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中小企業のパワハラ防止法・改正公益通報者保護法対応について

2022年03月10日(木)

中小企業のパワハラ防止法・改正公益通報者保護法対応についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

中小企業のパワハラ防止法・改正公益通報者保護法対応

 

中小企業のパワハラ防止法・改正公益通報者保護法対応
~2022年から中小企業にも適用開始~

2022年3月
弁護士法人One Asia
弁護士 越路倫有

 いわゆるパワハラ防止法が2022年4月から中小企業にも適用され、改正公益通報者保護法も2022年6月から施行されます。これらに対応するため、中小企業においても、2022年4月までに内部通報体制を整備することが必要となりますが、まだ十分に対応ができていないのが現状です。そこで、今回は、これら法律の概要や内部通報制度導入の重要性について、ご案内いたします。

1.はじめに

 2021年7月、日本郵便は、福岡県内の郵便局長による別の局長に関する内部通報に関し、当時コンプライアンス担当だった元役員が、被通報者の父親に通報者を推測できる情報を伝達していたと公表しました。元郵便局長でもあるその父親は、その後通報者を特定してパワハラをしたとして、懲戒処分および刑事事件での有罪判決を受けています。この日本郵便による公表は、日本郵便の内部通報制度に対する信頼の根幹を揺るがすものとして大きな話題になりました。

 このように近年大きな話題となっているパワハラと内部通報について、それぞれ2022年には改正法が施行されます。

2.パワハラ防止法の中小企業への適用

 まずパワハラについて、厚労省の統計によると、都道府県労働局等の総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加しており(2019年度には8万7000件以上)、2019年、労働施策総合推進法の改正により、パワハラの規定が新設され(いわゆる「パワハラ防止法」)、2020年6月から施行されました。いよいよ2022年4月から、中小企業にも同法が適用されます。

 これにより、2022年4月までに、中小企業も、労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講ずることが義務付けられます。当該義務には罰則がありませんが、相談窓口がないなど防止措置が不十分であることを理由に2020年度には408社が労働局から是正指導を受けたとの報告もあり、相談窓口の設置等の対応は必須になります。

3.改正公益通報者保護法への対応

 また、重大なパワハラ事案をはじめ、企業不祥事を早期発見し、組織の自浄作用を働かせるために重要なのが内部通報制度です。消費者庁の平成28年度の実態調査によると、内部通報制度を「導入している」事業者は全体の 46.3%にすぎず、従業員数の少ない事業者ほど導入が進んでいません。

 公益通報者保護法は、労働者が、不正の目的なく、労務提供先の一定の不正を通報することを保護する法律で、この改正法が昨年6月に公布され、2022年6月から施行されます。

改正法により、企業には内部通報体制整備が義務付けられ(従業員が300人以下の企業については努力義務)、その実効性の確保のため、義務に従わない企業に対し、行政措置が講じられることとなりました。さらに、公益通報対応業務従事者等には、刑事罰を伴う通報者特定情報の守秘義務が課されます。

4.内部通報制度の導入による企業価値の向上 

 企業の規模に関わらず、内部通報制度を整備し企業の自浄作用を高めることは、不正の抑止や早期発見、企業活動における人権の尊重、ひいては企業価値の向上にとって不可欠であり、経営者の姿勢が問われる優先順位の高い事項です。

 また、企業不祥事は、海外子会社を含むグループ会社で問題となることも多く、海外子会社も含めた内部通報制度をうまく機能させることで、グローバル企業における海外不祥事のリスク対策も可能になります。

 日本郵便も、外部の弁護士を活用した受付窓口の設置や調査体制の構築など、内部通報制度の改善策を講じているようです。これから準備を開始してもまだ間に合います。これを機に、外部の弁護士を活用した内部通報制度の構築をご検討ください。