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ミャンマーにおける最低賃金の見直しについて

2023年10月13日(金)

ミャンマーにおける最低賃金の見直しに関する、ニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

ミャンマーにおける最低賃金の見直しについて

ミャンマーにおける最低賃金の見直しについて

2023年10月
One Asia Lawyersミャンマー事務所
代表弁護士(日本法):佐野 和樹

1.はじめに

 ミャンマーにおいて、約5年間据え置かれてきた最低賃金が実質的に引き上げられました。10月8日付国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによると、政労使の代表者が参加する全国最低賃金委員会が全ての企業で働く労働者に対して1日当たり1,000チャットの「手当」支給を義務付けると発表しました。

2.インフレ手当の支給について

 最低賃金は2015年に3,600チャットに設定され、2018年には4,800チャットに引き上げられていました。最低賃金は2年ごとに見直すとされていますが、2018年以降はCovid-19の流行や21年2月のクーデター後は先送りされていました。

 支給される1日当たり1,000チャットの増加分は近年の物価高にするインフレに対する「手当」と解されます。基本給は最低4,800チャットに据え置かれていますが、1日あたりの総支給額が4,800チャットから5,800チャットに引き上げられたため、実質的には最低賃金の見直しと言えます。なお、最低賃金法上の賃金には、基本給与に加え、時間外労働手当及び賞与が含まれる旨規定されているため、政府としては「最低賃金の引き上げ」として公表し、労働者に対して政府支持を訴求する狙いがあると言われています。

 また、10月8日付国営紙グローバル・ニュー・ライト・オブ・ミャンマーによると、新賃金の適用は1日からとされ、全国の職場・工場を対象とし、職種も問わないとされています。

3.時間外手当の計算について

 新賃金の見直しが、様々な分野に影響を及ぼすと考えられますが、ここでは、時間外手当の計算について記載させていただきます。

 工場法及び休日休暇法によれば、使用者は、労働者を法律上規定された労働時間以上または休日に働かせた場合、時間外労働手当として、平均賃金の2 倍以上の額を支払わなければならないと規定されています。当該額の計算方法について、下記のとおり、労働省により定められた所定の計算式が適用されます。

 時間外手当については、基本給がベースとなっており、手当は含まれない扱いとなっているため、本件の増加分が手当であれば、時間外手当の計算に影響を及ぼさないと考えられます。

 ただし、政府からの発表によって解釈の変更または計算方法の指示がありうるため、注意が必要となります。

4.今後の動向

 今後ミャンマーにおいて本件の実質的な最低賃金の増加により、関連する実務の混乱が予想されるため、今後の動向に注意が必要となります。

以 上

 

〈注記〉本資料に関し、以下の点ご了承ください。
・ 本資料は2023年10月12日時点の情報に基づき作成しています。
・ 今後の政府発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更に伴い、本資料は変更となる可能性がございます。
・ 本資料の使用によって生じたいかなる損害についても弊所は責任を負いません。