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オーストラリアにおける会社登録の手続きについて

2022年02月12日(土)

オーストラリアにおける会社登録の手続きについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

オーストラリアにおける会社登録の手続き

 

オーストラリアにおける会社登録の手続き

2022年2月吉日
One Asia Lawyers
オーストラリア・ニュージーランド事務所

1.外国企業の登録要件

 外国企業がオーストラリアにおいて事業を行う場合は、オーストラリア証券投資委員会(ASIC:Australian Securities Investments Commission)への登録が求められます。オーストラリアにて事業を行う(Carrying On Business)か否かは、会社法に明確な定義は存せず、多くの判例法にてその定義が発達しており、外国企業のオーストラリアでの活動その他様々な事情を勘案して判断されます。一般的には、オーストラリアに何かしらの拠点をもち営業活動を行い、例外規定[1]に該当しない場合にはこれに該当する可能性が高いと言えます。

 登録方法は、外国企業の支店(法人格は外国企業本社と同一)としての登録、または現地オーストラリアにて子会社を設立しての登録のいずれかの方法が可能です。

2.各種申請および事業者番号の取得

 外国企業の支店(Branch Office)として登録する場合は、まず企業名がオーストラリアにおいて既に存在しないことを確認のうえ、申請書(Form 402)を作成・署名し、外国での企業登記証明・定款とその英訳その他必要書類および費用と共にASICへ提出します。また登録には、オーストラリア居住者である現地代理人(Local Agent)を任命することが求められます。申請後のASICによる審査期間は、書類の不備等の特別な事情が存在しない限り、平均で1~2週間ほどで完了します。登録が完了すると、登録事業体番号(ARBN:Australian Registered Body Number)が発行されます。

 現地オーストラリアにて子会社を設立する場合は、取締役(必ず1名はオーストラリア居住者)を選任し、登録住所に事業所を開設し、株主登記簿を作成して、資本を投入するという一連の作業を行います。子会社の登録申請は、所管事務局である事業登記サービス(Business Registration Service)に対して、必要書類および費用と併せてオンラインで行い、登録されると、企業番号(ACN:Australian Company Number)が発行されます。なお、非公開会社の場合は定款(Constitution)の作成は任意ですが、定款がない場合に会社の運営は自動的に会社法上のReplaceable Rulesという任意規定に拘束されるため、会社設立時に、このReplaceable Rulesの規定を排除または変更するために定款を作成する会社が多いです。

 上述の通りARBNまたはACNを取得した後は、事業番号(ABN:Australian Business Number)を申請します。ABNは、GST登録、源泉徴収システム(Pay As You Go (PAYG) Withholding)等の税務目的で必要となります。オンラインで全ての情報を入力し申請すれば、直後に自動的にABNを取得することが可能ですが、書類に不備があった場合は、職員の審査を要するため28日程度要する可能性があります。

3.税務関連の登録

 税務に関しては、主に以下の登録が求められます。

 ・GST(Goods and Services Tax):一般的に年間売り上げが75,000豪ドルを以上の場合
 ・源泉徴収システム(Pay As You Go (PAYG) Withholding):主に給与支払い時の源泉徴収目的
 ・付加給付税(Fringe Benefits Tax):従業員やその関係者に提供される特定の追加給付に対して支払われる税金(所得税とは別)
 ・燃料税の控除(Fuel Tax Credits):事業活動で使用する燃料の価格に含まれる一定の燃料税(物品税または関税)の控除を申請する場合
 ・税務局(ATO:Australian Tax Office)より納税者番号(TFN:Tax File Number)の発行
※GST、PAYG、およびTFNの登録は、ABNの登録時に同時に申請が可能でです。また、上記の税務登録はすべてBusiness Registration Service で行うことができます。

4.取締役身元証明番号(DIN)の取得

 従来、オーストラリアでは、取締役が支払不能に陥った会社の債務を残して資産を新会社に譲渡し、その後新会社の取締役として再任するフェニックス行為(Phoenix Activity)の横行が問題視されていました。これに関連して、今年2月には、反フェニックス法[2]が施行され、取締役の辞任時の当局への通知の義務化、および当局による取締役の個人的な責任追及の権限が強化されました。

 このような背景から、2011年11月より、支店登録か子会社設立かを問わず、取締役身元証明番号(DIN:Director Identification Number)の取得が必須となりました。DINはフェニックス行為等の不正行為に関与した取締役の個人的責任の追及を容易にすることが目的とされています。DINは一度取得すると、生涯当該個人に紐づきます。そのため、個人が別会社の取締役となった場合でもDINに変更はなく、個人による不正行為等があった場合のトレーシングが可能となります。

 DIN取得の申請に必要な書類は、取締役がオーストラリア居住者か否かにより異なりますが、非居住者の場合は、出生証明またはパスポート、および政府機関発行のその他の身元証明(運転免許証等)の認証コピー(Certified True Copy)をその英訳、申請書 と共にABRS(Australian Business Registry Services)へ提出することが求められます。支店登録の場合は、原則として本社(外国企業)の全ての取締役についてDINの取得が求められるため、支店登録のための書類の収集および申請手続きに従前の登録作業よりも時間を要することが想定されます。

 2021年10月31日までに選任された取締役は、2022年11月30日までDIN取得申請の猶予期間が設けられています。2021年11月1日~2022年4月4日(両日含む)の間に取締役に選任された場合は、選任後28日間以内に取得することが求められます。一方で、2022年4月5日以降に選任予定の取締役は、選任前にDINを申請しなければなりません。

以 上

 

[1] 株主総会の開催、銀行口座の開設、資産の保有、担保の設定行使、31日以内に完結する単発の取引等一定の行為については、その行為のみ行う場合にCarry On Businessに該当はしない(会社法21条)。

[2] The Treasury Laws Amendment (Combating Illegal Phoenixing) Bill 2019