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マレーシアにおける民事裁判:訴訟前の資産凍結について

2022年12月14日(水)

マレーシアにおける民事裁判:訴訟前の資産凍結についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

マレーシアにおける民事裁判(3) ~訴訟前の資産凍結~

 

マレーシアにおける民事裁判(
訴訟前の資産凍結

2022年12月
One Asia Lawyers Group
マレーシア担当
日本法弁護士   橋本  有輝
マレーシア法弁護士  Clarence Chua Min Shieh

1.はじめに

マレーシアの訴訟を概説する本シリーズでは、前回、訴訟の開始について概観した。

今回は、訴訟前に相手方当事者の資産を凍結する制度であるMareva injunction(マリーバ・インジャンクション日本の仮差押えに相当するもの)について、説明を試みる。

2.マリーバ・インジャンクションとは?

マリーバ・インジャンクション(以下、「資産凍結命令」)は、Mareva Compania Naviera SA v International Bulkcarriers SA[1] という判例に由来したもので、被告が関与している事件の判決が出るまで、被告財産の処分を禁止する仮の命令である。この命令は「原告の係争中の請求に対応するために必要な場合」に出され得るものであり[2] 、つまり、資産凍結命令は、原告による申立てがなされていない場合であっても実施される可能性がある。 この命令は、Civil Procedure Rules 1997(民事訴訟規則)で”freezing order”とも呼ばれており、両者は同じように使われることが少なくない。

 3.資産凍結命令の手続き[3]

申請は、宣誓供述書を添付した申請通知書によって行う。この申請は、被告に通知することなく、また被告を法廷に出席させることなく行われるのが一般的で、ex-parte application(「一方的な申請」という意味)とも呼ばれている。緊急性が高い場合、原告は実際の訴訟を提起する前に申請を行うことも可能であり、この点は日本の仮差押えと同じである。

この申請をサポートする宣誓供述書は、以下の点などを含む必要がある[4]

・請求の原因となる事実
・仮処分申請の原因となる事実
・一方的な申請を正当化するために依拠すべき事実(相手方への通知の詳細、通知が行われていない場合は通知を行わなかった理由を含む)
・請求または申請に対する相手方の回答(または相手方が主張する可能性のあるもの)など

4.資産凍結命令認容のための検討される事項

裁判所が何を考慮するかについては、以下の判例法を参照する。すなわち、Bank Bumiputra v Lorrain Osman[5] では、原告は次の 3 点を示さなければならないとされた。① 請求に理由のあること(Good Arguable Case)、②被告が管轄内に資産を有するという証拠、③判決が出る前に被告によって資産が処分される可能性があること、である[6]

また、日本の仮差押えと同様、本訴において原告が敗訴した場合における被告の損害賠償請求権の担保として、一定の担保金を裁判所に納めるよう要求される場合がある[7]

5.資産凍結命令の取得後の流れ

資産凍結命令が出されると、命令の日から 7 日以内に当事者に送達されなければならず、裁判所は命令の日から 14 日以内に当事者が出席の上(つまり、原告と被告の両方が出席して)申請を審理する日を決めなければならない[8]。 つまり、資産凍結命令は、原則 21 日間有効である[9] 。そのうえ、上記審理を踏まえて裁判所はこの凍結の期間の延長又は取消を決定することになる。なお、上記21 日以内に審理期日の指定がされない場合、新たな凍結命令の申請する必要がある[10]

以上の通り、一旦申請者の申請のみに基づいて決定された資産凍結命令は暫定的なものという扱いである。これは、被告の資産を自由に移動・処分する権利を著しく侵害するものであるため、凍結命令に対して被告側から異議を申し立てる機会を与えるためである。

また、訴訟の提起前に申請が行われた場合は、命令が下されてから 2 日以内(又は裁判所が適切と考える期間) に訴訟を提起しなければならない[11]

6.結論

以上が資産凍結命令の概要となります。しかし、凍結命令には様々なパターンがあり、その都度原告のニーズも異なります。今回ご紹介した内容をさらに詳しくお知りになりたい場合は、お気軽に弊社までお問い合わせください。次回は、他の形式の凍結命令及び仮処分申請についてご紹介します。

[1] [1980] 1 all er 213

[2]  S & F International Limited v Trans-Con Engineering Sdn Bhd [1985] 2 CLJ 228

[3] 詳細は、Rules of Court 2012が規定する。

[4] Order 29 Rule 1(2A), Rules of Court 2012

[5] [1985] 2 MLJ 236

[6] Beyond Hallmark Sdn Bhd v Leong Tuck Onn Wong Swee Min [2017] MLJU 1315

[7] Keet Gerald Francis Noel John v Mohd Noor @ Harun Abdullah and Others [1995] 1 CLJ 293  

[8] Order 29 Rule 1(2BA), Rules of Court 2012

[9] Order 29 Rule 1(2B), Rules of Court 2012

[10] RIH Services (M) v Tanjung Tuan Hotel [2002] 3 MLJ 1

[11]  Order 29 Rule 1(3)(b), Rules of Court 2012