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日本における航空法等の一部を改正する法律の概要について

2022年10月12日(水)

日本における航空法等の一部を改正する法律の概要についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

航空法等の一部を改正する法律の概要

 

航空法等の一部を改正する法律の概要

2022年10月12日
One Asia Lawyers 東京事務所
弁護士 松宮浩典

 2022年6月10日、航空分野における脱炭素化を推進していくための「航空法等の一部を改正する法律」(以下「改正法[1]」といいます。)が公布され、同年12月1日より改正法が施行されます(ただし、一部の規定は同年9月1日施行)[2]

1 背景

 国際民間航空機関(ICAO)による国際航空枠組みの発効、2050年カーボンニュートラル実現目標の設定など国内外で加速している脱炭素化の動きに対応していくため、航空会社や空港が連携しつつ、航空分野全体で脱炭素化を推進していく仕組みを整備することが必要となっています。このような背景を踏まえ、今回の改正は、航空分野全体での脱炭素化の推進に向けて行われました。

2 概要

 本改正法における主な改正点[3]は、以下の3点が挙げられます。

 ①脱炭素化の推進に関する基本方針の策定
 ②本邦航空会社による脱炭素化の取組の推進
 ③空港における脱炭素化の取組の推進

 本ニューズレターでは、上記の改正点についてそれぞれ解説いたします。

2 脱炭素化の推進に関する基本方針の策定  

 航空分野全体における脱炭素化を計画的に推進するため、国土交通大臣により、政府の施策、航空会社、空港関係者等の取り組みついて定めた「航空脱炭素化推進基本方針」が策定されます(改正航空法第131条の2の7第1項)。同方針の策定時期は、現時点では2022年12月とされています。

航空脱炭素化推進基本方針の内容は以下の(1)~(6)になります(改正航空法第131条の2の7第2項)。

 (1)航空の脱炭素化の推進の意義及び目標に関する事項
 (2)航空の脱炭素化の推進のために政府が実施すべき施策に関する基本的な方針
 (3)航空の脱炭素化の推進のために、航空運送事業を経営する者、空港等の設置者その他の関係者が講ずべき措置に関する基本的の事項
 (4)改正航空法第131条の2の8第1項に規定する航空運送事業脱炭素化推進計画の同条第3項の認定に関する基本的な事項
 (5)改正空港法第24条第1項に規定する空港脱炭素化推進計画の同法第25条第3項の認定に関する基本的な事項
 (6)上記(1)~(5)に掲げるもののほか、航空の脱炭素化の推進のために必要な事項

 この航空脱炭素化推進基本方針に基づき、本邦航空会社と空港管理者はそれぞれ脱炭素化推進計画を作成し、国土交通大臣の認定を得ることで、計画実現に向けての支援等が受けられるようになります。

3 本邦航空会社による脱炭素化の取組の推進

 本邦航空会社は、持続可能な航空燃料(SAF)の導入等の取組について記載した「航空運送事業脱炭素化推進計画」を作成し、国土交通大臣に認定を申請することができます(改正航空法第131条の2の8第1項)。

 航空運送事業脱炭素化推進計画への記載事項及び認定要件は、次の通りです。

 【記載事項】(改正航空法第131条の2の8第2項)
 (1)航空運送事業の脱炭素化の目標
 (2)(1)の目標を達成するために行う非化石燃料(化石燃料以外の物であって、燃焼の用に供されるものをいう。)の使用その他の措置の内容
 (3)上記(1)、(2)に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項

 【認定要件】(改正航空法第131条の2の8第3項)
 (1)航空脱炭素化推進基本方針に適合するに適合するものであること
 (2)円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること
 (3)航空の安全の確保に支障を及ぼすおそれのないものであること

 認定を受けた航空会社は、空港脱炭素化推進協議会(改正空港法第26条第1項)に対し、認定計画の円滑かつ確実な実施のために必要な協議を求めることができます(改正航空法第131条の2の10)。なお、認定計画が認定要件のいずれかに該当しなくなったとき、又は認定を受けた航空会社が認定計画に従って航空運送事業の脱炭素化のための措置を行っていないときは、認定を取り消される場合があります(改正航空法第131条の2の12)。

4 空港における脱炭素化の取組の推進

 空港における再エネ・省エネの取り組みを推進していくため、空港管理者は、誘導路の改良、空港で使用する電力を供給するための太陽光発電設備の整備等の取組について記載した「空港脱炭素化推進計画」を作成し、認定を申請することができます(改正空港法第25条第1項)。

 空港脱炭素化推進計画への記載事項及び認定要件は以下の通りです。

 【記載事項】(改正空港法第24条第2項)
 (1)空港の脱炭素化の目標
 (2)(1)の目標を達成するために実施する再生可能エネルギー発電設備の整備その他の空港の脱炭素化のための事業及びその実施主体に関する事項
 (3)(1)~(2)に掲げるもののほか、国土交通省令で定める事項

 【認定要件】(改正空港法第25条第3項)
 (1)基本方針及び改正航空法第131条の2の7第1項に規定する航空脱炭素化推進基本方針に適合するものであること
 (2)円滑かつ確実に実施されると見込まれるものであること
 (3)航空の安全の確保に支障を及ぼすおそれのないものであること

 計画を作成しようとする空港管理者は、航空会社、給油事業者、ターミナルビル事業者のほか、空港のための再生可能エネルギー発電を行う事業者等からなる空港脱炭素化推進協議会を組織し、計画の作成、実施等について協議することができます(改正空港法第26条第1項及び第2項)。

また、認定を受けた計画に基づく取組について、国有財産の活用に関する特例が規定されました(改正空港法第28条)。

 なお、認定計画が認定要件のいずれかに該当しなくなったとき、又は認定計画に従って空港脱炭素化推進事業が行われていないときは、認定を取り消される場合があります(改正空港法第30条)。

 このように、国土交通大臣による航空脱炭素化推進基本方針のもと、航空会社においては、持続可能な航空燃料や新技術の導入のための計画的な投資、空港においては省エネルギー化に加え、未利用地を活用した再生可能エネルギー発電の導入等に関する脱炭素化推進計画が策定されることになります。航空分野全体での脱炭素化を実現するため、航空会社と空港が連携し、航空分野全体で脱炭素化を推進するための体制を構築することが重要です。

以上

[1] 国土交通省「航空法等の一部を改正する法律案」新旧対照条文

[2] 国土交通省航空局総務課「報道発表資料」(令和4年8月5日)

[3] 国土交通省「航空法等の一部を改正する法律案」概要