ネパールにおける法人設立に必要な最低投資額の大幅引き下げについて
ネパールにおける法人設立に必要な最低投資額の大幅引き下げについてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。
ネパール 法人設立に必要な最低投資額が大幅に引き下げ
2022年11月22日
ネパールでは、海外企業が現地法人を設立するにあたり、非公開会社であれば最低資本金は定められていません(公開会社は1,000万NPRの規定あり)。他方、最低投資額として、従来は5,000万NPR(約5,500万円)が求められていました。今般、この法人設立に必要な最低投資額が、5,000万NPRから2,000万NPR(約2,200万円)に引き下げられることとなりました。
本ニューズレターでは、今回の改正の内容とその背景を紹介いたします。
なお、ネパールの投資環境や進出形態については、以下のニューズレターも併せてご参照ください。
2020年12月18日付ニューズレター「ネパールの投資環境と2020年産業企業法について」(ネパールの概況と外資規制等を解説)
2021年3月31日付ニューズレター「ネパールの会社法について」(進出形態や設立手続き、会社の運営と機関等を解説)
1.ネパールへの進出形態と主な要件の比較
日系企業がネパールに進出する際は、現地法人、外国法人の支店(Branch Office)、連絡事務所/駐在員事務所(Liaison Office)のいずれかを設置することが一般的です。
その際、計画する分野が産業法[1]上の「ポジティブリスト」に該当する「産業」である必要があります。産業は、①固定資産額および取引額によって零細産業から大規模産業に分類され(産業法第17条第1項)、さらに、②商品・サービスの性質により産業別に分類(同条第2項)されます。外国投資の目的は1つしか認められないため、もう一方の事業活動については、別の会社または支店を設立する必要があります、なお、この分類により税率等が決定される重要なものですが、産業法上の「産業」は、非常に細分化された分類であるものの、網羅的とは言い難いため、計画する事業内容の実態に近い産業を選択することとなります。
さらに、前述の3形態のうち、現地法人として会社を設立する場合には、産業法上のポジティブリストに加え、「外国投資技術移転法」(以下、「FITTA」)[2]上の「ネガティブリスト」(外国企業の参入が制限または禁止されている分野)に該当しないことが条件となります。
外国企業の参入制限(FITTA 附属書)は以下のとおりです。この中で、計画する事業内容そのものは制限を受けない場合においても、その規模が「家内産業、零細産業」とみなされないよう、留意が必要です。具体的には、土地と家屋を除く固定資産(ネパール法人設立完了までに発生した、資産計上される技術・検査・環境調査・研究等の費用も含む)の総額が200万NPR超であり、10人以上を雇用し、年間1,000万NPR以上の取引を見込む、等の条件が揃った場合に、法人を設立することができることとなります。
1) 養鶏、漁業、養蜂、野菜その他の第一次農業生産物(生産量の75%以上を輸出する大規模性産業は除く) |
以上も踏まえた3形態の主な要件は以下のとおりです。
現地法人 |
支店 |
駐在員事務所 |
|
法人格・ 責任範囲 |
内国法人(親会社と別人格) 親会社は有限責任 |
外国法人(親会社と同人格) 親会社は無限責任 |
|
活動範囲 |
外国規制の範囲内で原則制限なし |
親会社の事業と類似した内容かつ許可された範囲内での事業・取引 |
連絡拠点としての機能に限定。収入が生じる活動は不可 |
手続申請先 |
産業省の投資承認(60億NPR超の投資は投資庁承認)取得、産業省の産業登録、中銀への通知 |
登録事務所に登録 |
|
最低資本金 |
定めなし(ただし、公開会社は1,000万NPR) |
定めなし |
|
最低投資額 |
2,000万NPR ※2019年4月に、従来の500万NPRから10倍の引上げ。今般、5,000万NPRから2,000万NPRに引下げ。 うち70%を操業開始前に送金する必要あり。 |
規定なし(外国投資とみなされない) |
|
産業規模の下限 |
家内産業・零細産業の定義を上回る規模 家内産業:伝統的技術を使用、国内原料や技術、芸術、文化に基づく労働集約型の手芸品等。機械利用は消費エネルギー50kw未満 零細産業:固定資産(家屋と土地は除く)が200万NPR以下、事業主自ら経営に関与、労働者数(事業主含む)が9人以下、年間取引額が1,000万NPR以下、消費する電気エネルギー・燃料等は20KW以下 |
定めなし |
|
雇用比率 |
技術職・管理職における外国人雇用比率は15%まで(ネパール人の人数を85%以上とする必要あり) |
||
法人税 |
25% ※一定条件を満たした企業に対する減税や税還付措置規定あり(例:製造業は法人税率20%、通年で100人以上のネパール人を雇用し一定の条件をいたす場合は20⁻30%の減免措置、等) |
25% |
営業活動なく課税なし |
2.最低投資額要件の緩和
前述のとおり、法人設立に際しては、最低投資額が5,000万円を要すると規定されていました。最低投資額は、2019年4月に、従来の500万NPRから10倍の額に引上げられましたが、それに対する反感が大きかったことを受け、2022年5月に、ネパール政府は年間計画の中でこの額を2,000万NPRに引き下げることを宣言しています。10月に入り、政府は、最低限度額を正式に引き下げることを決定したと現地で報じられていましたが、この度、官報(Nepal Gazette)に掲載され、この改正が正式に実施されることとなりました。
ネパールにおける日系企業の進出には規制や手続上の課題は少なくないものの、特に中小企業による進出や、当初は限定的な規模で展開することを検討する企業にとっては、ハードルが少し下がる改正といえます。
以上
[1] Industrial Enterprises Act, 2020 https://moics.gov.np/uploads/shares/laws/Industrial%20Enterprises%20Act%20%202020.pdf
[2] Foreign Investment and Technology Transfer Act, 2019 https://www.lawcommission.gov.np/en/wp-content/uploads/2019/09/The-Foreign-Investment-and-Technology-Transfer-Act-2019-2075.pdf