国連 責任あるビジネスと人権フォーラムAsia-Pacific 2024
「国連 責任あるビジネスと人権フォーラムAsia-Pacific 2024」に参加した様子をまとめたニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
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国連 責任あるビジネスと人権フォーラムAsia-Pacific 2024
2024年10月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター
アジアESG/SDGsプラクティスグループ
弁護士 難波 泰明(日本法)
1 はじめに
去る2024年9月23日から27日にかけて、タイ・バンコクにて、国連「責任あるビジネスと人権フォーラムAsia-Pacific 2024」が開催されました。当職も、23~26日にかけて各セッションやワークショップに参加してまいりましたので、その内容や様子をご報告したいと思います。
2 フォーラムのハイライト
出席者は、東南アジア各国をはじめ、インド、ネパール、バングラデシュなどの南アジア地域、オーストラリアなどのオセアニア地域、欧州各国など、幅広い国からの参加がありました。
その中で、当職が参加したワークショップ、セッションのいくつかをご紹介させていただきます。
(1) Global North Dominance Watch Workshop on Democratising Knowledge Spaces Related to Corporate Accountability
本セッションでは、グローバルサウスに対するグローバルノースの支配力が今もなお継続していることを念頭に、まずはその支配について議論し、その支配から脱却するためにどのような取組みが必要かを、ワークショップ形式で考えました。
(2) Supplier Capacity Building Workshop on Forced Labor
本セッションでは、強制労働を防ぐためのサプライヤーとのエンゲージメントにおいて、「明確な期待値の設定」「双方向の対話」「実務的な指針」「インセンティブの設定」「手続の効率化」「責任分配」「タイミングへの配慮」「継続的な改善活動」のいずれが最も重要か(あるいは欠けている要素はないか)について、各テーブルで検討し発表し合うワークショップを行いました。
(3) Unpacking Remedy: A practical workshop for business practitioners
本セッションでは、想定事例をもとに、人権侵害との関係について、Cause(原因となる)、Contribute to(寄与している)、Be Linked to(関係している)の各場合を分析し、どのような是正対応が検討できるかをディスカッションするワークショップを行いました。
想定事例中に、企業の人権侵害への関与形態が様々あることを具体的に考えることができる、実践的な内容でした。
(4) The Remedy Blueprint: Bridging gaps and accelerating access
本フォーラムのテーマである「救済へのアクセス」を題材に先住民族、ビジネス、社会活動団体の3つのセクターから生の声を聴き、救済へのアクセスを確保するための課題と取組の必要性について投げかける、本フォーラムのオープニングセッションとしてふさわしい幕開けとなりました。
(5) Legal Remedies: An evolving landscape
法的な救済方法について、各有識者から、アクセス可能性に関する課題、効果的な是正のための資料による裏付けと交渉力の確保などの指摘がありました。また、グリーバンスメカニズムについて、構築段階や運用段階でのステークホルダー・ライツホルダーの関与に関する指摘がありました。
(6) Critical Metrics: Leveraging benchmarking to advance access to remedy
本セッションは、企業がビジネスと人権の課題に取り組むうえで、いわゆるベンチマークをどのように活用するかについてのトークセッションでした。ESGやSustainabilityの開示が進むに従い、様々な評価指標、ベンチマークが打ち出されています。それらに対して、企業として最初からすべてに取り組むということは現実的ではなく、現状を把握し、今後対応して行くべき事項を精査するためのロードマップとして活用することが有用であるとの指摘がありました。
(7) OECD Consultation: Training and Capacity Building Needs on Supply Chain Due Diligence
本セッションは、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスを実行するためにどのような研修とキャパシティービルディングが必要かについて、ディスカッション形式でのワークショップを通じて理解を深めるものでした。
研修については、能力や説得力のある役職、業種の人が、デザインされた内容で行うべきという意見や、サプライチェーンの各トップマネジメントに対する研修を行うべきであるなどの意見がありました。
3 まとめ
本フォーラムは、即実務につながる実践知を獲得するというよりも、指導原則やOECDガイドラインなどの基本となるルールに立ち返り、各参加者が気付きを得て持ち帰り、実践につなげることが期待される内容となっていました。
弊所でも、このような国際会議で得られた知見や気付きを今後の実務に生かして、各企業のサポートにあたる所存です。
(以上)
〈注記〉本資料に関し、以下の点をご了承ください。
・ 本ニューズレターは2024年9月時点の情報に基づいて作成されています。
・ 今後の政府による発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更等に伴い、その内容は変更される可能性がございます。
・ 本ニューズレターの内容によって生じたいかなる損害についても弊所は責任を負いません。