日本における民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案の概要
日本における民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案の概要についてニュースレターを発行いたしました。
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民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の
2022年9月15日
法制審議会民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)部会(以下「部会」といいます)の第8回会議(2022年8月5日開催)において、「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件に関する手続(IT化)の見直しに関する中間試案[1]」(以下「本試案」といいます)が取りまとめられました。現在パブリックコメント手続が実施されており、パブリックコメント期間は、2022年8月24日から2022年10月24日までになります。本試案については、その趣旨に関する詳細な説明資料として、部会事務局である法務省民事局参事官室において、「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案の補足説明[2]」が公表されています。
1 概要
本試案は、近年における情報通信技術の進展等の社会経済情勢の変化への対応を図るとともに、時代に即して、民事執行手続、民事保全手続、倒産手続、家事事件手続といった民事・家事関係の裁判手続をより一層、適正かつ迅速なものとし、国民に利用しやすくするという観点から、これらの手続に係る申立書等のオンライン提出、事件記録の電子化、情報通信技術を活用した各種期日の実現など法制度の見直しを検討し、中間試案として取りまとめられました。
本試案における主な見直しとして、以下の4点が挙げられます。
①インターネットを用いた裁判所に対する申立て等
②期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
③民事執行手続における債務名義の正本の提出
④電子化された事件記録の閲覧等
本ニューズレターでは、上記の主な見直しについてそれぞれ解説いたします。
2 主な見直し内容
(1)裁判所に対する申立て等
改正民事訴訟法[3](令和4年法律第48号。以下「民訴法」といいます。)第132条の10の規定を準用し、全ての裁判所に対し、インターネットを用いた方法により申立て等が可能になります。特に委任を受けた代理人等においては、申立てや書面の提出等につき、インターネットを用いた方法によることが義務化されることになります(民訴法第132条の11準用)。
なお、各手続における申立て等をインターネットを用いてすることを可能とした場合には、今後構築される裁判所のシステムを通じて行うことが想定されています。
(2)期日におけるウェブ会議及び電話会議の利用
民訴法第87条の2の規定を準用し、口頭弁論期日や審尋期日等の期日について、裁判所が「相当と認めるとき」は、ウェブ会議や電話会議の方法によって行うことが可能となります。
また、破産手続における債権調査期日や債権者集会の期日もウェブ会議によることを認めるほか、当事者が遠隔地に居住している場合等に限りウェブ会議又は電話会議が認められていた家事事件、労働審判や民事調停の手続の期日における手続(証拠調べを除きます。)に関しても、遠隔地要件を削除し、裁判所が相当と認めるときに、ウェブ会議又は電話会議で行うことができるとしています。
(3)民事執行手続における債務名義の正本の提出
現行の民事執行法において、強制執行は原則として、執行文の付された債務名義の正本に基づいて実施することとされており(民事執行法第25条)、強制執行の開始を申し立てる申立債権者は、 執行裁判所に対し、債務名義の正本を提出する必要があります。
本試案では、債務名義が裁判所において電磁的記録により作成されたものである場合には、強制執行は、当該債務名義に係る電磁的記録自体に基づいて実施することとし、債務名義を証明する文書の提出は不要としています。
(4)電子化された事件記録の閲覧等
電子化された事件記録について、当事者等は、裁判所の許可を得て、最高裁判所規則で定めるところにより、インターネットを利用して裁判所外端末より閲覧・複写(ダウンロード)等の請求が可能となります。
具体的な規律に関して、①当事者及び利害関係を有する第三者については、裁判所設置端末及びインターネットを利用して裁判所外端末により閲覧等の請求をすることを可能とし、②その中でも当事者は、いつでも事件の係属中に裁判所外端末を用いた閲覧又は複写をすることができるとしています。
以上
[1]法務省「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案」
[2] 法務省「民事執行・民事保全・倒産及び家事事件等に関する手続(IT化関係)の見直しに関する中間試案の補足説明」
[3] 法務省「民事訴訟法等の一部を改正する法律案」新旧対照条文