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シンガポールにおける「オンラインセーフティ法」施行について

2023年02月22日(水)

シンガポールにおける「オンラインセーフティ法」施行についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポールにおける「オンラインセーフティ法」施行について

 

シンガポールにおける「オンラインセーフティ法」施行について

2023年2月
One Asia Lawyers Group
シンガポールオフィス

1.はじめに

 2022年11月9日に国会で成立した「オンラインセーフティ法」(the Online Safety (Miscellaneous Amendments) Act[1]、以下「本法」)が、2023年2月1日から施行されました。

 これは、シンガポールにおけるオンラインコンテンツのエンドユーザーの安全性を高めるため、「放送法」(the Broadcasting Act 1994[2])及び「電子取引法」(the Electronic Transactions Act 2010[3])の追加的改正という形で、保護者、若者、地域団体代表、学識経験者、産業界など複数のステークホルダーによる幅広い協議の結果を踏まえてなされたものです。

 この法律により、シンガポールのエンドユーザーがアクセスできるオンラインコミュニケーションサービス(Online Communication Services、OCS)を規制するため、放送法に新たなパートが導入されました。同パートの目的としては、概ね(a)シンガポールにおける健全なオンライン環境の提供、(b)シンガポールの子供のエンドユーザーの有害コンテンツからの保護、及び(c)公益性に基づく規制、の3つにあると規定されています(本法第5条、放送法第45A条)。

 なお、この規制は、放送法の別表において指定された OCS に対してのみ適用され、現時点では、ソーシャルメディアサービス(Social Media Services、SMS)[4]のみが指定されています。

2.シンガポールのエンドユーザーのオンライン安全性向上措置

(1)「有害コンテンツ」(egregious content)規制

 本法の施行により、シンガポールの情報通信当局(Infocomm Media Development Authority、IMDA)は、OCSに見られる「有害コンテンツ」(egregious content)へのシンガポールのエンドユーザーのアクセスを無効にする各種命令(direction)を出すことができることになりました。この「有害コンテンツ」には、次のようなものが含まれ、かつ、それがシンガポール内外で行われたかは問わないとされています(本法第5条、放送法第45D条)。

 ・自殺や自傷行為、身体的・性的暴力、テロリズムを擁護・指導するコンテンツ

 ・子どもの性的搾取を描写したコンテンツ

 ・シンガポールにおける公衆衛生上のリスクをもたらすコンテンツ

 ・シンガポールの人種・宗教上の不和を引き起こす可能性があるコンテンツ

 このほか、Code of Practiceのドラフト(後述)においては、

 ・ネット上のいじめ(Cyberbullying)に関するコンテンツ

 ・悪徳商法や組織的犯罪を助長するコンテンツ

も含まれるとされています。

 更に、本法、ドラフトガイドライン(後述)等において、定義される各コンテンツの詳細な内容について規定されていますのでご参照ください。

 また、IMDAは、次の3種類の命令を出すことができます(本法第5条、放送法第45H条、45I条)。

(a)OCSプロバイダーに対し、シンガポールのエンドユーザーによる有害コンテンツ(特定の投稿など)へのアクセスを無効にすべきとする命令

(b)OCSプロバイダーに対し、シンガポールのエンドユーザーへの有害コンテンツの配信または通信を停止する命令

(c)OCSプロバイダーがIMDAの指示に従わない場合に、インターネットアクセスサービスプロバイダーに対し、シンガポールのエンドユーザーによる当該OCSへのアクセスをブロックする命令

(2)実務規範(Code of Practice)の制定

 IMDAは、OCSの提供範囲及びその内容・程度等に鑑み、著しい影響力を持つと判断したOCSを「規制対象オンライン通信サービス」(Regulated Online Communication Services、ROCS)に指定することもできます(本法第5条、放送法第45L条)。ROCSプロバイダーは、有害コンテンツにさらされることによるシンガポールのエンドユーザーの危険性を軽減するためのシステムおよびプロセスをサービス上に導入し、そのような措置について、ユーザーに説明責任を果たすことを求めるCode of Practiceに準拠することが要求される場合もあります(本法第5条、放送法第45L条)。

 この点に関しIMDAは、指定されたSMSのためのオンライン安全性に関するCode of Practiceを提案しています。このドラフト、及びそのガイドラインがIMDAのウェブサイトで公開されており[5]、関連業界においてさらなる協議を経て、2023 年後半に施行される予定となっています。

(3)罰則

 本法(放送法)に基づく規制に違反した場合の罰則としては、例えば上記「有害コンテンツ」の配信の停止命令に違反した場合には、最大1,000,000シンガポールドル、及び継続的な違反に対して一日あたり更に最大100,000シンガポールドルの罰金が課されることになり(本法第5条、放送法第45E条)、比較的厳しいものと言えます。

 このほか、そのような「有害コンテンツ」にアクセスするインターネットサービスの提供者に対しても、最大500,000シンガポールドルの罰金が課され得ます(本法第5条、放送法第45F条)。

3.まとめ

 本法は、直接にはエンドユーザーを規制するものではなく、サービスプロバイダが規制対象となりますが、上記の通り、罰則も小さくないため、プロバイダ自身がコンテンツに対する規制を強化することが想定され、今後、エンドユーザーが各種SNSにアップするコンテンツにも、より一層の注意を払う必要が出てくるものと思われます。例えば、日本で最近見られるような「迷惑動画」や、炎上商法まがいのコンテンツは、本法上の「有害コンテンツ」に該当する可能性が高いものと思われます。

 本法自体は、プロバイダに対する責任を持ったサービス提供をより一層義務付けるものですが、このような法規制を通じて、結局のところ、エンドユーザーにおいても、この種のサービスについて「責任を持った利用」が益々求められてくるものと思われます。また、具体的にどのような記事が「有害コンテンツ」に該当するかについての更なる詳細の記載された正式なCode of Practice及びガイドラインの発表が待たれるところです。

[1] https://sso.agc.gov.sg/Acts-Supp/38-2022/Published/

[2] https://sso.agc.gov.sg/Act/BA1994

[3] https://sso.agc.gov.sg/Act/ETA2010

[4] 本法(放送法)上、「ソーシャルメディアサービス」は次の通り定義されており、一般にイメージするSNSなどは、基本的にこれに該当すると思われます。

“social media service” means an electronic service that satisfies all the following characteristics:

(a) the sole or primary purpose of the service is to enable online interaction or linking between 2 or more end‑users (including enabling end‑users to share content for social purposes);

(b) the service allows end‑users to communicate content on the service;

(c) any other characteristics that are prescribed by Part 10A regulations;

[5] https://www.imda.gov.sg/Regulations-and-Licences/Regulations/Codes-of-Practice/Codes-of-Practice-and-Guidelines—Media