インドネシア憲法裁判所決定 第168/PUU-XXI/2023号 -労働法の一部規定に対する違憲判決‐
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インドネシア憲法裁判所決定 第168/PUU-XXI/2023号
–労働法の一部規定に対する違憲判決‐
2025年1月
One Asia Lawyers Indonesia Office
日本法弁護士 馬居 光二
NY州法弁護士 友藤 雄介
インドネシア法弁護士 プリシリア・シトンプル
1.はじめに
2024年10月31日、憲法裁判所/Mahkamah Konstitusiは、労働に関する法律2003 年第13号(以下「労働法」)のいくつかの条文を違憲とする決定(以下「MK168/2023」)を下しました。
MK168/2023は、いわゆるオムニバス法である2023年法律第6号(以下「オムニバス法」)によって改正された労働法の条文に関する判断となります。オムニバス法は、外国投資招致を期して、多くの労働法上の規定を改正したところ、複数の労働組合が、オムニバス法によるこれらの改正は、労働者の権利を侵害するもので、1945年インドネシア憲法に反するとして、MKに訴えを提起しておりました(2023年12月1日)。今回、憲法裁判所は原告の訴えを一部認容し、労働法に関する一部違憲判決を下しました。
以下は、今回MK168/2023が違憲とした労働法の対象条項となります。
No. | カテゴリー | 条項 | ポイント |
1 | 外国人労働者 | 42 (1) | 外国人労働者雇用許可取得義務の 削除と外国人労働者雇用計画(RPTKA)の監督官庁の明確化 |
2 | 42 (4) | 外国人労働者の雇用時の インドネシア人労働者の優先 |
|
3 | 有期雇用契約 | 56 (3) | 有期雇用契約労働者の雇用期間 |
4 | 57 (1) | 書面によるPKWT合意の要件 | |
5 | アウトソーシング | 64 (2) | 許容可能なアウトソーシングの 業務範囲等 |
6 | 労働時間と休息 | 79 (2) | 週休 |
7 | 79 (5) | 長期休暇 | |
8 | 賃金 | 88(1)、(2)、(3) | 生存権と賃金、中央政府の賃金 政策策定義務とその要素 |
9 | 88C (2) | 最低賃金 (州および地区/市) |
|
10 | 88D (2) | 最低賃金の計算 (特定のインデックス) |
|
11 | 88F (1) | (特定の状況下での) 最低賃金の計算 |
|
12 | 90A | 会社における最低賃金の決定 | |
13 | 92 (1) | 企業内の賃金構造と規模 | |
14 | 95 (3) | 倒産時の賃金の扱い | |
15 | 98 | 賃金審議会 | |
16 | 雇用関係の終了(「PHK」) | 151 (3) | 解雇手続 |
17 | 151 (4) | ||
18 | 157 (3) | 賃金支払いの継続 | |
19 | 156 (2) | 退職金 |
本ニュースレターでは、上記判決のうち、重要ポイントについて解説致します。
2.MK168/2023の内容
1)外国人労働者
a. 外国人雇用許可取得義務の削除及び外国人労働者雇用計画(RPTKA)の監督官庁について(第42条1項)
a). 争点
ⅰ.オムニバス法による改正点
外国人労働者雇用に関する労働法第42条(1)について、オムニバス法は、外国人労働者の雇用主に求められる大臣または指定された職員による外国人雇用許可の取得義務に関する文言を削除した上で、新たに、外国人労働者雇用計画(RPTKA)の作成及び中央政府から承認を取得する義務を規定しました。
ⅱ.原告の主張
これに対して原告は、上記改正は、外国人労働者に対する監督メカニズムを弱める可能性があり、それにより、多くの未熟練の外国人労働者がインドネシアの雇用市場に参入する事態を招くと主張しました。
● オムニバス法による労働法第42条1項の改正(参考英訳(以後同様))
対象 条項 |
オムニバス法による改正前の 労働法の規定 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
42 (1) | Every employer who employs foreign workers is under an obligation to obtain written permission from the Minister or designated official. | Every Employer who employs Foreign Workers is required to have a plan for the use of Foreign Workers that has been approved by the Central Government. |
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、原告の主張自体は問題視しなかったものの、RPTKAの管理する機関として、単に中央政府と規定している現在の規定が違憲であるとし、この点について労働大臣として読み替えない限り拘束力を持たないとしました。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
42 (1) | Every Employer who employs Foreign Workers is required to have a plan for the use of Foreign Workers that has been approved by the Central Government. | Every Employer who employs Foreign Workers is required to have a plan for the use of Foreign Workers that has been approved by the minister responsible for manpower, in this case, the minister of Manpower. |
b. 外国人労働者の雇用時のインドネシア人労働者の優先(第42条(4))
a). 争点
原告は、外国人労働者に対して、特定の職種、特定の期間、及び当該職種に適した能力を有することを要求する現行労働法第42条(4) の規定は、インドネシアに未熟練外国人労働者(unskilled labor)を大量に入国させる契機として利用される可能性があると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、MK168/2023にて、以下の参考英訳条文のように、「インドネシア人労働者の優先的活用を考慮すること」を追記する形で解釈されない限り拘束力を持たないと判断しました。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後 |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
42 (4) | Foreign workers may be employed in Indonesia only in employment relationships for certain positions and for a certain period of time and must have the competencies appropriate to the position they will occupy. | Foreign Workers may be employed in Indonesia only in an Employment Relationship for a certain position and for a certain period of time and have competence according to the position to be occupied, taking into account the priority of using Indonesian workers. |
なお、現時点でも、人事関連職など特定の職種について、外国人労働者が就くことを制限することを規定した労働大臣令2019年第349号(Kepmenaker 349/2019)がございますが、今後このインドネシア人の優先に関する政策がどの様に具体的に規定されていくか、留意が必要と考えられます。
2)有期雇用契約(「PKWT」)
a. PKWTの雇用期間(第56条3項)
a). 争点
オムニバス法による改正前の労働法においては、PKWTの雇用期間は2年であり、延長は1回のみ認められ、延長期間は最長1年と規定されておりました(オムニバス法による改正前労働法59条(4))。当該規定はオムニバス法によって、削除され、新たに規定された56条(4)においては、PKWTの雇用期間に関する具体的な規定はなされておりません。原告は、上記のようなオムニバス法による改正は、法的不確実性をもたらしていると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、この原告の主張を受け、PKWTの期間について、延長を含め最長5年とすることを決定し、現行の規定と比較して以下のように読み替えない限り拘束力を持たないとしました。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
56 (3) | The time period or completion of a particular job, as referred to in paragraph (2), is determined (Note: this refers to PKWT) based on the Employment Agreement. | The time period for completion of a particular job is not made to exceed a maximum of five (5) years, including if there is an extension. |
なお、本決定は、オムニバス法に基づいて発行された政府規則2021年第35号(「GR 35/2021」)の第8条に沿ったものとなっているため、この決定により新たな規則が導入されたわけではありませんが、当該規定が政府規則でなく、法律に盛り込まれることとなるため、より明確に規定されたものと考えられます。
b. PKWTとの書面の雇用契約の締結(第57条 (1))
a). 争点
オムニバス法による改正前の労働法57条1項は、PKWTとの雇用契約は「書面で作成され、インドネシア語とラテン語を試用しなければならない」と規定した上で、同条2項で「書面で作成されていないPKWTとの雇用契約は、第1項に反するものとして、期間の定めのない雇用契約とみなされる」と規定しておりました。当該57条2項の規定はオムニバス法によって削除されたところ、原告は、このような改正によって、PKWTの労働者が法的に不安定な立場に置かれることになったと主張しています。
オムニバス法による改正前労働法
Article 57
(1)A fixed-term employment agreement is made in writing and must use Indonesian language and Latin letters.
(2) A fixed-term employment agreement that is not made in writing, contrary to the provisions referred to in Paragraph (1), shall be considered an indefinite-term employment agreement.
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、オムニバス法が第57条2項を削除した趣旨は、PKWTの雇用契約が書面で作成されないことが、PKWTに関する労働法の趣旨に反することを明確にする点にあると述べた上で、同改正により、労働者のPKWTとしての雇用は恒久的な性質を持つ業務に適用されないことが明確にされたと述べました。その上で、57条1項の適用に明確性と法的確実性を持たせる趣旨で、以下のように読み替えて解釈されるとしました。
なお、原告が主張する、雇用契約を書面で取り交わさずに、PKWTとして働いている労働者の権利保護について、①上記改正後に締結されたPKWTについては、直ちに契約書を作成すべきであり、②上記改正前に締結されたPKWTについては、法令通りPKWTTとみなされると解釈することが労働者の権利保護に資すると述べて、本条は、一部違憲であるが、原告の主張通りではないとしております。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
57 (1) | Fixed-term employment agreements are made in writing and must use Indonesian and Latin script. | A fixed-term employment agreement must be made in writing using Indonesian language and Latin. |
上記のように、「must/harus」の位置を移動させることで、PKWTについては、書面での契約書の作成が必須であり、さらにインドネシア語で規定されなければならないことが明確になりました。
なお、第57条2項にあるように、外国語との併記が認められているものの、インドネシア語を第一言語としなくてはいけない点に留意が必要です。
Article 57(2)
In the case of a fixed-term employment agreement being made in Indonesian and a foreign language, if there is a difference in interpretation between the two, the fixed-term employment agreement made in Indonesian shall apply.
また、前述のように、裁判所は、本改正前に締結されたPKWTについては、当時の法令通り、書面で作成されていなければPKWTT(期間の定めのない労働者)とみなされる旨述べている点にも留意が必要となります。
3)アウトソーシング(第64条2項) –許容可能なアウトソーシングの業務範囲等
a). 争点
オムニバス法による改正前の労働法では、派遣については5種類の活動(清掃、ケータリング、警備、鉱業・石油産業の補助、送迎)のみが認められており、業務委託については各事業の主要な業務は除外されておりました。オムニバス法は、上記派遣と業務委託という文言を削除し、新たにアウトソーシングとして「業務の一部」を他の会社に委託できると規定し、業務範囲について政府規則でこれを定める旨規定しておりました。原告は、上記のような規定は、曖昧であり、法的に不安定であると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、上記の規定は「業務の一部」が何であるか不明確であるとした上で、当該決定を行う主体を、現状の「(中央)政府」から、「労働大臣」と読み替えるものと決定しました。これは、2021年に中央政府が発出した政府規則2021年第35号においてアウトソーシングができる範囲について、特段明記していないことを踏まえたものとなります。また、憲法裁判所は、業務委託の種類及び分野は、業務委託契約書においても合意されなければならないとの規定を追記し、その様に読み替えない限り拘束力を持たないとしました。
このため、第64条2項は、以下のように読み替えられます。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
64 | (1) A Company may assign part of the performance of work to another Company through an outsourcing agreement made in writing. (2) The Government shall determine part of the performance of work as referred to in paragraph (1). |
(1) A Company may assign part of the performance of work to another Company through an outsourcing agreement made in writing. (2) The Minister determines part of the implementation of the work as referred to in paragraph (1) in accordance with the type and field of outsourcing work agreed in the written outsourcing agreement. |
この憲法裁判所の決定を受けて、アウトソーシングが認められる領域を労働大臣が今後の大臣規則等で明確にすることが予想されます。
4)労働時間と休息
a. 週休(第79条2項)
a). 争点
原告は、 労働法第79条(2)b.は、週6日勤務の労働者について週休1日が与えられることを規定しているのみであり、週5日勤務の労働者が2日の休日を与えられることを考慮していないと主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、労働法第79条(2)b.を現行の規定と比較して以下のように、週5日の労働者に対して週休2日が与えられるべきとの規定を追記した形で読み替えられない限り拘束力を持たないとしました。なお、当該規定は過去に施行されている政府規則であるGR 35/2021の規定と沿ったものとなっております。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
79 (2) | The rest period, as referred to in paragraph (1) letter a, must be given to Workers/Laborers at least include: a. rest between working hours, at least half an hour after working for 4 (four) hours continuously, and the rest time is not included in working hours; and b. weekly rest of 1 (one) day for 6 (six) working days in 1 (one) week. |
The rest period, as referred to in paragraph (1) letter a, must be given to Workers/Laborers at least include: a. rest between working hours, at least half an hour after working for 4 (four) hours continuously, and the rest time is not included in working hours; and b. weekly rest of 1 (one) day for 6 (six) working days in 1 (one) week or 2 (two) days for 5 (five) working days in 1 week. |
b. 長期休暇(労働基準法第79条5項)
a). 争点
原告は、長期休暇を提供することは雇用主の義務であるべきだが、労働法第79条(5)の「与えることができる(can/dapat)」という文言は、使用者が労働者に長期休暇を与えなければならないという意味ではないため、従業員にとって不利になる可能性があると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、「can/dapat」という単語は、使用者に長期休暇の付与を義務付けるものではない点に同意した上で、当該文言は違憲であり「can/dapat」の文言を除いた以下の文章として読み替えない限り拘束力を持たないとしました。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
79 (5) | In addition to rest periods and leave as referred to in paragraph (1), paragraph (2), and paragraph (3), certain companies can provide long breaks as regulated in the Employment Agreement, Company Regulations, or Joint Work Agreement. | In addition to rest periods and leave as referred to in paragraph (1), paragraph (2), and paragraph (3), certain companies provide long breaks as regulated in the Employment Agreement, Company Regulations, or Joint Work Agreement. |
この決定により、雇用主は従業員に長期休暇を与えることが義務付けられております。
5)賃金
MK168/2023は主に最低賃金の計算方法を含む賃金に関する複数の規定についても判断をしております。ただし、この点については、同判決後に施行された労働大臣規則に必ずしも反映されていない等、その影響が現状では明確ではありません。
6)雇用関係の終了(「PHK」)
MK168/2023は、労働者の権利保護を強化するため、PHKに関していくつかの重要な変更を導入しました。
a. 解雇手続き
a). 争点
オムニバス法によって改正された解雇手続きに関する第151条の規定は、雇用主による解雇の通知後に従業員が解雇に合意しない場合に1)2者間の協議(3項)、2)産業紛争裁判所での解決(4項)を踏むと規定していますが、これについて原告は、現状の規定は、雇用主が公平な法的プロセスを経ることなく恣意的に一時解雇を実施できる余地を生み出す可能性があるため、憲法上の権利を侵害する可能性があると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、この主張について理解を示し、解雇が最終手段であることを強調するために以下の追記修正を行った形で、読み替えない限り拘束力を持たないとしました。
- 3項: 労働者が雇用契約の終了を拒否する場合の2者間協議について、合意に到達することを目的に協議が行われることとの追記を行うこと
- 4項: 3項の協議が合意に至らずに産業紛争裁判所で解決が求められる場合でも、最終的に解雇が認められるのは、同裁判所による確定判決がなされた後であると修正を行うこと
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
151 (3) | If the Worker/Laborer has been notified and refuses Termination of Employment, the settlement of Termination of Employment Relations must be carried out through bipartite negotiations between the Employer and the Worker and/or the Union. | If the Worker/Laborer has been notified and refuses Termination of Employment, the settlement of Termination of Employment Relations must be carried out through bipartite negotiations through deliberation to reach a consensus between Employers and Worker and/or Unions. |
151 (4) | In the event that the bipartite negotiations, as referred to in paragraph (3), do not result in an agreement, Termination of Employment is carried out through the next stage in accordance with the Industrial Relations Dispute Resolution mechanism. | In the event that bipartite negotiations, as referred to in paragraph (3), do not reach an agreement, Termination of Employment can only be carried out after obtaining a determination from an industrial relations dispute resolution institution whose decision has permanent legal force. |
b. 賃金の支払いの継続
a). 争点
オムニバス法によって改正された157A条(1)は、解雇を含む産業紛争に関する労使間の紛争が解決されるまで、使用者及び労働者は引続き義務を履行しなければならないとした上で、157A条(3)は、当該義務は「各段階における労働関係紛争の解決が完了するまで」行われると規定しておりました。これに対して原告は、「各段階における労働関係紛争の解決が完了するまで」という規定は、当事者に対していつまで義務の履行が義務付けられているのか不明確であると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
憲法裁判所は、当該規定について、「産業紛争解決に関する法律である法律2004年第2号の規定に従って法的拘束力を持つ産業関係紛争解決プロセスが終了するまで」と読み替えない限り拘束力を持たないとしました。このため、使用者は確定判決がなされるまで賃金の支払い義務が継続することとなります。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
157A | (1) During the resolution of Industrial Relations Disputes, Employers and Workers/Laborers must continue to carry out their obligations. (2) (略) (3) Implementation of the obligations as referred to in paragraph (1) shall be carried out until the completion of the Industrial Relations Dispute resolution process according to its level. |
(1) During the resolution of Industrial Relations Disputes, Employers and Workers/Laborers must continue to carry out their obligations. (2) (略) (3) Implementation of the obligations as referred to in paragraph (1) shall be until the end of the industrial relations dispute resolution process, which has legally binding force in accordance with the provisions of the Law 2/2004″. |
c. 退職金
a). 争点
退職金の計算方法に関し、第156条2項が「…以下の規定に従って支給される」と規定していることについて、原告は規定額以上を支払う可能性を排除するものであると主張しました。
b). 憲法裁判所の判断
これに対して憲法裁判所は、当該規定について、労働者保護の観点から、「少なくとも」と修正の上、読み替えられるものと決定しております。
対象 条項 |
現状の規定 (オムニバス法による改正後) |
MK168/2023 反映後の 労働法の規定 |
156 (2) | Severance pays, as referred to in paragraph (1), shall be provided with the following provisions: (以降略) |
Severance pays, as referred to in paragraph (1), shall be at least;
(以降略) |
3.結論
MK168/2023は、労働者保護の観点で多くの条項が修正されております。一部は既に政府規則等に盛り込まれている内容であるものの、一部は雇用主側に新たな負担を課す内容となっているところ、就業規則の改定や解雇の手続きにおいて特に留意が必要となります。