ミャンマーにおける著作権法および工業意匠法の施行
ミャンマーにおける著作権法および工業意匠法の施行に関する、ニュースレターを発行いたしました。こちらの内容は、以下のリンクよりPDF版でもご覧いただけます。
ミャンマーにおける著作権法および工業意匠法の施行
2023年11月
One Asia Lawyersミャンマー事務所
代表弁護士(日本法):佐野 和樹
1.はじめに
ミャンマーにおいて、著作権法(Copy Rights Law)および工業意匠法(Industrial Designs Rights Law)が、2023年10月31日付けで施行されました。以下では著作権法を中心にミャンマーにおける現在の知的財産法の状況を概説させていただきます。
2.著作権法および工業意匠法の施行
ミャンマーでは、著作権法および工業意匠法は2019年1月30日に制定されていましたが、施行が未定となっていました。
そのような状況が続いていた中、ミャンマーでは2023年10月31日、著作権法および工業意匠法が施行されました。
著作権法および工業意匠法は商標法(2023年4月1日施行)および特許法(未施行)とともに、日本政府が整備を支援した法律となっており、日系企業にとって利用しやすい制度となることが期待されています。
3.著作権の保護について
従前では、著作物がミャンマー国内で出版された場合またはミャンマー国民によって創作された場合にのみ保護される制度となっていたため、外国著作物の保護に乏しいという問題点がありました。
著作権法では、ミャンマー国内で初めて出版された著作物のみならず国外で出版された場合であっても国外での最初の出版から 30 日以内にミャンマーで出版された作品については、著作者の国籍・居住地に関係なく、著作権法が適用されることになります。
そのため、日本を含む国外の権利者がミャンマーで著作権等を行使することが可能な制度となります。
なお、著作者または著作権者の権利を保護する期間は、著作者の生存期間および死後 50 年と規定されています(著作者人格権の保護期間は著作者の生存期間に加えて死後無期限)。
著作権等の侵害に対しては懲役刑および罰金刑などの罰則が規定されています。
もっとも、著作権分野で最も基本となる条約である「ベルヌ条約」にミャンマーは加盟していません。ベルヌ条約に加盟している国々の著作物に対して、加盟国は原則として自国の著作物と同様の保護を与えなければならない(内国民待遇の原則)と規定されています。
そのため、ミャンマーにおける著作物の保護は、日本人が日本における著作権保護と同様の保護が受けられるわけではないため、注意が必要となります。
4.工業意匠権の保護
工業意匠法の施行によって工業意匠権が保護されます。工業意匠法における工業意匠とは、工業製品若しくは手工芸品の全部若しくは部分の線、輪郭、色彩、形状、表面パターン、質感、若しくは外形の特徴若しくは装飾、又はその特徴、装飾から生じる工業製品若しくは工芸品の全部若しくは部分の外観をいいます。
工業意匠法が保護されるためには、知的財産庁(Myanmar Intellectual Property Department)に対する出願・登録審査が必要となります。なお、工業意匠の登録期間は出願日から5年間であり、期間満了後は5年毎に最大2期まで更新できます。
4.今後の知的財産法の動向
商標法、著作権法および工業意匠法については、2023年に施行されたことから、今後ミャンマーにおいて細則・実務上の取り扱いなど知的財産権に関する法制度の整備が進むと予想されるため、今後の動向に注意が必要となります。
〈注記〉本資料に関し、以下の点ご了承ください。
・ 本資料は2023年11月10日時点の情報に基づき作成しています。
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