• Instgram
  • LinkeIn
  • Lexologoy

インドネシアにおける老齢保険(JHT)の給付金要件に関する労働大臣規則2022年4号の発行について

2022年06月14日(火)

インドネシアにおける老齢保険(JHT)の給付金要件に関する労働大臣規則2022年4号の発行についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

老齢保険(JHT)の給付金要件に関する労働大臣規則2022年4号の発行

 

老齢保険(JHT)の給付金要件に関する労働大臣規則20224号の発行

2022年6月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士  馬居 光二
インドネシア法弁護士  Prisilia Sitompul

1. はじめに

 本年はじめ、インドネシア労働大臣は老齢保険Jaminan Hari Tua(「JHTの給付金支払に関する手続及び要件に関する労働大臣規則2022年2号(「MoM 2/2022)を施行致しました。同規則は、従前の労働大臣規則2015年19号(「MoM 19/2015」)が定めていたJHTの給付手続及び要件を改訂することを目的として施行されました。他方で、同規則は、加入者が辞職、解雇された場合、または永久にインドネシアを離れる場合に、MoM 19/2015においては退職後1ヶ月給付されるとしていた要件を、加入者が56歳になる年齢まで支給されないと変更するものとなっておりました。

 上記MoM2/2022に対しては労働組合から強い反発がなされていたところ、本年2月に大統領が本規則の修正を指示しておりました。これを受けて2022年4月26日に新たに、老齢保険の支出に関する手続と要件に関する2022年労働大臣規則2022年4号(「MoM 4/2022」)が成立し、MoM 2022/2は失効致しました。

2. JHT Program

 JHTは、加入者が年金受給年齢に達したとき、死亡したとき、または後遺障害を負ったときに、加入者ないしその家族が確実に現金を受領できることも目的として、一括で支払われる給付とされております。

 JHTの加入資格者は以下のとおりです。

 a. 国家機関以外の雇用主のために働く賃金労働者で、(i)企業の労働者、(ii)個人の労働者、(iii)インドネシアで少なくとも6ヶ月間働く外国人
 b. 非賃金受領者:(i)雇用者、(ii)雇用関係外の労働者または自営業者、および(ii)に含まれない賃金を受領しない労働者

3. MoM 19/2015MoM2/2022及びMoM4/2022の相違点

 本件各規則の主要な変更点は下記のとおりです。

MoM 19/2015

MoM 2/2022

MoM 4/2022

·         JHT支給要件

定年に達した加入者(中途退職した者を含む) (3条第1項、第2項)

 

中途退職した加入者を含む、56歳に達した加入者 (3条及び4条1項)

「年金受給年齢に達した加入者」には、中途退職した加入者を含む。

 

年金受給年齢とは、雇用契約、会社規則、労働協約に定められた年金受給年齢に達すること、または56歳に達することをいう(6条1項)。

定年前の給付

●     加入者が解雇又は辞職した場合の支払時期

給付は、下記待機期間(masa tunggu)から1ヶ月が経過した後に支給される。

1.該当する雇用主からの退職通知書の発行日

2.加入者が解雇された日

(第5条1項)

加入者が56歳に達した時点(第5条)

MoM 19/2015と同様 (第8条)

●       インドネシアを永久に離れた外国籍の加入者

詳細は規則内に規定されていない

 

加入者が永久にインドネシアを離れる場合(第6条)

MoM 2/2022と同様 (Article 12)

 後遺障害を負った者および死亡した者に対する老齢保障給付の支給要件は、MoM 4/2022においても特段変更はありません。

4. その他の規定

 MoM 4/2022は、上記の支給年に関する規定に加えて、加入者やその家族による提出書類の簡素化、オンラインでの申請やBPJSにおける手続期間の明確化等も規定されております。

5. 結論

 MoM 4/2022について、労働大臣は、本規則は大統領の指示を受けたものであると同時に、JHT給付の請求手続の簡素化及び利便性を望む労働者の願望に配慮したものであると述べております。

 上記のように、MoM 4/2022は、加入者が中途退職した場合に、56歳まで待たずにJHTの支給を受けられるようにするとともに、請求書類の簡素化やオンラインでの請求を可能としております。

 本規則は、インドネシアで営業を行う多くの日系企業にとっても重要な改正であるところ、内容について十分に検討することが推奨されます。