ラオスにおける税関による知的財産保護措置について
ラオスにおける税関による知的財産保護措置についてのニュースレターを発行しました。
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→税関による知的財産権保護措置について
ラオスにおける税関による知的財産保護措置について
2022年3月28日
One Asia Lawyers ラオス事務所
2020年10月9日付のニューズレター「ラオスにおける模造品対策」の中で、「税関による水際措置」について、少し触れましたが、2020年1月13日付で財務省は「税関による知的財産権保護措置に関するガイドライン(以下、ガイドライン)」を発行されています。
本ガイドラインは、2011年9月8日付のガイドラインを改正したもので、知的財産権所有者情報の申告(いわゆる、税関登録)、一時的な商品の差止め申請、知的財産権を侵害する物品に対する検査、職権行使(Ex-officio)、裁判判決の執行に関する規則や手続きを規定しています。
特に、改定後は、税関登録、税関職員に与えられている職務上の権限について、新たに規定されています。そこで、今回は、税関登録及び商品差止め申請を中心に解説いたします。
1.税関による保護対象となる知的財産の種別
商標、著作権び意匠権が対象となります。ただし、商業目的及び恒常的ではない少量の商品の輸出入の場合は、適用されません。
従って、個人使用の少量の商標を模倣した商品、著作権、意匠を侵害した物品、商品の輸出入の場合は、同ガイドラインで規定する措置は適用されません。
2.税関登録制度
これまでは、税関登録制度は、存在していませんでしたが、改正により、知的財産の所有者に関する情報を関税当局に申告することが可能となり、水際対策の更なる強化につながることが期待されています。
申告権限者(第4条) |
権利所有者、権利保有者、知的財産を使用する許可を得た個人法人、組織(以下、権利者) |
申告書類(第5条) |
① 関税当局所定の権利保有者情報申告書 ② 商標、意匠又はその他の知的財産権の登録証明書の写し ③ 権利者であることの証明書類 ④ 真贋判断の基準となる画像、写真、真正品の見本等 ⑤ 知的財産権を侵害していると疑われる人のリストを含め、商品の輸出入者に関する情報(もしあれば) |
申告書提出先(第6条) |
関税局[1]、又は県関税局、首都ビエンチャン関税局 |
承認に要する時間(第7条) |
10営業日以内 |
保護有効期間(第9条) |
保護期間は2年間。 関税局が申告書を受理した日から保護される。 申告書提出者の請求に基づき保護期間の延長可能。 申告情報の修正、追加も可能(第10条) |
保護期間の終了(第11条) |
① 知的財産保護解除申請を行った場合 ② 保護有効期限終了後に、延長申請を行わなかった場合 ③ 知的財産権の終了 |
3.権利者による物差止め申請手続き
(1)権利者による差止め申請をするタイミング(第16条)
・自身の知的財産権の侵害の疑いのある商品又は侵害する商品を確認したことの通知を税関当局から受けた後
・侵害の疑いのある商品又は自身の知的財産権を侵害する商品が輸入、輸出又は領域を通過するという確かな情報を有しているとき
(2)税関差止申請及び供託金(第16条)
関税局で差止め申請を行います。同時に一千万キープ(約800USD)の供託金を支払います。緊急時は、関税当局に対して口頭による申告が可能ですが、3営業日以内に書面による申請を行う必要があります。
(3)物品所有者との調停(第17条)
差止め後、10営業日以内に、物品所有者と調停をしなければなりません。紛争解決又は人民裁判所に提訴中である証拠がある場合、税関当局は、10営業日間の差止め期間を延長することが可能です。
4. 税関当局による(職権)一時差止め(第13条)
税関当局が、商標の模倣又は著作権侵害の疑いがある商品を発見した場合、物品所有者及び権利者に3日間の差止めを通知し、物品所有者に対して聴聞の機会を与えます。
輸出入商品が違法商品であると疑われる十分な証拠がある場合、税関当局は商品を3営業日間差止め、その間に物品所有者に対して、知的財産を侵害していないことを提示させる機会を付与します。
なお、商品が、侵害商品でなかった場合、権利者が税関からの通知に対して何の返答がない場合は、通関手続きが維持、継続されます。
[1] Lao Customs Department
以 上
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