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ラオスにおける美術関連事業に関する規定

2023年01月11日(水)

ラオスにおける美術関連事業に関する規定についてのニュースレターを発行しました。PDF版は以下からご確認下さい。
美術関連事業について

ラオスにおける美術関連事業に関する規定

 

2023年1月11日
One Asia Lawyers ラオス事務所

1.背景

ラオスにおける美術に関する法令は、2017年施行の舞台芸術法(Law on Performing Arts)、2016年施行された絵画、彫刻、建築、工芸等に関して規定する「美術に関する首相令(Decree on Fine Arts)」があります。今回、ラオス政府は、2022年8月に「美術法(Law on Fine Arts)」を発行し、2022年10月1日から施行されています。首相令から法律へ格上げされたかたちとなっています。首相令には、美術作品の管理に関する規定がありませんでしたが、美術作品の登録制度が新たに規定されました。作品の収集、展示、複製、貸出、輸出入、販売等に関して規定することで、美術作品の保管、保存管理体制の強化が期待されます。

今回は、美術品を取り扱う事業及び登録制度に関する規定を中心に解説いたします。なお、美術には、絵画、彫刻、写真、マス広告、建築、手工芸が含まれます(第9条)。

2.事業の種類
国の美しい文化を広めるための美術分野における経済活動には、以下の通り4種類があります(第61条)。
(1)美術品の展示活動
(2)私立の博物館運営
(3)美術品(工芸品)の製造
(4)養成所・美術学校の経営
上記の事業を行うためには、商工省/局で企業登録を行い、その後、中央、県、郡レベルの情報文化観光機関(以下、情報文化観光省管轄下の機関)で企業登録書とは別に、事業許可証を取得する必要があります(第67条、第68条)。事業許可証は、書類が受理されて10営業日以内に発行されると規定されています(第68条)。
また、事業活動の条件は、事業許可証の取得、財源、場所及び人材の確保、必要なインフラの整備となっています(第66条)。事業活動を停止する場合は、30日前までに書面にて事業許可書を取得した機関へ通知する必要があります(第69条)。
3. 美術品の登録について
個人、法人、団体が保有している美術作品は、情報文化観光省管轄下の機関で登録をすることが可能です。登録をすることで、美術作品が評価され、レベルが付与され、国の管理・保護下に置かれることになります。国外にあるラオス政府代表機関に保管されている美術品も登録の対象となっています(第28条)。
レベルに関しては、国家級と地方級の二つのレベルに分類され、管理する主体の違い以外の具体的な基準については、別途規定するとあります(第20条)。
登録方法は、美術品が保管されている場所を管轄している情報文化観光省管轄下の機関に対して登録申請書を提出します。国外のラオス政府代表機関内に保管されている美術品は、中央の情報文化観光省で登録手続きを行います(第29条)。申請書を提出後、各関連機関が90日を上限として、内容を精査、検討後に、登録が完了します(第30条)。
登録済みの美術品を他人へ譲渡又は相続する場合は、事前に情報文化観光省管轄下の機関の承諾を得る必要があります。また、複数人へ譲渡又は相続する場合は、代表者1名に対して権利を与えることになります(第40条)。

4.美術品の複製、新規制作、調査・分析について
複製する場合は、情報文化観光省管轄下の機関及び著作権者より承諾を得る必要があります。
既存の美術品の特定の特徴、模様、色、形などをコピーして新しく作成する場合、情報文化観光省管轄下の機関の承諾を必要とします。
また、外国人と協力して美術品を調査・分析する場合においても、情報文化観光省管轄下の機関の承諾を必要とします。なお、調査報告書は、原本を各関連機関へ提出する必要があります。

5.美術品の展示のための輸出について
海外で美術品を展示又は調査・分析のため輸出する場合、事前に情報文化観光省管轄下の機関より許可を得る必要があります。
国家級の価値が高い美術品は、輸出する前に中央の情報文化観光省からの申請に基づき、ラオス政府より許可を得る必要があります。また、輸出した美術品は、輸出許可を得てから1年以内にラオスに戻す必要があります。

6.海外の美術品の輸入展示、販売について
海外からの美術品はすべて、事前に情報文化観光省管轄下の機関の検査を受け、許可を取得して展示・販売する必要があります。

7.美術品の販売、交換、貸出について
個人、法人、団体が保有する国家級及び地方級の価値の高い登録済みの美術品を売買又は交換する場合は、情報文化観光省管轄下の機関から事前に承諾を得る必要があります。場合によってはは、ラオス政府より許可を得る必要がある美術品もあります。
但し、その中でも価値が高い美術品については、ラオス政府に対して、合意価格で販売することが、優先されます。また、このようなうな美術品のオリジナルは、個人、法人、団体への販売、交換又は贈答品とすることは、禁止されています。
国家間の貸出については、価値が高い美術品がオリジナルの場合、事前に中央の情報文化観光省からの申請に基づき、ラオス政府より許可を得る必要があります。

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)