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シンガポールを利用したインドの紛争解決について

2023年04月17日(月)

シンガポールを利用したインドの紛争解決についてニュースレターを発行いたしました。
PDF版は以下からご確認ください。

シンガポールを利用したインドの紛争解決

 

シンガポールを利用したインドの紛争解決 (1)

1 前書き

 人口の増加・経済成長、米中対立の激化などに伴い、現在、インドに投資を行う企業が増加している。そして、これに伴いインドにおける紛争も増加している。特に、インドの裁判制度・インドの仲裁制度は他の国にない特徴が多く、紛争は長期に及ぶ可能性が高い。このため、シンガポールを利用して、インドにおける紛争を解決する企業が増加している。

 One Asia Lawyers Groupでは、かようなインドの紛争解決をシンガポールで効率的に解決することを推奨しているところ、本シリーズにおいては、シンガポールを利用していかにインドの紛争を効率的に解決していくかについて述べる。

 以下の通り、まずインドの紛争解決制度の特徴について説明をし、その後、なぜシンガポールで解決することが推奨されているのかについて述べることとする。

 ・インドの仲裁制度、仲裁機関の特徴
 ・インドの裁判制度、裁判所の特徴
 ・シンガポールを利用してどのようにインドにおける紛争を解決していくか

2 インド国内仲裁機関 

 インドは、最近、国内仲裁法の関連規定を改正するとともに、インド国内仲裁インフラを強化するためのイニシアチブをとっており、その一環として、インフラを備えた複数の仲裁機関がインド各地に設立されている。

 代表的なものとしては、インド仲裁評議会(ICA)およびデリー高等裁判所併設のデリー国際仲裁センター(DIAC)が国内における著名な機関として挙げられる。また、ムンバイには、マハラシュトラ州政府の後押しを受け、ムンバイ国際仲裁センター(MCIA)が設立されている。以下、インドの国内の仲裁機関について説明を行う。     

(1)インド仲裁評議会(ICA       

 ICAは、インドを代表する仲裁機関のひとつであり、ニューデリーに本部を置き、インド全土に支部を持つ非営利団体である。1965年、インド政府と民間企業の提携により設立され、ICAの敷地内には約200名近く収容可能な役員室や会議室が備えられている。また、数多くの仲裁に関する会議やトレーニングセッションを開催しており、国際商事仲裁をめぐる諸問題について、海外の仲裁機関とも連携している。

(2)デリー国際仲裁センター(DIAC

 DIACは2009年11月に設立され、インド高等裁判所に併設された最初の機関仲裁センターである。DIACは、独立性、透明性、専門性を備えた機関として設立され、DIACはデリー高等裁判所の敷地内に併設され、紛争当事者、仲裁人、弁護士にとって便利な立地に設立されている。プロジェクターを完備した審理室、相談室、ビデオ会議機能など、DIACは最先端のインフラを提供している。また、仲裁を当事者にとってより合理的なものにするため、2018年DIAC(行政費用および仲裁人費用)規則では、国内仲裁だけでなく国際仲裁でも分かりやすい仲裁費用の体系を提供している。

(3)ムンバイ国際仲裁センター(MCIA

 MCIAは、インドのムンバイにメインオフィスを構える、独立・中立・非営利の仲裁機関である。2015年に設立され、2016年から仲裁手続きの運営を開始しており、インドの州であるマハラシュトラ州政府、国内外の民間企業、法曹界によって設立された。MCIAは、当事者が全プロセスで負担する手続費用と仲裁費用の上限を設定するなど、いくつかの特徴的な規則を有している。また、MCIAの仲裁判断がインド国内の裁判所で再度争われる可能性が低くすべく、仲裁判断の精査(Scrutiny)の手続きも行うこととされている。

 次回以降上記の3機関の仲裁規則・手続きの比較を行っていく。