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速報:ラオスにおける会社法の改正について

2023年04月07日(金)

速報:ラオスにおける会社法の改正についてのニュースレターを発行しました。
PDF版は以下からご確認下さい。
改正会社法

速報:ラオスにおける会社法の改正について

 

2023年6月10日更新
One Asia Lawyers Group ラオス事務所

1.背景

2022年3月に改正会社法の草案(以下、「草案」)に対してパブリックコメントを募集していましたが、2022年12月29日付で「改正会社法(No.33)(以下、「改正法」)」が公布され(官報掲載日:2023年4月5日)、2023年3月30日から施行されています。

2019年に企業登録にかかるプロセスが簡素化されたため、それを反映させた点が主な変更と言えます。会社法は、一般的な会社の形態である、有限責任会社(以下、「株式会社(Company Limited)」)の他、公開会社、国営企業、パートナーシップ等に関する規定も含まれていますが、今回は、株式会社に関する改正点を中心に解説いたします。

2.企業登録申請、企業登録書(以下、「ERC」)について

企業登録に関しては、2019年2月1日施行「企業登録に関する合意(No0023)」を基礎に改正されています。これまで、経済特区の中に会社を設立する場合は、計画投資省からERCが発行されていましたが、改正法は、商工省/局から発行されると変更されています(改正法第15条)。また、企業登録に必要な書類として、改正後は、定款が不要となりました(改正法第97条)。

改正法条文

改正前

改正後

15条
企業登録

経済特区(SEZ)への進出に関する規定はなし

SEZへの進出する企業も含めて、商工省/局企業登録課で企業登録申請を行う
(※2023年6月時点運用されていない)

16条
企業登録申請

オンライン申請の記載はなし

オンラインでも申請可能(オンライン申請については、別途規定する)
(※2023年6月時点運用されていない)

17条
企業登録に要する日数

10営業日

3営業日

18条
ERCの記載内容

新規

①会社名、②企業番号、納税者番号、③会社の形態、④住所、⑤登録資本金、⑥マネージングディレクター(MD)の名前、⑦会社所有者、株主の情報

25条
ERCの無効条件

新規

①紛失等で新規ERCが発行されたとき
②重複して発行したとき
③企業情報を変更したとき又は会社を閉鎖したとき

97条
企業登録に必要な書類

①企業登録申請書
②会社設立契約書
③定款
④会社設立会議議事録
⑤宣誓書
⑥委任状
上記の他に、実務上、パスポートの写し、住所登録証明及び事務所の地図、CV、株主からの会社設立合意書なども必要)

①企業登録申請書
②事業内容表明書
③会社設立契約書
④会社設立会議議事録
⑤委任状(会社のMDや株主以外が書類を提出する場合)
⑥宣誓書
⑦株主及びMDのパスポート、IDカードの写し
⑧株主が法人の場合は、その法人からの現地法人設立合意レター
⑨その他必要な書類(実務上、取締役、株主(個人)のCVが必要)
※①から⑥は当局所定の書式に記入

 

3.事業許可証の取得、企業印、企業看板の作成について

草案ではSEZへ進出する企業も事業許可証を取得することが提案されていましたが、最終的には却下され、その代わりに、上記2のとおり、企業登録を商工省/局で行うことへ変更されています(改正法第15条)。この変更により、SEZの外で事業活動をする場合に取得が必要な事業許可証がないまま、SEZの中の企業が、SEZ外で事業活動を行ってしまうことが懸念されます。

企業看板については、2018年発行の「看板法」及び商工省発行の「企業印と看板に関する通知(第20823号)」で詳細に規定されていますので、表示内容、文字の大きさ、文字、看板のサイズ、色等は、これらの関連法令に従うことになります(改正法第29条)。

 

改正法条文

改正前

改正後

19条
企業登録後の事業活動

 

新規

①ネガティブリストに掲載の事業については、関連当局にて、投資許可証及び事業許可証を取得
②ネガティブリストに掲載されていない事業については、関連当局から事業許可証を取得

22条
企業印の作成

治安維持省は、申請受理後5日以内に作成

治安維持省は、申請受理後2日以内に作成

29条
企業看板の作成

新規

企業登録後60日以内にERCの内容に従って、企業看板を作成。事務所の正面に設置すること

 

4.登録資本金について

草案では、登録資本金は、現物でも現金でも、企業登録後1年以内に払い込むことが提案されていましたが、改正法では、登録資本金の払込期限は「株主総会で合意した期日までに払い込む」こととなりました(改正法第101条)。これまで、資本金の支払いが運用不可能な規定になっていたため、改正後は、明確になることが期待されましたが、改正は実現しませんでした。他方、資本金の未払いに対する措置に重きをおく改正となりました。

また、これまで、取締役は、株主登記リストの写しを企業登録管理当局へ提出する義務がありましたが、提出の義務はなくなり、会社の内部資料として保管するのみと改正されています(改正法第110条)。

 

改正法条文

改正前

改正後

101条
登録資本金の払込

会社設立前、現物出資の場合は100%、現金の場合は70%

登録資本金の払込期限は株主総会で合意した期日までに払い込むこと
取締役は、払込期日の10日前までに、各株主の株式保有率に基づいた払込金額と払込期日を書面で通知すること

102条
出資金未払いによる弊害

取締役が命じた期限まで支払いがない場合、利息の支払い。
利息も出資金も未払いの場合、株式を売り、会社の債務に充当

 

株主総会で合意した期日までに資本金を支払わない株主は、議決権、配当金の制限を受ける。まったく支払わない場合は、株主から抹消可能。
未払いの場合、支払い期限日から60日以内に、登記情報の変更手続きをすること
(減資、株主変更、株保有率変更、会社の形態変更、閉鎖等)
取締役が未払いの場合は、株主から請求、提訴することが可能

 

旧法第107条、第108条
記名株式、無記名株式

 

 

規定削除

110条
株主名簿

名簿の写しを更新の都度、企業登録管理当局へ提出又は更新がなくても年に1度12月25日より前に提出

名簿は事務所内で保管

174条
一人株主会社の場合の出資金未払いによる弊害

新規

企業登録後、全額を払い込まない場合、登記情報の変更手続きを30日以内に行うこと。
(減資、株主変更、株保有率変更、会社の形態変更、閉鎖等)
株主は、上記変更の前に、会社の債務に対して責任をもつこと

 

5.株主総会について

草案では、取締役の任期に関する規定は変更されていませんでしたが、改正法では、取締役の任期が株主総会の合意する期間となりました(改正法第123条)。

 

改正法条文

改正前

改正後

123条
取締役の任期

最高2年(更新可能)

株主総会で合意した任期

130条
取締役の解任

解任後、新規取締役選任後10営業日以内に企業登録管理当局へ新しい取締役を登録

解任後、新規取締役選任後、30営業日以内に、企業登録内容変更申請を企業登録管理当局へ申請する

147条2項
株主総会特別決議事項

新規(一部)

・会社の総資産の50%以上を売却、譲渡する場合
・会社分割の場合

152条
株主総会普通決議事項

選任のみで解任の記載なし

取締役、監査人の選任と解任

 

(参考)株主総会決議事項のまとめ
※赤字は改正法で追加された事項

 

普通決議

特別決議

決議事項

①取締役の選任、解任
②取締役の報酬決定、
③監査役の選任、解任、報酬の決定、
④定款や設立契約の採用、
⑤会計報告の承認、
⑥配当の決定 など

①定款や設立契約の変更
②増資、減資
③合併、分割、清算(閉鎖)
④法人の売却又は事業譲渡、一部譲渡
⑤他の法人の事業を購入、譲受
⑥会社の総資産50%以上の売却、譲渡
⑦株主が30人以上の場合でも、株式会社の形態を維持する場合

定足数

会社法では、2人以上の株主の出席、かつ、出席した当該株主が有する株式の合計が総株式数の過半数であること

議決

出席した株主の議決権の過半数

出席した株主および代理人(=株主数)の3分の2以上の賛成、かつ、賛成した当該株主および代理人の株主が合計で総株式数の80%以上を保有していること

 

6.会社の合併、分割、閉鎖について

これまで、合併の規定はありましたが、会社分割の規定が追加されました。

 

改正法条文

改正前

改正後

160条
会社の分割

新規

・株主総会特別決議が必要
・決議後10日以内に少なくても1回メディアを介して通知が必要
・異議があるものは、通知後30日以内に申告が可能

 7.禁止事項について

これまでは、各違反事項に対する罰金の額が記載されていましたが、改正法は、一般禁止事項、企業登録管理当局の公務員に対する禁止事項、投資家(個人、法人)に対する禁止事項が別個に規定され、罰金の記載は削除されました(改正法第207条から第209条)。

改正法条文

改正前

改正後

207条
一般禁止事項

新規

①禁止事業、違法事業を行うこと
②企業登録をせずに事業を行うこと
③あらゆる形態において、会社設立及び事業活動を妨害すること
④その他違法な行為

209条
法人の禁止事項

新規

①許可を取得せず事業を行うこと、事業許可証が無効になったにも関わらず事業を継続すること
②法令で規定された条件、要件に違反して、事業を行うこと
③他人にERCを貸すこと
④書類や情報の虚偽の報告をすること
⑤ラオス政府や公務員に贈賄を行う、非協力や業務妨害を行うこと
⑤その他違法な行為

以 上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。
yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)