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協議離婚のフィリピン国内承認に関する最高裁判決

2024年10月11日(金)

協議離婚のフィリピン国内承認に関する最高裁判決に関するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

協議離婚のフィリピン国内承認に関する最高裁判決

 

協議離婚のフィリピン国内承認に関する最高裁判決

2024年10月
One Asia Lawyers Philippines Team
日本法弁護士 難波 泰明
フィリピン弁護士 カーステン・ベガ

はじめに

 フィリピン最高裁判所2024年2月27日の判決において、外国における離婚手続がフィリピン国内で承認されるために、当該外国での司法手続を必要としないと判断されました。

1.事実と訴訟の経過

 2004年、フィリピン国籍の女性は、ケソン市(フィリピン)で日本国籍の男性と結婚しました。その後、日本に移住したものの、関係が悪化し、夫妻は2007年頃、日本で「協議離婚」を成立させました。これについて、日本大使館(フィリピン)が発行した離婚証明書が証拠として提出されています。
 さらに、フィリピンの外務省は認証証明書及び離婚届の証明書を発行しました。加えて、マニラ市民事登記局は、日本大使館(フィリピン)が提供した離婚証明書が適切に提出され記録されていることを確認する証明書を発行しました。この離婚に関しては、日本の戸籍原本に英語訳が添付されたうえで提出されています。
 その後、女性は、フィリピン国内の地方裁判所(RTC)に対し、外国での離婚の承認と再婚の許可を求める申立てを行いました。RTCはこの申立てを認め、女性の外国での離婚が有効であるとの判断を示しました。

 しかし、この判決に対しフィリピン共和国(法務省)側が不服を申立て、RTCの決定に対する再審を求めましたが、RTCはこれを却下しました。

2.争点

 本件での重要な争点は、(1)管轄裁判所での対審手続を経ずに取得された外国での有効な離婚がフィリピン国内で承認されるか、(2)女性が離婚と日本国内の離婚に関する法律を十分に証明したか否かです。

3.最高裁判所の判断

(1)外国離婚の承認

 最高裁は、類似の先例[1]を引用のうえで地方裁判所の決定を支持し、日本における協議離婚はフィリピン家族法第26条第2項の適用範囲内であり、フィリピンで国内承認されうると判断しました。
 そのうえで、外国で合法的に取得された離婚を認めないことは、フィリピン人の配偶者が婚姻関係に縛られ続ける一方で、外国人配偶者は再婚の自由を享受するという不公平な状況を引き起こすことになるとし、家庭法第26条第2項の目的は、このような矛盾を解決するところにある旨述べています。

(2)離婚と外国法の立証

 最高裁は、外国人配偶者によって外国で取得された離婚をフィリピン国内で承認するためには、当該離婚が当該外国人の国内法に照らして有効であることが立証されなければならないと指摘し、離婚と当該外国人配偶者の国内法の両方が証拠として提出される必要があるとしました。
 そのうえで最高裁は、日本の離婚法の証明と当該外国人配偶者の再婚能力の立証責任は申立人にあるとし、関連する離婚法についての証拠を再度審理するため、事案を原審に差し戻しました。

—–

[1] Republic vs Manalo , Minori Fujiki vs Marinay , Medina vs Michiyuki Koike , Racho vs Seiichi Tanaka , Galapon vs Republic ,  In re: Ordaneza vs Republic , Republic vs Bayog-Saito , Basa-Egami vs Bersales