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ラオスにおける宿泊業について

2022年11月18日(金)

ラオスにおける宿泊業についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
宿泊業について

ラオスにおける宿泊業について

 

2022年11月18日
One Asia Lawyers ラオス事務所

1.背景

ラオスは、コロナによる2年間の国境閉鎖期間中に、閉鎖したホテルや廃墟となってしまったゲストハウスが多くあるものの、他方で、首都ヴィエンチャンは、Double Tree by Hilton Vientiane、Amari Vientiane、Holiday Inn & Suites Vientianeなどの外資系ホテルが建設途中にあります。

2022年9月30日付けで「観光業に関する情報文化観光大臣の合意(No.607 )」を発行しましたが(詳細は2022年11月16日付けニューズレターを参照ください)、関連して、2021年12月14日付で「宿泊施設に関する情報文化観光大臣の合意(No.985)」を発行、2022年11月14日に官報に掲載、施行されています。同合意は、1997年発行の「ホテルとゲストハウスの営業管理に関する合意」の改正版となります。

ラオスの宿泊業は、規模によっては、ラオス国籍者にしか営業が許可されない宿泊施設もあり、留意する必要があります。なお、同合意が施行される前に宿泊業の事業者は、施行後120日以内に同合意で規定する宿泊施設の形態へ変更する必要があります。

同合意は、各種宿泊施設の定義からはじまり紛争解決まで、全62条から構成されていますが、今回は、宿泊業における会社設立、事業許可証の取得の概要を中心に解説いたします。

2.適用の範囲

同合意は、旅行者が一時的に宿泊するホテルやゲストハウスのみならず、不動産賃貸業(アパートメント、住宅、コンドミニアム等)も含みます。

但し、政府が所有する施設、宗教関連の施設、利益が伴わない施設、常時経営していない施設は含みません(第6条)。なお、ホテルは20部屋以上、ゲストハウスは10部屋以上の宿泊施設を指します(第3条)

 3. 推奨地域、格付け、免税恩典

(1)推奨地域

推奨地域は以下のとおり、3地域に区分され、免税恩典が受けられるのは、地域1と地域3(経済特区)と規定されています(第8条)。

地域1:僻地、経済・社会インフラが未整備であり、投資及びビジネスが難しい地域

地域2:基本的な経済・社会インフラが整っており、投資環境が整備されている地域

地域3:経済特区

(2)免税恩典

地域1において宿泊業を行う場合、宿泊施設の格付け(星の数)によって、法人税の免税期間が異なります。地域2において宿泊業を行う場合は、特段免税の恩典は与えられていません。また、地域3において宿泊業を行う場合は、各経済特区の恩典措置に従うことになります。

格付け

法人税免税期間

VAT率(免税期間)

関税

5つ星

5年

0%(1年)

ラオス国内で調達できない器具、食品加工、製造機器、宿泊施設運営に直接関係するものなどは、免税の対象

4つ星

4年

0%(1年)

3つ星

3年

0%(1年)

2つ星

2年

0%(1年)

1つ星

1年

0%(1年)

 

(3)格付けについて

各宿泊施設は、事業許可証を取得後1年以内に、宿泊施設格付け委員会により、星の数が与えらます。その後、5年ごとに評価の見直しが該当年の12月に行われます。同委員会は、情報文化観光省副大臣をはじめ、各関係機関の代表者から構成されています。なお、どのような基準で格付けされるかについては、別途定める規定[1]に従うとあります。

4.外資規制[2]

下記の宿泊施設に関しては、施設の規模及び投資額が少額の場合、ラオス国籍者のみに経営が認められており、外国人は参入できない場合がありますので、留意する必要があります(第20条)。なお、ホステルは、10部屋以上ある宿泊施設で、共同スペースが多い形態を指します(第3条)。

・ホステル

・ゲストハウス

・賃貸住宅(不動産賃貸業)

・集合住宅(不動産賃貸業)

5.会社設立及び事業許可証の取得

宿泊施設連事業を行うものは、商工省(局)にて会社の登記を行います。その後、情報文化観光省の管轄下にあるワンストップサービスにて、事業許可証を取得する流れとなります。

(1)登録資本金

最低登録資本金は、宿泊施設の規模によって以下の通り規定されています(第26条)。

① 100室以上の宿泊施設(不動産賃貸業も含む):500,000USD以上

② 50から99室までの宿泊施設(不動産賃貸業も含む):100,000USD以上

③ 10から49室までの宿泊施設(不動産賃貸業務含む):10,000USD以上

④ 9室以下の宿泊施設(不動産賃貸業務含む):登録資本金の規定なし及び事業許可証は発行しない。

なお、外国人で賃貸業やコンセッション事業に関わる個人、法人に登録資本金は、投資奨励法及び関連法令に基づきます(第26条)。

(2)事業許可証の取得

商工省(局)で企業登録を行ったあと、情報文化観光省管轄下の最寄りのワンストップサービスにて、事業許可証の取得手続きを行います。事業許可の取得に必要な書類は以下の通りです(第19条)。

① 事業許可証申請書

② 企業登録書の写し

③ 企業登録申請書一式の写し

④ 就業規則の写し

⑤ 事業主の顔写真

上記に記載の必要書類を揃えて情報文化観光省管轄下の最寄りのワンストップサービスへ提出します。ワンストップサービスは、関連する各機関と共同で書類を精査、完全に揃った申請書類を受理後、7営業日以内に事業許可証を発行します。事業許可証は、有効期限はありませんが、1年ごとに事業継続許可を行います。事業継続許可に必要な書類は第19条に規定されていますが、納税証明書の写しなどが必要となります。

[1] 2007 年 2 月 26 日付「ラオスにおけるホテル及びゲストハウス格付け基準に関する合意(No.060)」

[2] 観光開発事業の中で、ツアーガイド、観光ガイド及び宿泊施設に関するビジネスは、ラオス国籍者のための保全リスト、条件付きビジネスリスト及びネガティブリストにて、外資規制及び許可取得要件について、次のとおり規定されています。

保全リストによれば、短期宿泊施設(ゲストハウス、リゾート、一つ星及び二つ星のホテルを指す)の場合、ラオス国籍に保全される事業に該当し、外資の参入は不可能となっています。

条件付きビジネスリストによれば、三つ星から五つ星のホテル事業の場合、外国投資の場合、内国資本と外国資本の合弁会社の形態をとる必要があります。また、同ビジネスリストによれば、外国企業は 60%までしか株式を保有することができないと規定されています。

他方、過去に行った観光局での聞き取り調査においては、観光法には明確に外資規制に関して規定していませんが、一定の条件を満たせば、例外的に外資 100%での会社設立を認めているとのことです。その条件については、事業計画書(建設図面も含む)等に基づき、総合考慮の上、判断されるとの回答を得ています。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)