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日本における建築確認審査の省略対象縮小(4号特例縮小)について

2022年03月28日(月)

日本における建築確認審査の省略対象縮小(4号特例縮小)についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

日本:建築確認審査の省略対象縮小(4号特例縮小)について

 

日本:建築確認審査の省略対象縮小(4号特例縮小)について

2022年3月28日
One Asia Lawyers Group
弁護士法人One Asia
弁護士 江 副    哲
弁護士 川 島  明 紘

1. はじめに

 今般,国土交通省社会資本整備審議会建築分科会は,「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方及び建築基準制度のあり方」に関する報告書の中で,建築基準法第6条の4の第1項3号(4号特例)についての縮小案を明らかにしました。4号特例は,確認申請時に構造計算等に係る審査を簡略化することができる審査省略制度ですが,従前から廃止を求める声も多くあり,実務上も大きな影響を与えるものとなります。

2.4号特例の改正概要

 ⑴ 現状の制度内容

   4号特例は,同制度が創設された昭和58年当時,建築行政職員の体制が限られる中で,建築確認や完了検査が十分に実施できなかったこと等を背景として導入されたもので,小規模建築物で建築士の設計によるものへの審査省略制度として運用が開始されました。同特例により,4号建築物(いわゆる木造戸建住宅等)に該当する建物については,建築士が設計していれば確認申請時に構造計算書等の一部資料を添付する必要がなくなります。同特例は,建築士の業務に対する信頼を前提として,確認申請を円滑に実施することを本来の目的とするものでしたが,後記のとおり,本来の目的に反した現状が続いていました。

 ⑵ 現行制度の問題点

   現行制度導入以降,平成10年建築基準法改正により,建築確認・検査の民間開放等によって建築確認・審査の実施率は格段に向上し続ける一方で,同制度を活用した多数の住宅において,不適切な設計・工事管理が行われ,構造強度不足が明らかとなる事案が断続的に発生していました。そして,被害者側がこのような重大な構造瑕疵について責任追及するに際しては,同制度により構造計算書等の根拠資料の提出が不要となっていることから,建築士側からの任意の資料提出がない限り,資料の取得が困難となり,被害者側の立証活動を阻んでいました。このようなことから,日本弁護士連合会からも4号特例の全面撤廃が求められていました。

 ⑶ 4号特例を巡る従前の経緯

   4号特例を巡っては,壁量不足等の問題が生じる度に廃止を求める声が上がる一方,実務への影響を不安視する声から,廃止には至らず,現在に至っています。

 1983年 4号特例が開始
 1999年 建築確認の民間開放を軸とした改正建築基準法が施行
 2006年 4号特例が適用された建売住宅において,不適切な設計が行われ,多数の住宅で構造強度不足が明らかとなる事案が発生
 2010年 改正建築基準法施行(2007年施行)により,建築確認の厳格化に伴う建築現場の混乱を踏まえ,当面,4号特例の継続を公表。
 2014年 社会資本整備審議会建築分科会の答申において,4号特例を引き続き検討すべき課題として位置づけ
 2018年 日本弁護士連合会が「4号建築物に対する法規制の是正を求める意見書」を公表
 2020年 改正建築士法の施行により,建築士事務所に対して,4号建築物を含めた全ての建築物について,配置図,各階平面図,構造計算書等,工事監理報告書等の保存を義務付け

⑷ 今後の改正案

   上記のような問題点に対する長年の指摘を受け,今般,4号特例の対象を構造種別問わず,延べ面積200㎡以下の平家建てのみに縮小することを内容とする改正が予定されています。従前,審査省略の対象となっていた範囲が大幅に縮小されることとなり,実務上の影響は大きいものとなります。

3.おわりに

  今般の改正が成立した場合には,従前提出が不要であった構造計算書の提出が確認申請時に必要となるケースが増加しますので,各社においては注意いただきたいところです。ただ,改正の成立の有無を問わず,構造強度を十分に満たした瑕疵のない建物の建築は当然要請されるところですので,建築トラブルの発生防止のためにも,「安心安全な建築」の意識を再確認する契機としていただければと思います。

  なお,国土交通省においては,4号特例の縮小を,省エネ性確保に伴う構造安全性の確保に向けた措置の一つと捉えており[1],各社においては,脱炭素社会の実現に向けて行われる,省エネ基準に合わせた技術基準の見直しという観点からも,今後の改正動向を注視していただければと存じます。

[1] 国土交通省においては,「小規模木造建築物等においても,省エネ化による建築物の重量化や,大空間を有する建築物の増加など,構造安全性の確保が求められる」課題がある等としたうえで,「省エネ化等による建築物の重量化に伴う安全性の確保のため,構造に関する基準の整備」を行い,当該基準を確保するため,「建築確認・検査の対象の拡大及び審査省略制度の縮小」を行うとして,4号特例の縮小を位置付けています。