国人小売業者の資格の簡素化・投資委員会(Board of Investments、以下「BOI)による事前資格要件の撤廃

 旧法では、外国人小売業者の資格について複雑なリストを規定していました。その中には、親会社の最低純資産額、小売業での実績、世界中にある支店などが含まれており、BOIによる事前審査が必要でした。

 改正RTLAでは、上記の事前資格はなくなりましたが、外国小売業者は、フィリピン人小売業者の参入を禁止していない国の出身であり、資本金と投資額の要件を満たす必要があります。

④株式の公募不要

 外国人持株比率が80%を超える小売業は、開業後8年以内に30%以上の株式を公開する必要がありましたが、改正後はその必要はなくなりました。

⑤労働政策の包含

 改正RTLAでは、外国の小売業者は、外国人を雇用する前に、有能で能力があり、意思のあるフィリピン国民がいないことを判断するという労働法の要件を遵守しなければならないと明記されています。

⑥外資系小売業者による現地製品のプロモーションの奨励

 外国の小売業者は、フィリピンで製造された製品の在庫を持つことが奨励されています。       

⑦実施機関としてのSECDTI

 改正RTLAでは、以下のように監督省庁が分かれることとなり、外国人小売業者の監視・規制はDTIだけの責任ではなくなりました。

 ・SEC- パートナーシップ、アソシエーション、企業、および
 ・DTI- シングルプロパティ(個人事業主)

⑧罰則の軽減

 以前は、小売業法に違反すると、6年1日以上8年以下の禁固刑および100万ペソ以上2000万ペソ以下の罰金に処せられました。

 これらは、4年から6年の禁固刑と100万ペソ以上500万ペソ以下の罰金に引き下げられました。

第3 最後に

 フィリピンにおける外資系小売業の要件緩和は、日本企業をはじめとするグローバル企業にとって大きなビジネスチャンスとなる可能が高いと思われます。但し、法律はすでに施行されていますが、外資系小売業の投資家は、改正したRTLAの施行規則や規制(Implementing Rules and Regulations、以下「IRR」)をまだ待っている状態です。DTIは、SECおよびNEDAと連携し、法律の発効から90日以内にIRRを発行することが義務付けられています。

 今後、当事務所のニューズレターにおいてもアップデートをしていく予定です。

 

[1] http://legacy.senate.gov.ph/press_release/2022/0110_drilon1.asp