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責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料の公表

2023年11月13日(月)

責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料の公表に関するニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。

責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料の公表

 

責任あるサプライチェーン等における
人権尊重のための実務参照資料の公表

2023年11月
One Asia Lawyers Group
コンプライアンス・ニューズレター
アジアSDGs/ESGプラクティスグループ

第1 はじめに

 経済産業省は、2023年9月に策定された「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」(以下、「日本政府ガイドライン」といいます。)を踏まえ、企業がまず行うこととなる「人権方針の策定」や人権デュー・ディリジェンス(人権 DD)の最初のステップである「人権への負の影響の特定・評価」について、検討すべきポイントや実施フローの例を示すため、2023年5月、「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料」を公表しました。

 本資料は、必ずしもこれに従って人権尊重の取り組みを進めなければならないというものではなく、逆に、これに従った取り組みだけをしておけばよいという趣旨のものではなく、このことは本資料中でも重ねて強調されています。とはいえ、ビジネスと人権に関して、どのような取り組みをしていけばよいのか、その理解を深める為には有意義であるため、本号ではこの実務参照資料について、ご紹介いたします。

 企業の皆様におかれましては、本資料も参照いただきながらまずは人権方針の策定、人権への負の影響の特定・評価を行われることと存じますが、ご不明な点がございましたら、当グループまでお気軽にお問い合わせください。

第2 実務参照資料の位置づけ

 本資料は、上記のとおり、日本政府ガイドラインで示されている事項のうち、「人権方針の策定」及び「人権への負の影響の特定・評価」をカバーする内容となっています。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

第3 人権方針の策定の流れ

 人権方針の策定については、日本政府ガイドライン3において、その要件や策定時及び策定後の留意点が示されています。本資料は、これを踏まえてより具体的に、以下のような策定の流れが示されています。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

 本資料は、このうち、①自社の現状把握のために必要な自社が関与しうる人権侵害リスクについて、産業別に考えられる一般的事項を本資料別添1において示しています。また、人権方針に盛り込むことが考えられる項目について、以下のとおり例示しています。

<人権方針に記載することが考えられる項目>

1.位置付け

人権方針は、企業の経営理念や行動指針等と密接に関わるため、これらの文書と人権方針の関係を検討し、両者の一貫性を担保することで、社内における位置付けを明確にし、より人権方針を社内に定着させることを目的とします。

2.適用範囲

一般に、人権方針は、一般的な社内規程と異なり、自社だけではなく自社が支配権を有する他の企業にも適用されると考えられます。そのため、「グループ会社」の定義を明らかにすることも望ましいと思われます。

3.期待の明示

従業員や取引先をはじめとする関係者に対する人権尊重への期待を明らかにすることが求められ、例えば、自社の事業・製品・サービスと直接関連する可能性がある関係者に対して、人権を尊重することを期待する旨を記載することが考えられます。これを基に、サプライヤー審査方針、調達方針等を規定することとなります。ガイドライン3に記載のとおり、人権方針に必要な要件となっています。

4.国際的に認められた人権を尊重する旨のコミットメントの表明

国際人権章典や「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」という国際的に認められた人権を尊重する旨のコミットメント(約束)を表明することが考えられます。

5.人権尊重責任と法令遵守の関係

法令の遵守は当然として、ある国の法令やその執行によって国際的に認められた人権が適切に保護されていない場合、企業は、国際的に認められた人権を可能な限り最大限尊重する方法を追求する必要があります。そのため、このような内容を人権方針に明記することも考えられます。

6.自社における重点課題

まずは、自社が影響を与える可能性のある人権を把握するだけでなく、自社のサプライチェーン等においてより深刻な人権侵害が生じ得るステークホルダーでその人権を認識し、それらに特に焦点を当てた取り組みを行うことが考えられます。このような自社の重点課題を人権方針に記載することが考えられます。これにおいては、本資料別添1も参照するとより具体的なイメージがつかめると思われます。

7.人権尊重の取組を実践する方法

企業が人権方針をどのように実現していくかを記載することが考えられます。具体的には、人権DDの実施や救済の方針、ステークホルダーとの対話の実施、また、人権方針の実施状況を監督する責任者の配置、責任者及びその責任の内容を記載することが考えられます。

第4 負の影響(人権侵害リスク)の特定・評価

 企業は、人権DDの第一歩として、企業が関与している、又は関与し得る人権侵害リスクの特定・評価を行う必要があります。

 そのための具体的なプロセスの例として、以下の手順が示されており、本資料では、これの参考となるような参考資料(別添1)、作業シート(別添2)が示されています。別添1では具体的な事業分野、産品別等の人権課題とその説明がされており、別添2はこれらを踏まえて実際に自社に当てはめがしやすいものとなっています。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

ステップ①:リスクが重大な事業領域の特定(ガイドライン 4.1.1(a))

 まず、自社の事業のうち、リスクが重大な事業領域を特定します。この際、社内関連部門や社外の専門家等と意見交換をしながら、以下のような観点から、具体的にどのような人権侵害リスクが指摘されているかなどを確認します。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

 この際、自社が提供する製品・サービスに関連して、どのようなサプライヤー等が存在するかを把握できていることが望ましいとされており、これが困難な場合でも、ステークホルダーとの対話や、苦情処理メカニズムの設置・運用等を通じて、追跡可能性が低いサプライヤー等の人権侵害リスクも把握するよう努めることが重要です。

ステップ②:負の影響(人権侵害リスク)の発生過程の特定(ガイドライン 4.1.1(b))

 次に、リスクが重大な領域について、人権侵害リスクを確認し、その状況や原因を確認します。その際は、以下のような方法で行うことが考えられます。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

ステップ③:負の影響(人権侵害リスク)と企業の関わりの評価及び優先順位付け(ガイドライン4.1.1(c)・(d))

 ステップ②で確認された人権侵害リスクと自社のかかわりを、日本政府ガイドラインで示されている以下のカテゴリに基づいて、評価します。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

 そのうえで、確認された人権侵害リスクの全てについて直ちに対処することが難しい場合、下記(i)及び(ii)のように優先順位を検討します(ガイドライン 4.1.3.1)。

(責任あるサプライチェーン等における人権尊重のための実務参照資料より抜粋)

 

〈注記〉本資料に関し、以下の点をご了承ください。
・ 本ニューズレターは2023年11月13日時点の情報に基づいて作成されています。
・ 今後の政府による発表や解釈の明確化、実務上の運用の変更等に伴い、その内容は変更される可能性がございます。
・ 本ニューズレターの内容によって生じたいかなる損害についても弊所は責任を負いません。