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フィリピンにおける外国人投資家を奨励する新たな法律について

2022年03月11日(金)

フィリピンにおける外国人投資家を奨励する新たな法律についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

フィリピンへの外国人投資家を奨励する新たな法律が成立

 

フィリピンへの外国人投資家を奨励する新たな法律が成立

2022年3月
シンガポール法・日本法・アメリカNY州法弁護士  栗田 哲郎
日本法弁護士   難波  泰明
フィリピン法弁護士  Cainday, Jennebeth Kae

第1      はじめに

 フィリピン政府は、フィリピン経済のさらなる開放に向けた取り組みを強化しています。今年1月にフィリピンにおける外国人小売業の投資を緩和する小売業自由化法が改正されたことは記憶に新しいところですが、さらに今月、外国投資法(R.A. 7042、Foreign Investment Act of 1991)の改正法案(Republic Act (R.A.) No. 11647、An Act Promoting Foreign Investments、以下「改正外国投資法」といいます)が成立しました。

 フィリピンは、他の東南アジア諸国と比べて、外国直接投資(FDI:Foreign Direct Investment)に大きな遅れをとっていたことから、議会はこの問題を改善するための改革策として、本改正法案を可決しました。

 改正外国投資法で導入された外国投資法の主な改正点は以下の通りです。

第2 改正外国投資法により導入された規定

 ①外国投資法上、憲法や関連法、外国投資法8条が定めるネガティブリストに該当しない限り、外国資本による輸出企業及び国内企業への100%出資が認められています(同法6条及び7条)。他方で、払込資本金20万米ドル以下の中小企業がネガティブリストに指定されており、中小企業への出資が可能となる要件(ネガティブリストの除外規定)が限定的でした。

 ②今回の改正外国投資法で、以下の場合は、最低払込資本金10万米ドルによって、国内の中小企業に対する外国人投資家および外国企業による100%出資が認められることになりました。

  ・科学技術省が先端技術と認定した事業を行う企業(従前と同様)
  ・関連法において、スタートアップまたはスタートアップイネーブラーとして承認された企業(新設)
  ・直接雇用する労働者の過半数がフィリピン人である企業。ただし、フィリピン人労働者の数が15人以上であること(改正前50人以上から緩和)

 ③ネガティブリストは2年以上ごとに改定されることとされていますが、関係省庁は、2年ごとにネガティブリストを見直し、その分析結果等を議会に提出することとされました。

 ④専門職の業務 (Practice of Profession)は、今後外国投資法の適用を受けず、各専門家規制委員会等が定める規定に従うことになります。

 ⑤税務上の補助を受ける外資系企業が外国人を雇用している場合は、フィリピン人従業員向け技能研修が義務化され、労働雇用省(DOLE: Department of Labor and Employment)によるモニターの対象となります。

 ⑥外国投資の促進と円滑化への取組みを統合することを任務とする省庁間投資促進調整委員会(Inter-Agency Investment Promotion Coordination Committee 、以下「IIPCC」という)が創設され、同委員会は、外国投資促進・マーケティングにかかる中長期計画(FIPMP: Foreign Investment Promotion and Marketing Plan)の策定などを行います。

 ⑦現地パートナーのディレクトリを含む中央データベースとしてオンラインポータルが公開され、現地のサプライチェーンにおける投資とビジネスマッチングを促進するツールとして機能することが期待されます。

 ⑧外国投資促進に携わる公務員や職員が、「反腐敗行為防止法」(Anti-Graft and Corrupt Practices Act)で処罰される行為を行った場合の追加制裁が規定されました。

第3 最後に

 上記のようなフィリピンにおける外資規制の緩和は、日本企業にも大きなビジネスチャンスとなる可能性があります。さらに、フィリピンにおける外資規制をさらに緩和するための「公共サービス法の一部を改正する法律 (Public Service Law)」が成立する見込みです。今後の改正状況については、引き続き、当事務所のニュースレターにおいてもアップデートをしていく予定です。