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ラオス:外国からの投資における外貨管理について

2024年01月03日(水)

ラオスにおける外国からの投資における外貨管理についてのニュースレターを発行しました。

PDF版は以下からご確認下さい。

外国直接投資外貨管理合意

 

ラオスにおける外国からの投資における外貨管理について

2024年1月3日
One Asia Lawyers Groupラオス事務所

1.経緯

2022年10月に「改正外国為替管理法」が改正され(詳細はニュースレターをご参照ください)、また2023年6月にラオスで登記した、外国からの投資企業に対して「外国からの資金輸入証明書(Capital Importation Certificate)の取得に必要な書類」について通知が出され(詳細はニュースレターをご参照ください)、さらに2023年7月に「外貨管理の実施に関する首相命令」が発令されました(詳細はニュースレターをご参照ください)。

このように、ラオス政府は外貨の流れについて厳しく管理するために、様々な政策を実施しています。ラオス中央銀行(以下、「中銀」)は、ラオス国内の外貨預金についても管理を行うべく、外国からの投資家及びラオス国内商業銀行に向けて、2023年12月21日付で「外国直接投資における外貨管理に関する合意 (No1225)(以下、「中銀合意」)」を発行しました。新たな政策として、特に外国からの投資家に対しては、一般的な預金口座ではなく、投資に特化した預金口座をラオス国内の商業銀行に開設することを規定しています。

2.外国からの直接投資とは

ラオスの会社法においては、外国法人の定義はありませんが、中銀合意には、「外国からの投資家」及び「外国からの直接投資」を以下の通り、定義しています(第3条)。

外国からの投資家:ラオスへ投資するためにラオスの法律に従い企業登録(事業登録)した外国籍の個人または法人

外国からの直接投資:外国の投資家のラオスで事業を行うための投資。独資、又は、外国籍が10%以上の株式を保有する合弁会社(政府、国営企業、ラオス国内民間企業との連携)の投資

3.銀行口座の開設について

(1)投資準備口座

原則、法人の場合、企業登録書(Enterprise Registration Certificate)がない場合、ラオス国内の商業銀行で口座を開設することはできません。しかしながら、会社設立前の準備期間において、事業開始までに(投資許可証、企業登録書、事業許可取得期間)、に必要な様々な費用(例えば、車両、事務所などのレンタル料、宿泊料、渡航代、各種手数料の支払い、コンサル料など)が発生することを考慮して、外国からの投資家は、ラオス国内の商業銀行において、投資準備のための銀行口座(以下、「投資準備口座」)を開設することが可能となりました(第5条)。

投資準備口座の開設のために必要な書類は以下の通りです。

投資許可又は企業登録申請手続中であることが記載された関連当局からの証拠書類

外国法人の企業登録書又は会社が実在していることの証明書

ラオスの商業銀行へ口座を開設することの代表者への委任状

委任された代表者のパスポート

中銀又はラオス国内の商業銀行が規定するその他必要な書類

(2)投資関連口座

投資許可証又は/及び企業登録書を取得した外国からの投資家は、15営業日以内にラオス国内の商業銀行に現地通貨キープ及び外貨の「投資関連口座」を開設する必要があります。例えば、登録資本金の送金、利益、配当金、海外からの融資に対する返済及び利子の返済などの取引に使用する口座は、投資関連口座のみと規定されています(第6条)。但し、中銀の監督下にある金融関連事業者は、別途定める関連法に従うとあります。

投資関連口座の開設に必要な書類は以下の通りです。

商業銀行所定の申請書

投資許可証、企業登録書の写し

事業許可証(Business Operation Certificate)の写し(ある場合)

その他商業銀行が定める書類

中銀合意が施行される前にすでに商業銀行で一般的な銀行口座を開設し、海外からの直接投資に関する事業を行っている既存の外国からの投資家は、一般的な銀行口座を投資関連口座に変更するための手続きを行う必要があります(第6条)。

なお、既存の一般的な銀行口座がある銀行ではなく、違う銀行に投資関連口座を開設する場合、既存の銀行口座(古い口座)にある預金はすべて新しい銀行に開設した投資関連口座に送金し、その後、古い銀行口座は閉じる必要があります。また、新しい投資関連口座を開いてから10営業日以内に中銀外国為替管理局へ新しい口座を開設し古い口座を閉じたことを通知する必要があります(第6条)。

上記の通り「投資準備口座」及び「投資関連口座」の開設が可能であると解釈できますが、ラオス国内の商業銀行が同中銀合意をどのくらい認識しているのか不明であり、きちんと運用されているかどうかは、わからない状況にありますので、留意する必要があります。

4.資本金の送還について

 資本金輸入証明書(Capital Importation Certificate)を取得した外国からの投資家は、ラオス政府に対する支払いの義務(税金等)が完了したのち、利益、配当金、事業売却又は会社清算後の残金を、投資関連口座から本国へ送還することが可能です(第11条)。

資金を本国へ送還するために必要な書類は以下の通りです。

商業銀行所定の送金指示書

利益又は配当金の送金の場合、取締役会又は株主総会の利益又は配当金に関する決議書の写し

事業売却又は会社清算後の残金を送金する場合、商工業省/局発行の会社清算完了通知書の写し

最後に取得した資本金輸入証明書の写し

投資許可証、企業登録書の写し

事業許可証(Business Operation Certificate)の写し(ある場合)

なお、外国からの資金輸入証明書(Capital Importation Certificate)の取得に必要な書類についての詳細はニュースレターをご参照ください。

5.罰則規定

中銀合意に違反した場合、外国からの投資家に対して科せられる罰金は以下のとおりです。

(1)投資関連口座を定められた期限内に開設しない場合:10,000,000キープ(1月時点約7万円)

(2)投資関連口座を使用せずに、他の口座で外国からの直接投資事業を行った場合:10,000,000キープ

(3)中銀が承認していない両替商や送金事業者を利用した場合:取引額の10%

(4)中銀の許可を取得せずに、第三国へ投資した場合:取引額の10%

以上

本記事やご相談に関するご照会は以下までお願い致します。

yuto.yabumoto@oneasia.legal(藪本 雄登)
satomi.uchino@oneasia.legal (内野 里美)