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インドネシアにおける外国公文書を利用するためのアポスティーユサービスについて

2022年08月16日(火)

インドネシアにおける外国公文書を利用するためのアポスティーユサービスについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

外国公文書を利用するためのアポスティーユサービス

 

外国公文書を利用するためのアポスティーユサービス

2022年8月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士  馬居 光二
インドネシア法弁護士  Prisilia Sitompul

1.はじめに

 インドネシア政府は、2022年1月26日、法務人権大臣規則2022年第6号(以下「MOLHR6/2022」)を発行し、同規則が2022年6月4日に施行されました。MOLHR6/2022はインドネシア政府が2021年1月5日に後述のハーグ条約を批准した大統領規則2021年2号の施行規則に位置づけられます。これにより、公文書についてアポスティーユの利用が可能となりました。

 アポスティーユとは、公文書の署名、公印、捺印を検証の上、他国でも使用できるように批准する行為です。アポスティーユは1961年に締結された外国公文書の適法化要件を廃止するハーグ条約(以下、「ハーグ条約」)の締約国間の合意によって実現したもので、アポスティーユ証明書があれば、外国当局が発行した公文書が、インドネシアを含む122カ国で自動的に法的に有効と認められます[1]

2.条約の目的

 ハーグ条約の目的は、外国の公文書を外交官や領事が認証するという煩雑な手続を、「アポスティーユ証明書」と呼ばれる特定のフォーマットで発行される簡易な証明書に置き換えることにあります。アポスティーユ証明書は文書に添付されるため、他の契約国で提示する際に再度証明書を取得する必要はありません。

3.MOLHR 6/2022

MOLHR 6/2022は、インドネシアにおける上記アポスティーユによる書面の合法化手続(以下、「アポスティーユサービス」)の実施について、以下のようにa) アポスティーユサービスの範囲、および b) アポスティーユサービスの登録及び手続に分けて規定しております。

 a) アポスティーユサービスの範囲

 アポスティーユサービスは、インドネシアの領域内で発行された文書を対象としており、その管理は法務人権省(以下「MOLHR」が行い、アポスティーユサービスにより、同文書は外国でも利用可能となります。

 MOLHR 6/2022第2条第3項に規定されているアポスティーユサービスを利用できる公文書の種類は以下の通りです。

 - 検察官、裁判所登録官、廷吏など、国の裁判所または法廷に関連する当局または役人からの文書
 - 行政文書
 - 公証人が発行する書類
 - 文書に添付される公的な証明書で、文書の登録を記録する証明書、文書の有効期間をある日付で記録する証明書など、その民事権限の範囲内で個人が署名し、役人と公証人が署名を批准するものです。

 ただし、以下の書類については、アポスティーユ証明の免除があります。

 - 外交官または領事館の職員が署名した書類
 - 行政、商業活動または税関活動に直接関連する文書
 - PR 2/2021に規定される検察庁が検察機関として発行する書類

 b) アポスティーユ・サービスの登録及び手続

 アポスティーユは、申請者またはその代理人の申請に基づいて行われ、一般法務総局(以下、「AHU」)の公式ウェブサイト上の申請書に記入し、MOLHRに電子的に提出されます。

 上記申請書には、少なくとも、1) 申請者の身元、2) 代理人を通じて申請する場合は代理人の身元、3) 文書を使用する目的国、4) アポスティーユのために提出した文書の種類、5) アポスティーユのために提出した文書に記載された所有者の氏名及び文書の数、 6) 文書に署名した職員名、及び 7) 文書を発行した機関の名称、を記載しなければなりません(MOLHR 6/2022第3条第3項)。

 申請者は、申請書に記入するだけでなく、以下の書類をアップロードする必要があります。 

 1) 申請者の身分証明書
 2) 代理人の身分証明書および委任状(該当する場合)
 3) アポスティーユされる文書

 申請書を受理してから遅くとも3営業日以内に認証がなされ、申請費用が支払われた後にアポスティーユ証明書が発行されます。

4.日本におけるアポスティーユの手続き

 上記はインドネシア国内におけるアポスティーユサービスについての説明ですが、日本もハーグ条約に加盟しているところ、上記ハーグ条約がインドネシアで批准され、MOLHR6/2022が施行されたことにより、日本で発行され、インドネシアで使用される文書についてもアポスティーユの利用が可能となりました。

 従前、日本で作成された法律文書をインドネシアで使用する場合、公証役場での公証、外務省での公印確認、インドネシア大使館での認証が必要とされておりました。MOLHR6/2022により、上記インドネシア大使館での認証手続は不要となり、より簡易な形であるアポスティーユが利用可能となりました。

 したがって、日本の官公庁で発行され、インドネシアで使用される公文書は、日本の外務省でアポスティーユ(Apostille)が発行されます。

 他方で、個人または法人が発行した書類は、まず日本の公証役場で公証を受け、その後、外務省からアポスティーユが発行されることになります。公証およびアポスティーユは、東京、神奈川、大阪などの公証役場で、ワンストップで行うことができます。アポスティーユ手続に関する詳細は外務省の外務省のウェブサイトからご確認ください(https://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/page22_000607.html)。

5.結論

 アポスティーユが利用可能となることで、日系企業のインドネシアでの取引や法的手続にかかる時間を大幅に短縮されることになります。これにより、これまで以上にインドネシアでのビジネス環境が向上することが期待されます。

[1] インドネシア共和国外務省[ウェブサイト],https://kemlu.go.id/portal/id/read/3566/berita/pemerintah-akan-sederhanakan-legalisasi-dokumen-publik-lewat-sertifikat-apostille (2022年8月8日閲覧)